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ぼくの王国 #10「ぼくは誰なのか?」 |小説 ユニバーサル・カバラの物語 第一章

遠くからぼくを呼ぶ声がする。

「オーナー、しっかりしてください。オーナー!」

ぼくはレストランの厨房の床に倒れている。周りにはスタッフが集まっている。

ぼくはゆっくり目を開き、みんなに向かって言う。

「こんなところで何をやってる。お客様を待たせるな。早く仕事に戻れ」

接客のリーダーはぼくの心臓をマッサージしていた手を止める。

「まだ開店前ですよ。急に倒れるから驚きました。救急車が来るまでじっとしていてください」

すぐに救急隊員が飛び込んでくる。ぼくはいたって元気だ。けれども無理やりストレッチャーに乗せられて、病院へ運ばれる。

医者が首をかしげるほど、ぼくの体は健康だ。毎晩の夜食のせいでコレステロール値が少し高いくらい。ぼくがなぜ倒れたのか、原因はわからない。ぼくは医者に感謝を述べて病院を出ていく。

ぼくは深夜近くにレストランに戻る。ちょうど店は閉まったばかり。ぼくは客の興奮の余韻が残るフロアを歩く。

「お疲れさん!」

スタッフの一人一人に声をかける。接客のリーダーが売り上げ台帳を持ってやってくる。リーダーはぼくの顔を見て立ち止まる。フロアにいるスタッフも、みんな手を止めてぼくの顔を見ている。リーダーが恐る恐る言う。

「えっと、オーナー、ですよね?」

ぼくは大きな声で言う。

「何を言ってるんだ。ジロジロぼくを見るな。ぼくの顔に何かついているのか?」

「いえ、そういうわけでは。すみません」

リーダーは今日の売り上げの報告をはじめる。リーダーの言葉はぼくの耳をすり抜ける。それよりもリーダーの顔が気になり、初めて見るかのように見つめる。

リーダーが気づいて、ぼくに言う。

「オーナー、ぼくの話を聞いてます? お疲れなら明日にしますが」

「いや、続けてくれ。ところで、キミの横顔はうっとりするほど美しいんだな」

リーダーは台帳をパタンと閉じる。

「今日はもうやめておきましょう」

報告は中断し、ぼくはスタッフの車で家まで送られる。


ぼくは久しぶりにおじさんの道場に顔を出す。馴染みの生徒たちは、ぼくの顔を見てかわるがわる言う。

「先生? 誰だか分からなかったよ。少しの間にずいぶん雰囲気が変わったね」

おじさんもめずらしく心配する。

「オマエ、生気がないぞ。別人みたいだ。病気じゃないのか。病院で調べてもらえ」

ぼくはいたって元気なのに、自分がよくわからない。朝起きて、今日は何をすべきかわからない。長い間、レストランの売り上げのことだけを一途に考えてきた。それが正しいことなのか、今は分からない。足がふわふわ浮ついて、何をやっても落ち着かない。この世にいるのに、この世にいる気がしない。

あの古い赤い本が届いてから、ぼくはどこかがおかしい。
ぼくは再び赤い表紙を開く。そこにはまた文字が増えている。

「あなたはだれ?

 あなたは何をするの?

 あなたはどこからきたの?

 あなたはどこへいくの?

 あなたの人生の目的はなに?」

 ぼくは何がなんだかわからない。ぼくはどうしてしまったのだろう。

→ …続きを読む(第二章 ぼくの基盤 1「旅人」)

前回の話はこちら。

​誰も読んだことのない、誰も書いたことのない、本当の成功の物語。
「ユニバーサル・カバラの物語」
秘密はここに。

制作
グッドニー ・グドナソン
中込英人
谷村典子

グッドニー ・グドナソン

モダンミステリースクールファウンダー
リネージホルダー メインイプシスマス

アイスランドの貴族の家系に生まれ、生まれてすぐに双子の兄を亡くす。以来兄の存在を通し、目に見えない世界とこちらの世界を同時に生きるようになる。 10代で英国のミステリースクールに招聘され、カバラ、ヘルメス学、古代エジプトやケルト、ドルイドマジックなどあらゆる魔術と形而上学を学び、最高位の魔術師となる。1997年にモダンミステリースクールを継承(当時はロッキーマウンテンミステリースクールの名称)。「No More Secret」の下、それまで秘密にされてきた真の形而上学の教えをオープンにする。現在は世界60カ国に広がるミステリースクールで教える一方で、DJとしてフジロックのステージに立ったり、ハリウッドの映画祭でプロデューサーとして活動するなど、多方面で活躍。まるでファンタジー映画や物語のようなその生き様を通し、あらゆる可能性と喜びを表現し続けている。オーロラエンタテイメント・エグゼクティブプロデューサー。
中込英人

モダンミステリースクール校長
リネージホルダー サードオーダーイプシスマス

世界中で形而上学を教え伝えるメタフィジックス・ティーチャー。幼少期より空手の天才少年と称され、大山倍達氏のもとで内弟子として研鑽を積んだ武道家でもあり、15歳で渡米した後、飲食店経営などで成功を収める。また、武道の実力を買われ、ダライ・ラマ14世のボディガードを担当。ダライ・ラマ14世から「スピリチュアルな道を人に説くもの」と称されたことをきっかけに、密教の学びを始める。密教行者として厳しい修行を積んだのち、30代で一時帰国。ミステリースクールおよび形而上学の学びと出会い、以降、スクールの拡大に全精力を傾け、2017年に最高峰の魔術師である「イプシスマス」の称号を得る。形而上学をわかりやすく、ユーモアを交え伝えるクラスは、国や文化を問わず常に笑いと活気に満ちている。著書『支配者(エリート)が独占してきた成功の秘笈』『MAX瞑想システム™️ー脳を鍛え可能性を引き出す究極の成功メソッドー』
谷村典子

作家・脚本家
日本シナリオ作家協会会員

成蹊大学卒業後、会社勤めの傍らで松竹シナリオ研究所卒業。2002年テレビアニメシリーズで脚本家デビュー。テレビ、映画、舞台で、幅広いジャンルの脚本や構成台本を担当する。
L.A.Fear&Fantasy映画祭他では、作品賞などを受賞。タロットをきっかけにモダンミステリースクールと出会い、形而上学の学びを深めている。Atelier ADITI主宰。http://atelier-aditi.jp/

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