お得なシステムキッチンが購入できた

　築33年の台所のフローリングが所々痛んできたので、張り替えをする事になった。ついでに流し台も新調しようと思い、2月の週末に毎週のようにショールームを巡った。

　深く考えず、明るい気持ちでプラリと出かけた1日目。まずはKショールームへ行くと、玄関に体温測定機と消毒液、予約者記名用紙が置かれていた。そこで初めて予約をするべきだった。と気が付いた。しかし、自由に見学して良いと言われたので恐縮の面持ちで色々見て回った。すると立派なシステムキッチンの価格を見て驚愕し「我が家には高級すぎる。予算超過だ」心の中で呟き、胸中穏やかでなかった。少し説明を聞きテーブル席でセルフサービスのコーヒーを飲みながら、頂いたパンフレットに軽く目を通し、それから静々とそこを後にした。

　次はTショールームへ向かった。こちらも予約なしのため、自由見学をし少し説明を受けた。ショールームの特等席には、人工大理石のアイランドキッチンが置かれていて魅せられた。人工大理石は、業界トップの品質だと漏れ聞いていたから流石だと思った。さっきまで意気消沈していたのにその高額な値札を見ても驚かず、いつの間にか立ち直り平常心だった。側で夫も良さげに見入っていた。

　３ヶ所めは、ホーローで有名なタカラスタンダードへ行くことにした。近辺にショールームがあるので効率よく見学できるのは有り難い。こちらでは、少し雰囲気が異なった。玄関に数人のスーツ姿の男性の姿があり、お得意様を出迎えているかのようだった。場違いなところに来てしまったようで、ここでは肩を竦めながら中へ入ったが、予約なしにも拘らず、運良くじっくりと説明を受けた。

　一番気になったのは、やはりアイランドキッチンだった。それを見て「このお値段ですか、安いですね」声のトーンが高くなっていた。
「そうです」女性社員が笑顔だった。私は、その価格に少し興奮していた。前の２ヶ所の見学で、決して安価ではないそれが安く感じられ、金銭感覚が麻痺したかのようだった。

　ホーローと言えばホーロー鍋の剝げて錆びた情態が目に浮かび、あまり興味がわかなかったが、説明を聞いているうちに考えが変わり、見積りをしてもらうことになった。最初から値段を高く設定せず割引きもあまりない分、適正価格が提示してある。と言う話に好感を持った。一日中動き回ったせいか、価格に一喜一憂したせいか自宅に帰ると、そこはかとなく疲労感があった。

　後日、タカラの見積書が郵送されてきたので、算盤をはじいたり、パンフレットを細かく見たり研究が始まった。YouTubeの動画も数知れず見て、各メーカーの特色を知り迷った。

　そうこうしているうちに、タカラの『トレーシア』フラット対面プランⅡ列型(スリムタイプ)を見つけ、良さを直感し更に考えを煮詰めることにした。世の中にこんなに良いものが誕生しているのだと感慨深かった。そして品質、価格、サイズ、お手入れを考えて、これだと決めた。木製の扉にシートが貼ってある物が多い中、ホーロー扉はシートの剝がれを心配する必要がないことも決めてになった。しかし、II列型のI列のみを購入することにした。シンクと調理台のある方だけである。ガスコンロとガスオーブンは、現在の物をそのまま活かして使うことにした。随分と節約ができた。

　アイランドキッチンは、島のように孤立しているがII列型は片側を壁に付けて設置する。それは、一般的な対面キッチンと同じである。カウンターが無いところは、アイランドキッチンのようでもあり、両方の特徴を併せ持っている。散らかっていたら丸見えになるのが若干気にはなるが「爺さん婆さんの2人暮らしだから構いません」と夫が笑い飛ばしたので、気にしないことにした。

　シンクや調理台は居間の方を向き、その90㎝程後ろにガスコンロや換気扇は壁に沿って設置する。狭いようだが、かえって無駄な動きが少ない気がする。油はねは、壁側のボードをサッと拭き楽勝だと思う。

　夫はさほど興味がないだろうと高を括っていたが「対面キッチンの今の形はもう飽きた。解放感がある方が良い」と意外なことを言ったので有り難かった。これ、と品が決まるとリフォームの着工が待ち遠しい。春よ来い、はーやく来いの気分である。