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【コラム】指揮者ってずるい

こんにちは!代表です!

 今回は、吹奏楽をやるうえで欠かせない存在である、指揮者についてのお話です。

 いつも練習や本番のときに奏者の前に立って棒を振ってくれる指揮者。私はこの人の存在を常々「ずるい」と思って過ごしてきました。…なんてひねくれた性格なのでしょう。

 ただし、私が指揮者に対して抱く"ずるさ"というのは、年を経るごとにだんだん変化してきました。今回は、そんな指揮者に対する私の「ずるい」という気持ちの移り変わりを、皆さんと共有したいと思います。

 きっとみんな共感できるはず!そう信じています!



吹かなくてずるい


 私が初めて指揮者に対してずるいと思ったのは、中学2年生の夏。当時の代表はまだまだ未熟なプレイヤーで、夏のコンクールに向けて必死で楽譜に喰らいついて演奏していました。

 そんな中でも、本番が近づくにつれて私たちの前に立つ指揮者、つまりは吹奏楽部の顧問は、容赦なく演奏にイチャモン、もとい注文をつけてくるのです。

 「もっと滑らかに!」「そこは力強く!」「クレシェンドが足りない!」まだ楽器を始めて1年ちょっとしか経っていない少年に、あれもこれもと指示を飛ばす顧問。しまいには「ピッチカートみたいに吹いて」と、(当時は)理解不能なことを言い出す始末。

 「じゃあお前がやってみろよ…!」と言いたい第二次反抗期真っ只中の衝動をグッとこらえて、要求に応えようとまた必死に楽器に息を吹き込むのでした。

 一音も鳴らさないのに好き放題言いやがって、ずるい。13歳の少年は、練習中の指揮者を見つめながら、そんなことを考えていました。



目立ちやがってずるい


 そんな少年も、高校生になり反抗期を抜け出す頃には、ある程度楽器も吹けるようになり、指揮者の要求にもそれなりに応えられるようになりました。

 すると、指揮者のイチャモンは単なるのイチャモンではなく、バンドの音楽を向上させるための的確なイチャモン要求であることに気づき始めました。そしてその頃には、中学生の頃に指揮者に抱いていた不満は徐々に消えていきました。


 が、これで指揮者に対するモヤモヤは終わりませんでした。今度は別の「ずるい」がやってきました。

 高校1年生の秋のこと。夏のコンクールでは部員全員で力を合わせて、素晴らしい演奏をすることができました。そして、心待ちにしていた本番のDVD鑑賞会。

 自由曲の一番のクライマックスで響く渾身のサウンド。と、同時に画面に映っていたのは、バンド全景のフェードを背景にした、気持ちよさそうに棒を振る指揮者のドアップ。

 もう何回も見た構図のはずなのに、そのとき初めて「頑張ったのは奏者の俺らなのに、一番良いところを持っていきやがって…」と謎の嫉妬心を抱いていました。

 よく考えてみれば、これはDVD会社への不平不満であるはずなのに、まだまだ未熟な高校生の不満の矛先は指揮者に向けられていました。

 一音も鳴らさないのに一番目立ちやがって、ずるい。15歳の青年は、画面の中の指揮者を見つめながら、そんなことを考えていました。



かっこよくてずるい


 高校3年間の青くて熱い吹奏楽生活を終え、いよいよ学校の音楽室を飛び出し、次のステージへ。4年間の大学での吹奏楽生活が始まりました。

 大学の吹奏楽部ではそれまでとは違い、指揮者は学生の中から選ばれます。言わば、大学の指揮者は奏者と対等な関係性。

 そんなことから、これまでよりもずっと近くで指揮者(同期)の様子を見ていると、それまでに気づかなかった指揮者の大変さが見えてきました。正確な音楽知識、スコアの理解、奏者を納得させる言葉。奏者とは比べ物にならないほど、たくさんのスキルが必要になることを知りました。

 なるほど、こんなに大変なら少しくらい目立たないと割に合わないな。いつも最後に指揮者が美味しいところを持っていくこの世の仕組みも、このときようやく納得して受け入れることができました。


 が、まだまだ私の指揮者に対する「ずるい」は止まりません。なぜなら、知れば知るほど、指揮者はかっこいいから。


 唯一観客に背を向けているのに、一音も出せないのに、いつも誰よりも大きな責任を背負っている。たった一人、周りより一段高い台の上で孤独に棒を振り続ける。

 それなのに、いつも正確な情報を与えてくれる指揮者。いつも誰よりも表情豊かな指揮者。いつも誰よりも楽しそうにしている指揮者。いつも奏者への感謝を忘れない指揮者。

 しかも演奏中、不安なときに前を見ると、どんなときでも堂々と棒を振る指揮者がいます。その安心感たるや。

 ピアニッシモの緊張、変拍子の不安、ソロの重圧。どんなに精神をすり減らす、激しく揺れる吊り橋の上ように不安定な状況でも、指揮者は必ず手を引いてくれます。

 大人になって本番を重ねるごとに、指揮者の存在の大きさとそのかっこよさに心を惹かれていくようになりました。これぞまさしく吊り橋効果。ずるい、ずるすぎる。

 一音も鳴らさないのに一番かっこいいなんて、ずるい。大人になった私は、本番中に指揮者を見つめながらそんなことを考えていました。


 そして来る2025年1月、NEW-S Wind Ensembleの演奏会で、ついに代表も吹奏楽の指揮者として舞台に立ちます。

 これまでに目にしてきたようなずるい指揮者に、私もなれるよう精進していきます。
 どうぞ温かい目で見つめていただけると嬉しいです!


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NEW-S Wind Ensemble

2025年1月11日(土)夜公演
西宮市民会館アミティ・ベイコムホールにて開催🎵

E-Mail : newswind2025@gmail.com
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Instagram : @newswind2025

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