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newton radio #3 hummingbird coffee店主 吉村健さんは、素敵な場所をつくりたかった。編集後記

みなさん、こんにちは。Steve* Musicのエグゼクティブプロデューサー兼no.9名義でアーティスト活動をしている城 隆之です。この度私がゲストをお呼びして収録させていただいたnewton radioの第3回目の放送『#3 hummingbird coffee店主 吉村健さん』がアップされました!

newton radioって何?という方はこちらをご覧ください。

newton radioは「何かに惹かれて生きてきたボクらが、どうしようもなくキミに惹かれる理由。」をテーマに掲げ、様々な領域で活躍するクリエイターや企業のブランド担当者をはじめとする、ボクらがどうしようもなく惹かれるゲストを招き、そのゲストになぜ惹かれるのか?という「引力」の解明を目指す音声番組です。

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今回は『#3 hummingbird coffee店主 吉村健さん』のパーソナリティを務めた私、城が編集後記を担当させていただきます。なお、この記事は生の「声」を収録した番組を聴いてから読むのがおすすめです。

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今回のゲスト

吉村 健 (よしむら たけし) さん

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学芸大学駅から少し離れたところに小さく佇むHummingbird coffeeの店主。元々は大手レコードショップのバイヤーを務め、ジャズ、ニューエイジコーナーを担当。ある時音楽業界を離れ、珈琲屋さんをやってみたいということでレコードショップを退職。その後、2017年4月5日にHummingbird coffeeをオープンし、現在に至る。

newton radioメンバー

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太田 伸志

株式会社スティーブアスタリスク 代表取締役社長。1977年宮城県生まれ。クリエイティブディレクターとして、広告企画や商品開発を多数手がけると同時に、地域ブランディングにも積極的に取り組む。また、武蔵野美術大学や東北学院大学の講師も歴任するなど、大学や研究機関との連携にも力を入れている。作家で唎酒師でもある。

加来 幸樹

株式会社サインコサイン 代表取締役社長。1983年福岡県生まれ。九州大学芸術工学部卒業。2018年にサインコサインを設立。「自分の言葉で語るとき、人はいい声で話す。」という理念のもと、企業理念や個人理念、ブランドのネーミング・タグラインなど覚悟の象徴となるアイデンティティの共創を通じて価値提供を行う。

no.9(城 隆之)

Steve* Music エグゼクティブプロデューサー/アーティスト。実績と経験に基づく緻密なサウンドデザインと幅広い音楽性を併せ持つ作曲家。アーティスト活動と平行して、TVCMやWeb広告、映像作品など数々の音楽を制作。最近では他アーティストのプロデュースや執筆、音楽ガジェットの開発など、その活動は多岐にわたる。


目標にまっすぐ向かって、素敵な場所を作った人

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吉村さんとは、珈琲屋さんを始める前からのお付き合いをさせていただいております。もともと音楽業界にいらっしゃって、全然コーヒーとは違う入り口で知り合いました。お互いコーヒーが好きだったのもあって交流があったのですが、ある時吉村さんから「コーヒー屋を開きたい」という話を聞いてさらに深い付き合いが始まりました。

僕にとって吉村さんは、尊敬もしているし、人生の中で「そういう人生の変わり方もあるんだ」ということを示してくれて、かなり影響を受けた人です。

コーヒー屋さんに限らず、お店を持ちたいと思っている人って結構いると思うんですが、ただやるのと、実際に素敵な場所を作るのってちょっと違う。吉村さんはそれを最短ルートで、作り上げたんじゃないかと感じています。
その美学や信念を深ぼった先に『惹かれる理由』があるんじゃないかと。
今回吉村さんをお呼びしたのには、そんな経緯がありました。


おいしい珈琲を出すことは、音楽バイヤーと似ている

Q. 誰からも好かれる珈琲を出すことって可能なんですか?(前半8:19)

「それって本当に難しいですよね。実際には無理なんだけど。」から話は始まります。珈琲と一口に言っても、さまざまな要素で味が変わります。豆の種類、焙煎、淹れ方など・・「おいしい珈琲」を提供するためには珈琲の知識だけでなく、「飲む人の好み」を知ることが大事ですよね。それって音楽バイヤーと似ていないか?と、そんな話になりました。

