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炭酸泉と健康を考えはじめる


炭酸泉をナメていた


炭酸泉って、よく分からないけどたぶん体にいいんだろう。

岩手だと、盛岡の喜盛の湯だとか、開運の湯だとか、花巻の東和温泉なんかに行くと専用の湯舟があって「炭酸泉は健康にいいですよ」と説明された看板を見ながら、少しぬるめの炭酸泉にボーっと浸かったりする。

仙台に新しくできたスパメッツァでも炭酸泉がいかに健康に良いかを論じた作文が壁画に掲げられていた。

それでも入ってくる情報は、なんとなく体に良さそうでストップしてしまっていた。追及する機会もなかった。

血圧の数値が下がった健康診断

となりの公務員は、その熱量の高さのせいなのか、血圧も高めだ。
健康診断では毎年引っ掛かり、計測し直しをするはめになる血圧が、なぜか今回は正常だった。

となりの公務員は、毎週通っている炭酸泉に理由があると感じていた。


そうと分かれば一直線

今年度に入ってからは、もっぱら「ゲームチェンジ」が合言葉になっていて
地元の温泉を守る事業に魂を注いでいる。そこに炭酸泉をプラスできないかを探り始めた。

となりの公務員には、炭酸泉を作り出す上で欠かせないガスを取り扱う会社に勤める先輩がいた。人生は必要な時に必要な人が必ず現れるものである。

光のスピードで人の動きを加速させてご縁を生み出すのがとなりの公務員のすごいところで、

数日のうちに、炭酸泉を専門に扱うメーカーの社長さんが紫波町役場に来て、炭酸泉のすごさを教えてくれた。驚いたことに、そのメーカーは岩手・八幡平の会社だった。

医療にも活用される炭酸泉

炭酸泉は、介護福祉施設のお風呂にも実装されていて、動脈硬化などの血管の疾患に効果がある。

「健康は自分で管理維持する時代ですから」という言葉に、温泉館の未来の姿を見たような気がした。

日本国内に50社ほどある炭酸泉を扱う会社の中で、この八幡平のメーカーは、医療用に特化し高濃度炭酸泉を生み出す独自のミキシングの技術は特許を取っている。

炭酸泉を治療に使ったことで血流が良くなり、悪化すれば切断も余儀なくされるPAD(末梢動脈疾患)を患う重症患者の82パーセントの切断を回避した実績も持つ。

国内の様々な医療現場と連携し、世の中の役に立つ炭酸泉を提供し続けている。

炭酸泉の性質と分子の話

炭酸は温度が冷たいと溶けやすく、温度が上がると溶けにくい性質があり、適温は37.5度。炭酸泉は入浴すると体感温度が2度上がると言われていて、ぬる目の設定の炭酸泉が多い。

入浴時に泡が見えるものと、見えないものがあるが、見えない方が血流の循環に効果が高い。

分子として結合しているために泡にならない。泡になって見えているものは、結合した分子が離れている状態。

圧力や衝撃で分離する時にシュワシュワが発生し、CO2が発生する。

人の体に作用するのはCO2。H2-CO3という炭酸の分子に変化するが、それが高濃度で溶け込んでいるものになる。

温浴施設によっては「泡が見えないと不安がるお客さんがいる」という声もあるので、その場合は濃度を下げて泡を出す工夫もしたりしているらしい。

登場から12年、炭酸泉の流行も変わってきた

当時はやはり炭酸らしい泡が人気だったが、現在は高濃度ナノ炭酸泉という目に見えないものが流行している。

泡が多いと、皮膚が乾燥したり刺激があるので痒みが出たり。

泡が弾けることでレジオネラが空気中に飛沫することによる死亡事故もあるので、高濃度炭酸泉はそれを防ぐことができる。

炭酸泉は通常は水道水を使うが、源泉と炭酸を混ぜて独自の温泉を作るやり方もある。

その場合は、その源泉の成分に独自性があり他では真似できないので差別化にもなる。

源泉と混ぜているのは、国内の施設では全体の3割くらい。

リピーターがつくと、他の炭酸泉とは違うというのが体感として分かるのでお客さんが逃げて行かない。

炭酸泉はサウナの後に楽しめたり、複合的な連携ができる施設の方が効果が出る。

その後のドリンク提供や、サ飯。休憩室の工夫。そのような施設だとお客さんがどんどん増える伸び代がある。


・水風呂に氷を入れる氷締めイベント

・アヒルをたくさん泳がせるイベント


「実際に見て来たイベントだが、いかに忘れない思い出を作れるかで、そのような場所は客数が増えていくと思います。」
と社長は目を輝かせた。

源泉?炭酸泉?

今の温泉の泉質は評判も高く絶対に残してほしい。と社長が何度も念押ししてくれた。そのたびに「そう言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます」と返答するとなりの公務員は、なんだか温泉館の人みたい。

「源泉を楽しめる湯舟は残した上で、付属として源泉と炭酸泉を融合させたお湯を登場させるのはどうでしょう」

でも、このぬるぬるしたお湯は炭酸泉と相性が悪くないですか?と、となりの公務員は心配した。

「成分を調べましたが、問題ありません。通常の炭酸泉はツルツルはなくなってしまうかもしれないが、重炭酸泉なら残せる可能性が高い」

なるほど、それができれば最強のお湯かもしれない。

健康増進の施設が何を謳うべきか

温泉があるから健康のためだろうという雰囲気を引っ張って来た温泉館だが、やはり何等かの強いメッセージと、それを体感できるものがほしい。

その救世主が「炭酸泉」なのかもしれない。

炭酸泉がこれからの時代に重要である根拠

社長から、最後に長めのメッセージをいただいた。

「炭酸泉が必要になるという根拠は十分過ぎるほどある。糖尿病の急増がこれから予測されていて、それによる医療費の圧迫も予想される。そこを改善する「予防医療」が重要で、病気になってから病院に行く→日頃から病気にならない生活をするというスタイルに変わっていかなければならない。
日本の文化であり、地域の財産である「地元の温泉」はそれの筆頭になる。

病院で温泉に入ると先進医療で1万4千円かかるものが、地元の温泉だと数百円でサービスを受けられる。

血管の老化はいろんな病気につながるが、炭酸泉は血管、血流を良くする状態を維持できて糖尿病にも大きく作用する。

人の役にも立って、世の中のためにもなる。利用者さんの幸せな人生に直結する。」

レジオネラという永遠の敵

それに・・・と社長の話は続いた。

「レジオネラの事故は年々増えている。どこの施設も永遠のテーマだと思う。炭酸泉はレジオネラ対策にもなるんです」

確かに紫波町の温泉館でも永遠のテーマだ。

「炭酸泉だとPHが弱酸性に傾くので、菌が生存できない領域になる。炭酸泉からは全くレジオネラは出ない。作り出した炭酸泉は掃除にも使える。サウナの除菌にも使える。

塩素との合わせ技で殺菌効果は30倍にもなる。盛岡のワクチン接種会場でも、コロナウイルスの消毒剤として炭酸泉が使われた。」


知ればしるほど奥が深い炭酸泉のお話に聞き入ってしまった。
今日はここらへんで。




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