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精神性を高める言葉と方言

言葉には深い意味や響きがあります。鹿児島弁という方言にも、生きた魂を感じる言葉がたくさんあります。子供の頃から聞いていた言葉に「いっだます入れんか」があります。それは『生きた魂を入れなさい』という意味だったのでしょうか。よく男子に向かって使われていたその方言を、真剣に取り組むことを意味していると、女子の私は解釈していました。魂とは一体何でどこに入れるのか、疑問を抱くことなく、なんとなく感じながら成長しました。例えば「あん子は、たましきっじゃ」と言われることがありました。これは『あの子は、魂がしっかりしていて賢い』という意味なのでしょうか。また、「ねんぬ入れっせえ」もあります。『念を入れて丁寧に』という意味です。これも、心の奥深くに響く言葉です。このような言葉を私は真剣に受け止めてきました。
日常的に「気をつけて」と使っている言葉がありますが、この気が何なのかと深く考えたことはありませんでした。しかし、最近では途轍もなく大切な物だと意識するようになりました。

父が戦時中に近衛兵の部隊にいる時、皇居でのことです。宮中言葉が鹿児島弁と共通していたと言っていました。「他県のし(人)には通じらんかったど」と、少し優越感が垣間見えた亡き父の顔が懐かしく想い出されます。
その時に教えてくれたのは、豆腐が『おかべ』で汁物が『おつけ』です。父は毎晩のように、焼酎の肴に皿の上でドンと存在感を示すおかべを一丁「うんめ、うんめ」と食べていました。昔のおかべはボリュームがありました。今風に言うと、ドン引きしそうなおつまみの量です。
夕方、毎日のように近くの豆腐屋にお使いに行くのは私の仕事でした。

おかべの真ん中を一辺3㎝程の立方体に繰り抜き、その窪みに醤油を溜めます。まずは、繰り抜いた部分を真ん中の醤油に、チョンチョンと付け美味しそうに食べていました。それから四つ角を順番に箸で摘んで、いつの間にか、おかべは端から削られて崩れそうになっていました。真ん中に醤油を入れ過ぎている様に見えましたが、父にとっては計算された量だったのかもしれません。几帳面な父で、隣りの高校生のお姉さんに二次方程式を教えたり、老人になってからもピタゴラスの定理を言っていました。
味噌汁のことは『みそんおっけ』と言っていました。他にも精神性を現す言葉が共通していたのでは、と想像が膨らみます。
鹿児島弁は戦時中に暗号としても使われた言葉ですが、その難解さが敵を欺くのに役立ちました。しかし、最終的には解読されました。
年齢を重ねるにつれ、昔の美しい方言や目には見えない気、魂、念など精神性を高める言葉の大切さを感じています。


文中で豆腐に触れたので、全国の在来種大豆を使った豆腐を紹介します。地球畑荒田店で購入しました。
私は、豆腐をさほど好みませんが一口食べただけで美味しいと思いました。そのお店で月に一度、第三金曜日の16時頃からの販売で、早く売り切れてしまうそうです。

掲載の許可を頂きました。
永谷豆腐店でも直接購入できます。

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