公共空間から夜間遊休資産まで、まちの空間のいろいろな使い方を提案していく─NEWSKOOLが取り組む5つの機会領域
NEWSKOOLは1年間のリブランディング期間を経てナイトデザインカンパニーとして生まれ変わりました。私たちは「誰もが楽しめる夜をつくる」をミッションとして掲げ、夜という時間を切り口に、街や人々の暮らしを豊かにしていきます。
NEWSKOOLの取り組む5つの課題領域
2020年現在、COVID-19の拡大により、ナイトタイムエコノミーは大きな打撃を受けています。また、社会システムの根幹となっているフィジカルな繋がりは希薄になっており、新たなイノベーションをどのように創出していくかという問題にも直面しています。
先の見えない時代において、これからの社会に必要とされるのは、行政、企業、イノベーターや地域住民などのさまざまなステークホルダーが共通の認識を持つための「問い」を打ち立てられる会社だと考えています。そのため、私たちはアーティストや若手起業家、DMO(Destination Management Organization)などの様々な立場の方々からヒアリングした意見と過去プロジェクトのインサイトを統合し、以下のA~Eの5つを機会領域として設定しました。
より多くのステークホルダーに、私たちの立てた「問い」をご理解いただき、ご協力を得るべく、Night Culture Labでは、今回から5回にわたって上記の課題領域の深堀りを行います。
まちの空間のいろいろな使い方を提案していく
第1回では「A.まちの空間のいろいろな使い方を提案していく」について説明していきます。近年、デベロッパーによる再開発によって、都市空間は均質化し、生活者の需要とのミスマッチが散見されます。そこで、街の個性を取り戻すための鍵となるのが、夜間遊休資産や公開空地と呼ばれる「まちの空きスペース」の活用であると私たちは考えています。
夜間遊休資産の活用事例を増やしていく
わたしたちは夜間に使用されていない土地や建物の新たな使い方を提案し、活用事例を増やしていくことが重要だと考えます。文化遺産や商業ビル、空地などを活用していくことによって、夜の新しい楽しみ方を提供するとともに収益性を高めることが期待できます。
具体的には以下の3つを実行していきます。
①「夜間遊休資産のナレッジシェアリングの推進」では、夜間遊休資産として、いつどのような場所が活用できるかいう知見を溜め込み発信します。②「その場所だからこそできるコンテンツの開発」では、その地域ならではのローカルな魅力を生かしたイベント等のコンテンツを開発します。③「効率的な夜間オペレーションモデルの開発」では、夜間遊休資産の活用により発生する人件費や警備代等の効率的なモデルを開発し、夜間遊休資産の活用を推進します。
この課題領域における成功事例として、シドニーで行われている「Vivid Sydney」があります。
「Vivid Sydney」は夜間遊休資産を利用した官民連携のナイトイベントです。3週間のイベント期間中はオペラハウスなどのユニークベニューや湾岸のオープンスペース等がアートインスタレーションや3Dプロジェクションを用いることによってエンターテイメント化される他、ナイトタイムエコノミーやカルチャー、テクノロジーに関する様々なワークショップが開催されます。
観光閑散期の時期に毎年異なったテーマでイベントを開催することにより、夜間遊休資材を集客力・経済効果の高いコンテンツに変えることに成功しました。また「Vivid Sydney」は収益性だけではなく、持続可能性も重要視しており、使用電量効率がよいLEDテクノロジーの実験的使用、公共交通機関の夜間営業の促進、廃棄物の最小化、電子チケットの活用など様々な取り組みを行っています。
公共空間の民間活用の支援をしていく
都市公園や路上などの公共空間で民間事業者が事業を営めるように、公民連携の実証実験を支援していきます。公園や路上などの民間活用により、周辺エリアの魅力の向上が期待されます。
具体的には以下の3つを行っていきます。
①「官民で異なる立場や価値観のすり合わせ」ではトップダウン型でプロジェクトを進めていく官庁と制限のある中でプロジェクトを進めていく民間企業との間に入り、良好な関係作りを目指します。②「小規模な実証実験からはじめる成功事例の蓄積」では、社会実験や暫定利用などの「安価で速い、小さな変化」を積み重ねて知見を蓄積しながら、都市計画レベルの「高価で遅い、大きな変化」のあり方に影響を与えることを目指すタクティカルアーバニズムの考えに基づき、低予算でコミュニティーベースのプロジェクトを短期的に実践します。③「地域のステークホルダー調整者の育成」では積極的にナレッジシェアを行い、上記の①②を行えるようなステークホルダー調整者の育成を行います。
この課題領域の成功事例として「表参道COMMUNE」があげられます。
2010年、既存のファッション関連事業施設の終了により青山通り沿いの土地の一画が遊休地となりました。間口が狭いL字型の土地で使い勝手が悪く、また青山通り沿道の施設の管理にはさまざまな規制がかかるなど、民間では手が出しづらいこの土地を活用するため、まちづくりの観点からUR都市機構が土地取得に動きました。
UR都市機構は所有者となり2012年から2年間限定で土地を活用する事業者を公募しました。以後、この取り組みは今も続いており2年毎に事業者の再公募を繰り返しながら同一主体の暫定利用が続いています。この暫定利用の繰り返しにより、地域に対してパブリックスペースの必要性を浸透させることに成功しました。現在では、「WIRED CAFE」などを手がけるカフェ・カンパニーや青山の国連大学前広場で毎週末に「ファーマーズマーケット@UNU」を開催しているメディアサーフコミュニケーションズなど民間企業が進出、クリエイティブなまちづくりが可能になり、使い勝手の悪い土地でも官民の協力で活用できる成功事例となりました。
また、UR都市機構はこの事業を成功させるため、地域貢献を行いつつ、保有コストの低減を図りました。具体的には、地域の課題である違法駐輪対策として、敷地北側に所有する土地を駐輪場として港区に貸し出しを行った他、COMMUNEの敷地規模を適した規模に縮小することによりよって初期投資や地代等のランニングコスト等の事業者負担を抑える工夫を行っています。
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