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ぼくの王国 #8「謎の本」 |小説 ユニバーサル・カバラの物語 第一章



ぼくはめずらしく午前0時前に家に戻る。レストランの売り上げが伸びてから、ぼくは一軒家に引っ越している。部屋の中はまだ段ボールが積まれたまま。それでもぼくは以前より早く家に帰る。20代でレストランのオーナーになり、一軒家を手に入れたことを確認するため。家は、ぼくの満足を確認するためにある。

玄関前に大きな包みが置いてある。持ち上げてみるとズシリと手に重い。宛名はぼくの名前になっているが、差出人の名前がない。ぼくはためらうが、好奇心に駆られて封を開ける。中から古めかしい本が出てくる。表紙は赤い糸で織られた布に覆われている。大きな緑の木の刺繍が施されているが、ところどころほころびている。何百年も昔に書かれたかのように、紙は黄ばみ、ごわついている。古紙の匂いと布のホコリがあたり一面に立ちこめて、ぼくはゴホゴホ咳き込む。

ぼくは慎重に赤い本をリビングに持ち込む。しばらく表紙の緑の木を眺めてから、赤い表紙に手をのばす。最初のページに青黒いインクで描かれた古めかしい文字で短い文章が綴られている。

「あなたはだれ?」

ぼくは面食らう。さらにページをめくるが、あとは白紙のページが続く。ぼくは混乱する。一体、この本は誰が何のためにぼくに送ったのだろう。たった一行のメッセージを伝えるために。

ぼくはレストランでスタッフに聞いてみる。

「ぼくは誰だと思う?」

スタッフは笑う。

「レストランのオーナー」

「20代の空手が趣味の男」

「ピンチになると知恵が働く人」

「遠い国からやってきた異邦人」

ぼくは笑う。そしてだんだんおかしな気持ちになる。確かにどれもぼくだ。でもどれも本当のぼくじゃない。本当のぼくはどれ?

家に帰ると、ぼくはベッドサイドに置いてある古くて赤い本をふたたび手に取る。

表紙を開いた手が止まる。ドクンと心臓の音がこだまする。最初のベージに書かれた文字が、一行増えている。

「あなたはだれ?
 あなたはどこからきたの?」

ぼくはゾッとする。ぼくの留守の間に、誰かが家に入ってきて、ページに文字を書き足したのだろうか? でもぼくは鍵を開けて家に入ってきた。寝室にある金時計も、パソコンも、そのままになっている。ただ文字だけが増えている。

ぼくは夢を見ているのか? 

大事なことを考えなければいけないというのに、ぼくは睡魔に襲われる。



→ …続きを読む(ぼくの王国  9「夢」)

前回の話はこちら。

​誰も読んだことのない、誰も書いたことのない、本当の成功の物語。
「ユニバーサル・カバラの物語」
秘密はここに。

制作
グッドニー ・グドナソン
中込英人
谷村典子

グッドニー ・グドナソン

モダンミステリースクールファウンダー
リネージホルダー メインイプシスマス

アイスランドの貴族の家系に生まれ、生まれてすぐに双子の兄を亡くす。以来兄の存在を通し、目に見えない世界とこちらの世界を同時に生きるようになる。 10代で英国のミステリースクールに招聘され、カバラ、ヘルメス学、古代エジプトやケルト、ドルイドマジックなどあらゆる魔術と形而上学を学び、最高位の魔術師となる。1997年にモダンミステリースクールを継承(当時はロッキーマウンテンミステリースクールの名称)。「No More Secret」の下、それまで秘密にされてきた真の形而上学の教えをオープンにする。現在は世界60カ国に広がるミステリースクールで教える一方で、DJとしてフジロックのステージに立ったり、ハリウッドの映画祭でプロデューサーとして活動するなど、多方面で活躍。まるでファンタジー映画や物語のようなその生き様を通し、あらゆる可能性と喜びを表現し続けている。オーロラエンタテイメント・エグゼクティブプロデューサー。
中込英人
モダンミステリースクール校長
リネージホルダー サードオーダーイプシスマス

世界中で形而上学を教え伝えるメタフィジックス・ティーチャー。幼少期より空手の天才少年と称され、大山倍達氏のもとで内弟子として研鑽を積んだ武道家でもあり、15歳で渡米した後、飲食店経営などで成功を収める。また、武道の実力を買われ、ダライ・ラマ14世のボディガードを担当。ダライ・ラマ14世から「スピリチュアルな道を人に説くもの」と称されたことをきっかけに、密教の学びを始める。密教行者として厳しい修行を積んだのち、30代で一時帰国。ミステリースクールおよび形而上学の学びと出会い、以降、スクールの拡大に全精力を傾け、2017年に最高峰の魔術師である「イプシスマス」の称号を得る。形而上学をわかりやすく、ユーモアを交え伝えるクラスは、国や文化を問わず常に笑いと活気に満ちている。著書『支配者(エリート)が独占してきた成功の秘笈』『MAX瞑想システム™️ー脳を鍛え可能性を引き出す究極の成功メソッドー』
谷村典子
作家・脚本家
日本シナリオ作家協会会員

成蹊大学卒業後、会社勤めの傍らで松竹シナリオ研究所卒業。2002年テレビアニメシリーズで脚本家デビュー。テレビ、映画、舞台で、幅広いジャンルの脚本や構成台本を担当する。
L.A.Fear&Fantasy映画祭他では、作品賞などを受賞。タロットをきっかけにモダンミステリースクールと出会い、形而上学の学びを深めている。Atelier ADITI主宰。http://atelier-aditi.jp/

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