レコードショップ時代、吉村さんに聞けば、必ず良い音楽に出会える、そんな信頼感がありました。ご自身では「各ジャンルのスペシャリストではないからジャンルを跨いでおすすめしてましたね」とおっしゃってましたが、まさに珈琲も同じ。数ある種類・手法の中からどうやってお客様好みのものを提供するか、それはやっぱりコミュニケーションの中で初めて見えてくることなんですよね。

「自分がどれくらいお客様の好みに寄り添えるか、そこを考えることが楽しいんです」(吉村さん)

吉村さんの丁寧で、ある意味受け身な心構えと、謙虚な姿勢はバイヤー時代から変わっていないなと改めて感じました。とはいえ、hummingbird coffeeが大切にしている味の中からお勧めしているので、こだわりとポリシーも同時に感じることができる。そんなプロフェッショナルさも素晴らしいと思います。本編ではさらにコーヒーと音楽の共通点について話が膨らんでいますのでぜひ。


「いつかやりたい」の「いつか」は、やって来ないかもしれない

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Q. いつ頃からコーヒー屋さんになりたいと思っていたんですか?(半18:00)

もともと「いつかは、○○屋さんをやりたい(お店を持ちたい)」と思っていたという吉村さん。その想いは20代の頃からあったとか。僕に「珈琲屋さんをやってみようと思ってます」とカミングアウトしてくれたのは2014〜15年頃で、長い年月ずっと心のどこかで考えていたんだそうです。

でも、「いつかはやってみたいんだよね」は、どこにでもある話で、「今の自分」が充足していればいるほど、それを捨てて実際に進めていくことはとても困難なことだと思います。

「いつかやりたい、の  いつか  っていつだよ、みたいなのが歳を重ねるごとに圧になってきた。」(吉村さん)

これまで置き去りしてきた想いを実行に移す大きなきっかけとなったのが40代という若さでこの世を去った、「お父様の死」だったそうです。

いざご自分が40代になったときようやくリアルに重ね合わせることができて、「未来は永遠じゃないから、やった時の自分とやらなかった時の自分を想像した」と話してくれましたが、時間が限られていることをきちんと認識したからこそ想像できたことなんだろうなと思います。

挑戦した人に対しての嫉妬や、やらなかった時の後悔。どちらもやって失敗するより遥かに悔しいという気持ち・・・わかります。吉村さんが今を振り返らず、やってみようという気持ちだけで前に進めた理由がここにあるのかもしれませんね。

ラジオで吉村さんの声を聞くことで「実際にやること」の背景にある覚悟と熱が直に感じてもらえるんじゃないかなと思います。


冷静じゃなかったから、始められた

Q. 世の中にコーヒー屋さんっていっぱいあるけど、成功するとかしないとか考えなかったんですか?(後編2:30)
もちろん失敗は怖かったし、今もなんなら怖い。けど、始めるときはチャレンジするのか、しないのかということの方が大きかったし、だからできた。 (吉村さん)

大手レコードショップのバイヤーという立場や、将来性、しかもその仕事が嫌いだったわけじゃないにも関わらず、それらをかなぐり捨てて全く新しい挑戦をした吉村さん。「実際にはそんなに冷静に始めようって思ったわけじゃないんです」っておっしゃっていたのは実はとても羨ましいことだなと思いました。歳を重ねると現実の厳しさとか、周りの反応とかを気にしちゃって挑戦しずらくなっていってしまうところがある。がむしゃらになれるってやっぱり素晴らしいことだよなって。僕もむかし珈琲屋さんをやりたかったんだけど、今改めて音楽をやめて、珈琲屋さんを開く覚悟が持てるか?と自分に問えば、その凄さを改めて感じました。


満足はエゴから生まれている?

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Q. お店を始めるときに「ここはエゴです」というか、大事にしたポイントなどはありましたか?(後編3:15)

全員を満足させることは絶対に無理!と言い切っていた吉村さんの言葉がすごく印象的でした。学芸大学という立地と、小さな店内のhummingbird coffeeでは、その規模から全てのニーズに応えることは最初から難しいと考えていたそうで、来てくれるお客様をきちんと満足させるためには「どうゆう人に喜んでもらいたいか」を絞るしかないと思ったそうです。

確かにhummingbird coffeeにはいくつかルールがあって、PC禁止だったり、大きな声での会話も極力ご遠慮いただいている。小さな空間だからこそ、hummingbird coffeeの居心地のよさを守るために繊細なコントロールが必要と話してくれました。でも、決して傲慢な考えでやっているわけではなく、ここを愛してくれている人を守るためだと伝わってくるのがとても吉村さんらしい。

