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ぼくの王国 #9「夢」 |小説 ユニバーサル・カバラの物語 第一章

石畳の道がのびる街角。霧のような小雨が陰鬱な空気を醸しだす。古いアパートが両側に立ち並ぶ道を、パカパカと音を立てて馬車が通りすぎる。馬の蹄が水たまりを蹴りあげ、通りすがりの女のスカートに泥が跳ねる。女の連れ合いの男が馬車に罵声を浴びせる。

点々と続く街灯にガス灯が点る。夕暮れの闇が少しずつ深くなる。
ある街灯の下に、傘もささずにひっそりとたたずむ男がいる。山高帽をかぶり、黒いマントを纏っている。両耳の下から長い髭が顔を覆っているが、顔つきはまだ若い。男はマントの下から懐中時計を取り出すと、時間を確かめる。午後5時少し前になっている。男は歩き始める。

黒マントの男は路地裏に入る。ある家の前で立ち止まる。目の前に、人が一人通れるほどの小さな扉があり、勝手口のようだ。地面には野菜を入れる麻袋が転がっている。扉の近くの窓から湯気が立ちのぼり、煮炊きをする音が漏れている。男は人の気配を確かめると、コンコンと扉を叩く。
少し間があって、頭に布を巻きつけたおかみさんが扉から顔を出す。黒マントの男を見とめると、眉をしかめる。扉の向こうは台所で、年かさのいった司祭風の男が夕食のスープを啜っている。黒マントの男は司祭風の男に聞こえるように大声で言う。

「先生に質問があります。ぼくはなぜこの世に存在しているのか?」

おかみさんは迷惑そうな顔になる。

「そういう話は、集会にいってやっておくれよ」

黒いマントの男は言う。

「集会では先生に直接お目にかかることができない。先生、ぼくの質問に答えてください」

先生と呼ばれた司祭風の男はスプーンをテーブルに置く。そして椅子から静かに立ち上がると勝手口まで歩いてくる。そのままモノも言わずに扉をバタンと閉め立てる。

黒マントの男は、その日から夕方5時になると毎日勝手口の扉を叩く。おかみさんが扉を開けると、毎日違う質問を投げかける。夕食を食べている司祭風の男は、一言も語らずに毎日扉を閉め立てる。

一週間立った夜、黒マントの男は夕方5時に勝手口の前に立つ。扉を叩く音がかき消されるほど、激しい雨が石畳を叩きつける。男は繰り返し強く扉を叩く。おかみさんが扉を少し開けて顔をだす。

「またオマエさんかい。雨が中に入ってくるから、今日はとっとと帰っておくれ」

黒マントの男はかまわず大声を張り上げる。

「先生、答えてください! 宇宙におけるシェキナーの役割とは?」

しばらくして、司祭風の男が勝手口までやってくる。扉は大きく開かれた。
司祭風の男がはじめて口を開く。

「月曜日の8時にもう一度来るがいい」

黒マントの男は深々と頭を垂れる。

→ …続きを読む(ぼくの王国  10「ぼくは誰なのか?」)

前回の話はこちら。

​誰も読んだことのない、誰も書いたことのない、本当の成功の物語。
「ユニバーサル・カバラの物語」
秘密はここに。

制作
グッドニー ・グドナソン
中込英人
谷村典子

グッドニー ・グドナソン

モダンミステリースクールファウンダー
リネージホルダー メインイプシスマス

アイスランドの貴族の家系に生まれ、生まれてすぐに双子の兄を亡くす。以来兄の存在を通し、目に見えない世界とこちらの世界を同時に生きるようになる。 10代で英国のミステリースクールに招聘され、カバラ、ヘルメス学、古代エジプトやケルト、ドルイドマジックなどあらゆる魔術と形而上学を学び、最高位の魔術師となる。1997年にモダンミステリースクールを継承(当時はロッキーマウンテンミステリースクールの名称)。「No More Secret」の下、それまで秘密にされてきた真の形而上学の教えをオープンにする。現在は世界60カ国に広がるミステリースクールで教える一方で、DJとしてフジロックのステージに立ったり、ハリウッドの映画祭でプロデューサーとして活動するなど、多方面で活躍。まるでファンタジー映画や物語のようなその生き様を通し、あらゆる可能性と喜びを表現し続けている。オーロラエンタテイメント・エグゼクティブプロデューサー。
中込英人

モダンミステリースクール校長
リネージホルダー サードオーダーイプシスマス

世界中で形而上学を教え伝えるメタフィジックス・ティーチャー。幼少期より空手の天才少年と称され、大山倍達氏のもとで内弟子として研鑽を積んだ武道家でもあり、15歳で渡米した後、飲食店経営などで成功を収める。また、武道の実力を買われ、ダライ・ラマ14世のボディガードを担当。ダライ・ラマ14世から「スピリチュアルな道を人に説くもの」と称されたことをきっかけに、密教の学びを始める。密教行者として厳しい修行を積んだのち、30代で一時帰国。ミステリースクールおよび形而上学の学びと出会い、以降、スクールの拡大に全精力を傾け、2017年に最高峰の魔術師である「イプシスマス」の称号を得る。形而上学をわかりやすく、ユーモアを交え伝えるクラスは、国や文化を問わず常に笑いと活気に満ちている。著書『支配者(エリート)が独占してきた成功の秘笈』『MAX瞑想システム™️ー脳を鍛え可能性を引き出す究極の成功メソッドー』
谷村典子

作家・脚本家
日本シナリオ作家協会会員

成蹊大学卒業後、会社勤めの傍らで松竹シナリオ研究所卒業。2002年テレビアニメシリーズで脚本家デビュー。テレビ、映画、舞台で、幅広いジャンルの脚本や構成台本を担当する。
L.A.Fear&Fantasy映画祭他では、作品賞などを受賞。タロットをきっかけにモダンミステリースクールと出会い、形而上学の学びを深めている。Atelier ADITI主宰。http://atelier-aditi.jp/
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