私達の周りにもあった、未知の物質:ダークマター(2)
今回も、この世界の真の法則を知る、その全てを理解する、外界の全てを知ることは己の内面世界を知ることでもある、ということで純粋な知性の世界、形而上学/形而下学の世界を探究する瞑想を行なっていきましょう。
前回は“存在しているはず”なのに“全く見えない・観測できない”ものがある、ということを紹介しました(*1)。「観測できる星の質量を全て足しても、運動力学的に計算される重力と釣り合わない」、「見えている物質よりも10倍以上の質量の“何か”が存在している」という事実がツヴィッキー博士らによって提唱されました(*2)。これらは“ダークマター(暗黒物質、*3)”と呼ばれ今だに直接的に観測されたことがありません。
“重さ(質量)”だけが存在し、“影も形もない”、この21世紀のハッブル宇宙望遠鏡や最新のジェームス・ウェッブ望遠鏡(*4)をもってしてもその姿を捉えることができません。ルービン博士がお隣の銀河、アンドロメダ銀河を計測した結果も同様で「見えている天体の質量よりも10倍以上重い」という計算結果が導かれました(*5)。もしかしたら本当のアンドロメダ銀河は図1右側のように見えている以外のものがたくさんあるかもしれません。
そして、よりマクロな視野で見ると実際の銀河は“見えない何か(ダークマター)”でつながっているのではないか、という説があります。図2に示す様に、一般的な我々の認識では図2左側のように宇宙空間の中で個々の銀河が散らばって存在しているというのが常識です。但し、図2右側のように本来は銀河間をつなぐ“何か”が存在していて銀河同士がネットワークを構築しているように存在している、という説があります。この点に関する新たな発見を紹介します。
・見えないものを可視化する研究
カナダのウォータールー大学のある研究者らは近接する銀河は図3右(想像図)に示す様に“本当は見えない何かで繋がっているのではないか”と考え、この“銀河同士をつなぐ見えない何か”の観測を試みました(*6)。画像ではもちろん、この“何か”は可視光線や赤外線やUVを使っても全く見ることができません。この“未知の物質(ダークマター)”は光子(photon)や電磁波と相互作用しない(反射もせず透過してしまう)ため、これまでの説明通り「見ることも触れることもできない」のです。
このような“質量だけが存在し見えない未知の物質”に対して彼らが用いた方法が“重力レンズ(*7)”による観測です。この原理を簡単に説明すると、図4に示すようにある天体から発せられた光が地球に届くまでの間に質量の大きな天体がある場合、重力による空間の歪みのために“凸レンズを通して見たような背景の歪み”が観察されます。ブラックホールによる重力レンズが有名ですが、銀河のような大規模な天体でも重力レンズ効果が得られます。
この重力レンズを利用してHudson氏らがどのように研究したかを図5に示します。図5のように“近接して見える銀河”は宇宙に数多く発見することができます。しかし図5Aのように“実際に近い距離にある2つの銀河”もあれば、図5Bのように“近接して見えるが実際には非常に距離が離れている2つの銀河”のパターンもあります。
ここで仮説として図2右や図3右のように“近隣の銀河同士が実は見えない重い何かによってつながっている”とするならば、図5下段のように“AとBそれぞれで2つの銀河の間に何か違いが出るのではないか”と彼らは考えました。光学的に何も無いように見えていても、もし“重い何か”があれば重力レンズ効果で背景の歪みが観測できるのではないか、という研究方針です。
実際にこのような銀河のペアを探索し、重力レンズによる背景の歪みを観測した結果は図6のようになりました。図6Bのように“近接して見えるが実際には距離の離れた2つの銀河”の間には重力の歪みはほとんど見られません。それに対して図6Aのように“実際に距離が近い2つの銀河”の間にはオレンジ色の橋がかかったような信号が見られます(黄矢印)。
このように、この研究においても「銀河と銀河の間にも確かに“見えない何か”が存在している可能性が極めて高い」ということが科学的に証明されました。どうやら宇宙の姿は我々が常識的に知っているアンドロメダ銀河(図1左)、銀河団(図2左)、双子銀河(図3左)ではなく、真の姿は図1右や図2右や図3右のような想像を超えた姿をしている可能性が高そうです。
・私達の住む地球のある天の川銀河はどうなのか
私達の住む地球があるこの銀河には太陽のような恒星は幾つあるかというと、おおよそ1000億〜4000億個ほどと言われています(*8, *9)。この太陽系も太陽の質量が99.9%を占めるように、銀河の“見えている天体”の質量は太陽のような恒星の数で概算することが可能です。
そうすると、巨大ブラックホール(太陽の数百万倍の質量)を含めたとしても天の川銀河の質量は恒星の合計である1.0〜4.0×10^11乗個の太陽の重さであると概算できるはずです。
そして、我々の天の川銀河の質量を運動力学的に計算した科学者らがいました(*10)。2019年に発表されたオランダのPosti氏らは天体の運動だけではなく、天体の中の金属の成分なども考慮に入れて現代の科学で出来る限りの非常に精密な計算を行いました(図8)。その計算結果はなんと、この銀河系の質量は太陽約1.3×10^12乗個分もあることが判明しました。
単純に計算すると、この天の川銀河は「見えている星の数よりも3〜10倍ほど重い」ということが言えます。そして彼らの計算結果によると中心からある範囲(6万5千光年)内の質量の約70%がダークマターである、と結論づけています。
・私達の周りにもやはりあったダークマター
これまで示されてきた“全く見えない未知の物質:ダークマター”は遠いかみのけ座銀河団(*2)や隣のアンドロメダ銀河(*5)に存在していることはこれまでも示されていましたが、やはり我々が住む地球があるこの天の川銀河にもダークマターは存在しているということがほぼ確実なようです。
我々が知っている天の川銀河は図9左側に示すものがNASAからも公式に発表されています。しかし、実際は図9右側の想像図に示すように見えていない未知の物質に覆われ、近隣の銀河と何かでつながっているかもしれません。図2右、図3右の想像図のように銀河同士が何かで連結され、宇宙規模の壮大なネットワークを構築しているかもしれません。
・我々は未知の物体に囲まれながら気付かずに生活している
先ほど説明したように、“我々が知覚できる銀河はその全質量の10〜30%程度”ということが科学的に解明されました。ただし、「残りの質量の70%以上を占めているものは何なのか?」という問いには未だ科学で答えは出ていません。
21世紀の最新の科学をもってして得られた答えが「我々が今まで知覚していた世界は全質量の1/3以下に過ぎなかった」ということになります。「人類以外に知的生命体はいない」「見えない星など存在しない」「異次元世界・平行世界などどこにも存在しない」という考えはかつては常識的だったかもしれません。しかし、最新の科学を知れば知るほど、逆にあらゆる可能性を否定できなくなってしまいます。「人類が如何に無知であるか」を知ることこそが「進化への第一歩」であることは少なくとも間違いありません。この未知の物質を解明する取り組みについてまた今後紹介していきたいと思います。
(著者:野宮琢磨)
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