本当だったらルールは決めず、来てくださるお客様が空気で感じ取って過ごしてくださるのが理想。今後そうゆうお店を作っていきたいなと思う。(吉村さん)

「お店の前にルールを貼り出すのなんて無粋で本当はやめたい」とおっしゃっていました。それもお店に入る前にきちんとコンセプトを伝えて、不幸な出会いを極力作らないため。それはチャンスを逃すことになりかねないけど、強がってでも吉村さんが作りたいお店の魅力がそこにはあるんだなと、強い意志を感じました。来てくださるお客様への丁寧な1杯を淹れるための作業はそんな吉村さんのエゴ(吉村さんはご自分ではエゴと言っていたけど、それって逆にお店とそこを大切にしてくれるお客様への思いやりなんじゃないかと思う。)から始まっているんだなと改めて発見がありました。


静けさを楽しめる貴重な空間

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この静かな空間に流す音楽って結構難しいと思うのですが、空間の中の音をある程度コントロールしているんですか?(後編6:15)

僕がhummingbird coffeeを好きな理由のひとつとして音の存在感が大きいことがあります。静けさが、嫌にならない静けさというか。その時間を有意義に思わせてくれる独特の居心地の良さは音にも深く関係している気がしていて。音に惹かれてお店に来ているという意味では、番組のコンセプトにピッタリだと思い、この機会に深く聞いてみました。

音楽の種類、ボリュームはすごく意識的で、明るい時と暗くなってきてから違いや季節でも変える。そうゆうところは前職から脈々とつながってきている。(吉村さん)

humminbird coffeeにいると、珈琲屋さん独特の仕草の音が溢れていていることにふと気がつく瞬間があります。お湯の沸く音、豆を挽く音、コーヒーカップのカチャカチャ・・・音楽と環境音の重なり。hummingbirdが演出している特別さだな、と感じています。なんとなく静かでいたいと思わせてくれる喫茶店が少なくなってきているからとても貴重な時間を提供してくれる。

「日常のちょっとした非日常はイメージしている」と語ってくれた吉村さん。これまで話してくれたこだわり裏には、普段気にしないような音が聞こえたり、気にしないところに思考がまわったりする空間を作りたいというhummingbird coffeeだから味わえる非日常的な心地よい空間への想いが込められていました。

僕も昔は家が近かったので、よくお邪魔していましたが、今は少し離れてしまったのでhummingbirdロスになってしまいました。それはまさに、他に替えが効かないから、コーヒーを飲みに行くんじゃなくて、hummingbirdに行きたいと思えるほどの空間を作れる、吉村さんの演出力があってこそだなと気付かされました。


まとめ

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改めまして、今回パーソナリティを務めさせていただきました城です。自分のやりたい世界を実現しようとすることってある意味ブランディング。それを個人でやっているの吉村さんの凄さが垣間見えたのではないかなと思います。もちろん、吉村さん以外のスタッフの人もしっかり吉村さんの世界観を理解していて、一緒に守っている。今回はラジオなので、店内の様子はあまりお伝えできていませんが、内装も雰囲気もとっても素敵です。人も物も音も「佇む」という言葉がぴったりな物語を感じる素朴な空間です。

これまで信頼できる友人としてお互い話していた気がしていますが、僕が吉村さんに惹かれているのは、僕と同じく、「こだわりに対して誠実な優しいアーティストだったから」ということがわかりました。

彼のこだわりにはそこには決して圧もないし、迎合するわけでもない。ただご自身のやりたいことを責任を持ってきちんと見つめて試行錯誤している。そこに共通項を感じてきたんだな、と感じました。今回は触れられなかったのですが、吉村さんは旅する写真家としても、haruka nakamuraくんなどの音楽家と共に各地を廻り、空気感のある写真を撮っています。それもいつもとても素敵で、どこかhummingbird coffeeと雰囲気が似ているんですよね。

今度は音楽を写真に収めることについても伺ってみたいなと思っています。最後までお読みいただき、ありがとうございました。ぜひ、吉村さんの声を聞いていただき、その人柄に触れていただきながら、学芸大学のhummingbird coffeeを訪れてみてはいかがでしょうか?

この記事は生の「声」を収録した番組を聴いてから読むのがおすすめです。

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