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【VISIONING VOICE Magazine #24】 「デジタル時代のものづくりを日本からアップデートする」 〜ものレボ株式会社 代表取締役 CEO 細井 雄太さん〜

NEXs Tokyoが主催する、ローカルおよび国内外の広域展開に挑むスタートアップが”次のステージ”に向かって羽ばたくために、サポートをしてくれる人やファンと繋がる番組VISIONING VOICEをインタビュー記事としてまとめたマガジン「VISIONING VOICE Magazine」📖

「VISIONING VOICE」はNEXs Tokyoと日経グループがコラボし、次のステージを目指すスタートアップ企業の3つの「カクシン(核心・革新・確信)」に迫り、起業家の想いを深堀りします。
パーソナリティは、長年スタートアップを取材している日本経済新聞社・上田敬さんとNEXs Tokyoコミュニティスタッフ・閏野が務め、番組をお届けしています。

今回はDIVEコース(地域発)のスタートアップ、ものレボ株式会社 代表取締役 CEO 細井雄太(ほそい ゆうた)さんにインタビューさせていただきました!

<登壇者プロフィール>
細井 雄太(ものレボ株式会社 代表取締役CEO)
同志社大学卒業後、トヨタ系サプライヤーのアイシン精機に生産技術者として従事。技術者として国内とアメリカでの工場の立上げを経験したときに、高い技術力を持つがアナログなままの日本の製造業とデジタル活用が早いアメリカの製造業を目の当たりにする。日本をより豊かにするために、日本の製造業が培った高い技術力とノウハウをデジタル技術にのせ、日本から世界のサプライチェーンをアップデートすべく、2016年ものレボ株式会社を創業。
ものレボ株式会社 公式サイト:https://monorevo.jp/

デジタルの力で新しいニーズを克服する

工場DXのための現場向けSaaS「ものレボ」を運営している、ものレボ株式会社の細井雄太さん。人や土地、お金など工場に関わる一連の流れをすべてデジタルでつなぐことで、きめ細かいものづくりを実現するエコシステムの提案をしています。

細井さん:製造業を取り巻く環境は、これまでのように同じものをたくさん作って消費する「大量生産消費の時代」から、消費者のニーズにあわせて「少量多品種生産、短納期の時代」へと変化しています。この生産方式に欠かせないのが、複数の工場で協力して一つの製品を作る、サプライチェーンと呼ばれるものです。しかし、多くの中小製造業の現場ではこの現実にうまく対応しきれていない現状がありました。私たちはサプライチェーンのデジタル化という大きな目標のために、まずは一つ一つの工場をデジタルの力によって良くしていこう、という取り組みをしています。日本には「トヨタ生産方式」と呼ばれる優れた管理方式があります。この考え方をもとに開発したのが、工場の中で付加価値を生んでいる製造現場の管理を簡単に見える化し、一元的にみなで情報を共有できるシステム「工場DX」です。
現在、30人以下の規模の工場で、金型、樹脂成型、半導体、プレス加工などの工法を使っている会社や、建設機械や工作機械、分析装置と呼ばれる産業機器を少量でたくさんの種類作っているような会社など、国内外の工場で100社以上に導入していただいています。

【核心】日本の生産技術と海外のデジタル技術

―― 起業された背景について教えてください。

細井さん:就職活動中から起業の意思はありましたが、まずは世の中のことを知ろうと思い、もともと好きだったものづくりと自動車をヒントに自動車部品のメーカーを選択しました。起業は、日本のものづくりの素晴らしさと、アメリカのデジタル技術の素晴らしさとの両方を目の当たりにしたことが大きなきっかけになっています。世界の製造業は今とても伸びている産業です。人口も増え、製造業のGDPは右肩上がりですが、一方日本の製造業はずっと横ばいを続けています。つまり相対的に日本のプレゼンスが落ちてきている状態になっているのです。かつて30年前は、日本の製造業は、ジャパン・アズ・ナンバーワンと呼ばれ、世界一を誇っていました。しかしそれがどんどん弱っていき、国内の事業所数にも顕著に表れて、この30年で半減してしまいました。日本のものづくりの素晴らしい部分が活かせてない日本企業を何とか変えられないかと、会社を飛び出して起業することにしました。

―― 実際に海外に行くきっかけや目の当たりにした経験があるのでしょうか。

細井さん:自動車の部品メーカーに勤務していた時代に、アメリカの自動車メーカーに新しい製品を供給するプロジェクトがありました。そのためにアメリカに行って部品供給のための工場、生産ラインを立ち上げるという業務があり、日本からは私が参加しました。私の立場は、「生産技術」といわれる、仕組みを作る機械を並べ、技術的に動かすこと。日本人がその仕組みを作り上げたこと自体は素晴らしいことだったのですが、アメリカ人はそれをなんと一晩のうちに全部工場のサーバーにつないで、データで“見える化”してしまったのです。それまで日本のものづくりは世界一だと自負していたのに、たった一晩で事務所からも見えるようにデジタル化するなど、日本では本社のマザー工場でさえも実現できていないことでした。

