見出し画像

週刊ニュースdeディベート(β) 第10号 日本は核シェアリングすべきか?でディベート!でディベート!

// 週刊ニュースdeディベート(ベータ版)
// 2021年3月27日 β版第10号
// ニュースつまみ食い
// 今週のお題 日本は核シェアリングすべきか?でディベート!

こんにちは。ディベート賛否さんです。今週も様々なニュースがありましたね。

●ソメイヨシノ全国で続々開花
「まんぼう」も解除され、ノーガードでお花見シーズンに突入します。3月17日福岡、20日東京、23日大阪など続々と開花し、もう見頃となっているエリアもあるようです。

●ゼレンスキー大統領が国会で演説
ウクライナのゼレンスキー大統領が国会で演説し、日本へ感謝の意を述べると共に対ロシア制裁など支援の継続を求めました。米議会での「真珠湾」発言で一般のゼレンスキー人気に陰りがでた感はありますが、戦時下において彼の手腕は見事なものだと言えるでしょう。

​​●北朝鮮新型ICBMミサイルを日本海へ発射
米国全域を射程圏内に収めるのではないかと言われるほどの技術の進歩が見られるようです。実験を繰り返しデータを取る中で技術は進歩する一方です。「またミサイル実験か」とあざ笑うような風潮も見受けられますが、実に恐ろしいことが進行していると受け止めるべきでしょう。


それでは、今週もよろしくお願いいたします。

1.今週のディベータブルなお題:日本は核シェアリングすべきか?でディベート!
ウクライナ情勢をめぐってロシアが核使用を示唆しています。日本に対しても「非友好国」認定をしつつ、会見や演説のたびに言及されています。日本の安全保障的には予断を許さない状況です。そんな中、日本でも「核シェアリング」の議論が沸き起こりました。現実的ではないという見方も強く、最近では議論は下火になっておりますが、日本の安全保障や議論のあり方、「核」という日本のトラウマをめぐる問題について示唆がとても多いものでした。議論の中では「核について議論すること自体」をタブー視する声も見られました。結論としては「核シェアリング」の実行自体は見送りとなった感がありますが「議論自体をタブー視した結果見送ること」と「内容を詳しく検討したうえで見送ること」は重みが全く異なります。今回は、そ

~核シェアリングとは何か?~
日本で核シェアリングが唱えられたとき、その文脈は「米国の核ミサイルを国内に配備することで自衛のために使用可能であり、それ自体が抑止力になる」といったものでした。しかし、これは核シェアリングのそもそもの概念や実態とはかなり異なっており、注意が必要です。

核シェアリングは実際はどういうもののことを言うのでしょうか?これは、NATOで実施されている「核保有国の核を自国に配備する」取り組みのことで、ドイツなどで実施されています。ただし、核兵器の使われ方には重要な前提があります。それは

①核兵器の使用はあくまでも保有国(主に米国)の判断に委ねられる
②核兵器の使用方法は、地上経由で大量に流入してくる敵国兵士をせん滅するため、「自国の領土で」核兵器を使用することを前提にしている

ということです。即ち、既存の核シェアリングの目的は、地上経由で敵国軍が大量に流入してくることを前提としているかつ、自国内における使用が原則ということなのです。四方を海に囲まれた日本では、陸伝いに敵国軍が大量に襲来するケースはそもそも考えにくいです。国民感情としても、広島・長崎を経験していることから自国内に核兵器を落とすことに対しては相当の抵抗があるでしょう。

また、核シェアリングで想定されている核兵器は「戦略核」と言われる低出力の核兵器が主流です。広島・長崎で使用されたような都市一つを丸ごと破壊する威力を持つ核兵器は主に相手国が核保有国を核攻撃した際の報復として使用されることが想定されており、核シェアリングの主な対象とはなっていません。