―― 現場を目の当たりにして、細井さんが日本企業に対して課題や危機感を持ったところは、具体的にどういった部分でしたか。

細井さん:実は日本の工場はアナログで、メガサプライヤーのようなメーカーでも工場で使っているシステムはせいぜいExcelぐらいのものでした。日本の製造業ではすべてがレガシーな領域です。この状況を変えていくためには、自社だけでは改革の難しい小規模な会社については、私たちが手を貸していかなければと思いました。危機感と同時に、今後の伸びしろがある、と感じたのも事実です。この部分をデジタルで解放したら、世の中が変わるだろうなと。

【革新】レガシーをアップデートさせる

―― この事業を通して、細井さんがアップデートさせたい対象はどんなことでしょうか。

細井さん:自分の欲しいときに欲しいものがいつでも届くというような世の中にしていきたい、と思っています。中小製造業の工場も納期が短い中で一度にたくさん依頼を抱えてしまうと生産するのが厳しい状況にあります。一方、仕事も大量に依頼が来るときもあれば、急になくなることもあるなど、受注に偏りが出てしまうことも課題になっていました。ところが、多くの製造業の工場ではこの受発注の管理を紙ベースで行っていたため、状況が外からは見えない状態になっていました。仮にその時点で余裕のある会社がどこかわかったとしても、管理表水準が社ごとに異なっていると、同じもの頼んでも出来に違いが生まれてしまいます。この部分を解消するために、紙で管理している会社の管理水準をアップデートさせることを、最初にやらなければならないと思っています。

【確信】誰でもがものづくりの主体者へ

―― 細井さんの「欲しい未来」は何ですか?  

細井さん:「世界中の誰でも、ものづくりが簡単にできるような世界を実現したい」と思っています。ものづくりは結果だけでなく、出来上がりを想像したり、作る過程も楽しむことができます。何より私自身がものづくり好きだということがありますが、この面白さをみなにも共有したいと思うのです。世の中の人口も増え、豊かになって多様化していきましたが、自分の使う道具は自分のこだわりを持って自分で作れたらいいなと感じます。例えばアクセサリーやカバンの取手だけを変える、というのもいいでしょう。自分がスケッチをしたものを得意な人が図面に落とし、機械を持っている人が図面通りに削って、自分で組み立てて鞄にするなど。ものづくりは協業でできているので、自分は何を担当してもいいと思うのです。自分が企画する側なのか、作る側なのか、組み立てて依頼者に渡す役割なのか。そのサプライチェーンの協業を支えるために私たちはサービスを提供し、誰でもものづくりが出来るような社会、世界を実現していきたいです。

―― 今後積極的に取り組んでいきたいことはどんなことでしょうか。

細井さん:今の日本の製造現場では人手不足が問題になっています。製造現場はよく、“きつい・汚い・危険”の「3K職場」のように言われることがあり、なかなか若い人が集まりません。しかし、若い人が続いてくれなければ事業は持続できません。これをデジタルの管理で“キレイ・カッコいい・稼げる”の「逆3K」にしていきたい。そうすることによって、人手不足を解消して     いきたいという思いがあります。

日本の製造業で世界をつなぐ

―― 最後に、細井さんが今後さらに広域展開を目指していくにあたって叶えたいことや、どんな人に出会いたいか、教えてください。

細井さん:今後は世界展開も進めていきたいと考えています。すでに現在、東南アジアの中でもベトナムにはチームを作り事業を進めています。また、ビジネスとして工業大国のドイツや、デジタル大国のアメリカにも進出していきたいと考えています。実際、ドイツの仕事を日本の中小製造業につなぎ、短い納期の中で品質をクリアしたものを届けることができたという成功体験を、弊社のメンバーが前職で経験しています。日本の製造業の現場でも、自分たちの仕事が海外とつながっていることが見えてくると、モチベーションが高まると思うのです。ぜひ私たちの事業に少しでも魅力を感じてもらえたら、製造業に知見がなくても構いません。ものづくりを変えていく、世界を変えていくというガッツのある方はぜひ私たちの扉を叩いていただきたいと思います。また、日本中に存在しているたくさんの中小製造業の地元の自治体の方で、地域の中小製造業をデジタルで良くしていこうというお気持ちのある方は、ぜひ私たちに一言声をかけていただけたら嬉しいです。

―― 細井さん、ありがとうございました!

番組ではその他にも、マガジンでご紹介しきれなかった、細井さんの事業に対する想いやエピソードを聞くことが出来ます。youtubeアーカイブより視聴可能ですので、併せてぜひご覧ください!

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▶問い合わせメールアドレス
 info@nexstokyo.net(NEXs Tokyo運営事務局)

さて、約1年間に渡りお届けしてきた「VISIONING VOICE Magazine」は、今回が最後となりました。ご覧いただいたみなさん、ありがとうございました!番組自体はこれからも続きますので、Facebookページでのライブ配信、またはYouTubeでのアーカイブをご覧いただけたら嬉しいです。これからもNEXs Tokyo会員スタートアップ企業の3つの「カクシン(核心・革新・確信)」に迫り、起業家の想いを深堀りしていきます。

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