~非核三原則見直し~
 核シェアリングの議論をめぐって「非核三原則見直し」も取り上げられました。非核三原則は「核を作らず、核は保有しない、核は製造もしない、核を持ち込まないという」という三原則です。1967年(昭和42年)に当時の佐藤栄作首相によって提唱されました。

核シェアリングはこの「持ち込ませない」という原則に抵触します。核シェアリングの議論が起こった際、併せてこの点に関して議論が起こりましたが、「非核三原則について議論することをタブー視する」流れが広がったため、ネットやマスメディアにおいて「議論すべき」と発言しただけで叩かれる有様でした。以来、議論は目立って行われていないままたち消えの状態となっています。非核三原則は「日米安全保障条約に基づくアメリカの核の傘に依存する」ことが前提となっています。ここで日米安全保障について概観を見ていきましょう。

~日米安全保障とは~
 第二次世界大戦以後、日本は米国と日米安全保障条約を結び、いわゆる「核の傘」が抑止力を発揮しているとされています。条約の主な内容として、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」に軍は日本における施設・区域の使用を許され、日本はこれを無償で提供すべき義務を負う。「武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力」を維持し発展させることを定め、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」に対しては、「共通の危険に対処するように行動する」ことを明示しています。

核抑止力(核の傘)および非核三原則はこの条約に基づくものなのです。

~核シェアリングの効果~
日米安全保障における核の存在は「抑止力」を主な目的としています。核を保有していることによって、核弾頭等を積んだ大陸間弾道ミサイルなどによる壊滅的な攻撃を防ごうというものです。しかし、先に説明したように、核シェアリングを実施する場合における「抑止力」は「自国に(主に陸路で)流入する敵国軍に対する攻撃可能性」によるものであり、日本国内の文脈ではシナリオとしてそもそも考えづらく、あまり効果を期待できないとされています。その一方で、核兵器自体が真っ先に攻撃対象にされてしまい、周辺地域の危険性が急激に高くなってしまうといったデメリットは明確です。

 これらの理由から、日本が仮に核シェアリングで効果を期待するには、既存の核シェアリングの枠組みから離れた新しい形を模索する必要があるでしょう。例えば、米国の核兵器を米国内と同様の形で日本に配備し「日本国内への投下を前提とせず」相手国が日本を核攻撃した場合の「報復として利用する」ことを前提とした配備などが考えられます。しかし、この枠組みでの核シェアリングはNATO等でも実現していない極めて特殊な形式であり、その効果や各国の反応などの推定が困難であるため、実現に向けてのハードルは高いでしょう。

~まとめ~
湧き上がってすぐに立ち消えになった「核シェアリング」の議論は上記のような経緯から現実性があまりない、という結論になったと考えられます。しかし、議論を尽くすことができる社会の実現を目指す本メディアとしては、一部にあった「議論自体をタブー視する」風潮には賛同できません。平和を願う気持ちは世界共通である中で、「核」などの議論を「戦争を連想させるものだから」という単純すぎる理由で議論しないことが良いとは考えられません。平和は不断の努力なしには達成されないという前提に立って、目の前のリアルな環境を計算に入れつつ、冷静に平和を実現するための構成要素をひとつひとつ丁寧に検討・議論していく姿勢が私たちに求められているのではないでしょうか。

—————————
ニュースdeディベートでは読者の皆さまの投稿を募集しています。感想でもエッセイでもノウハウ等の共有でも構いません。掲載の有無については、ニュースdeディベート編集委員会にて精査した上で判断させて頂きます。誤字や文章の構成など、内容を改変しない限りにおいて修正を行う場合がございます。あらかじめご了承ください。掲載された文書は、他のメディアや刊行物等に転載される場合がございます。ご了承願います。

作者 : ディベート賛否さん / 週刊ニュースdeディベート
Twitter : https://twitter.com/newsdedebatejp
投稿・質問受付: contact.newsdedebatejp@gmail.com

ディベート力を皆のものとするため、今後も頑張ります。