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【トークセッション】ロボット開発部門のリーダーが語る、モノづくりへの想いとこれからの価値提供

New Innovationsの全社キックオフで行われた、プロダクト開発部メカグループ長の奥、プロジェクトグループ長の漆山、代表の中尾によるトークセッションの様子をレポートします。

お客さまに喜んでもらえることがロボット作りの原点

中尾:このセッションでは、プロダクト開発の中枢を担うお二人がこれまでどのようなことを経験して、どんなことを考えて日々の開発に向き合っているのかなどを深掘りしていきたいと思っています。まずは簡単に自己紹介をお願いできますか?

漆山:プロジェクトグループ グループ長の漆山です。これまではスマートロボット企業のCTO、メルカリの研究開発組織「mercariR4D」などに携わっていました。その他にもヒューマノイドロボットを作ったりといろいろなことをやってきています。

奥:メカグループのグループ長、奥と申します。元々は大手写真処理機器メーカーで現像機や光学系のプリンタなどの設計をしていて、製品の開発責任者も務めていました。その後は、行政機関で働いたり、ロボットメーカーで機械設計に携わったり。「こんなものがほしいなあ」という要望を形にする仕事をやってきています。

中尾:まず、色んな角度からお二人について聞いていこうと思います。前に漆山さんから「展示会でお客さまの反応が見られることがやりがいになっている」と聞きました。何か展示会での忘れられないエピソードはありますか?

漆山:2013年に「マスタースレーブ型のロボットアーム」のデモを国際ロボット展でやったんです。老若男女誰でも触って大丈夫だよというものにしたところ、結構な人だかりができて。みんなおっかなびっくりしつつも、「お〜」っていう反応をもらえたのがすごく嬉しかったです。それまでは大手自動車メーカーで設計をしていたのですが、企画を含め自分が製作したものに反応を得られたことが原体験となっていて、ロボットに携わり続けています。

中尾:その感覚、わかります。「root C」の初めての実証実験を大阪で行ったときのことです。営業初日、最初にふらっとやってきたのは大阪のおばちゃん風の方で、その方の表情とか背格好とか持っていたものとか、すべて覚えていますね。
300円のコーヒーを売る経験だったのですが、個人として仕事を請け負って稼いだ数百〜数千万円の経験とは全く異なる感覚でした。個人の開発能力を切り売りするのではなく、自分の思想が反映された製品が世の中に認められたことが嬉しかったんだと思います。

奥さんはいかがですか?

奥:最初にいた会社でラスベガスの展示会場に写真処理機器を設置したのですが、動作テストが不十分で動かなかったんですよね。今までで一番「やばい」と思いました。慌てて金鋸を探してきて問題になっていそうなところを切断してなんとか動かしたと。ドタバタに周りはかなりびっくりしてましたが、とにかく動いてよかったです。

中尾:実際ドタバタ力が必要なタイミングは本当にたくさんありますよね(笑)。とはいえ、それが常態化しないように開発以外の管理・購買フローを整え、それぞれがやるべき仕事に集中できるような体制づくりをこの一年くらいでやってきています。
モノを作るだけでは売れませんから、大きなバリューチェーンを会社全体で担っていく。一人ではできないことも、みんなでやればできる。それがあるからやめられないんですよね。

ところで、直近のNew Innovationsは「ロマン」と「ソロバン」だったら「ソロバン」を追求しましょうという方針です。利益を出せている状態でロマンを追求したほうが、最初から追求するよりも大きなロマンを追求できるんじゃないかと考えているからです。

なので「なぜそれをやるのか」という話をあんまりしてきていないので、お二人がなぜロボット開発に取り組むのか、そこに込める想いみたいなところを教えてほしいです。

漆山:やっぱり使ってくれるユーザーやお客さまのためです。設計ってなんですかといわれると、簡単にいえば、「根拠の見える化」でしかないと思っています。やりたいことができれば、技術にもそこまでこだわりはありません。ただ、譲れないものは安心・安全だったり、ちゃんと使えることですね。この機械があってよかった、本当に助かったと言ってほしいのは大きいです。なので、UX、つまりユーザー体験の向上が何よりも大事だと思っています。

中尾:そう考えるようになったのは、何かきっかけがあるんですか?

漆山:iPhoneの登場です。例えば、80・90年代ってビデオカメラはあったんですが、女性はなかなか使いこなせていませんでした。ボタンがいっぱいあるけど、使い方が全然わからない。そういった声があったと思います。でも今SNSなどを見てみると、女性のほうがうまくカメラを使いこなしていたりするんですよね。

iPhoneができて、物理ボタンではなくてタッチパネルになったからいいってわけじゃないんです。シンプルで使いやすいように設計しているから、誰もが使えるようになった。これに気がついてから個別の技術へのこだわりがなくなって、UXが一番だと考えるようになりました。

中尾:奥さんはいかがでしょう?

奥:写真処理機を作っていた頃の経験が大元になっていますね。会社のお客さまは機械を買ってくれる街の写真屋さんなんですけど、そこに持ち込んだフィルムが現像されたものを手にしたのが最終的なお客さまになります。子供が産まれたときの写真とか、旅行の写真とか、気持ちを込めて撮影したものが手元に届くことで喜んでもらえる。このエンドユーザーが喜びを得られているかということを大切にしています。

あと、写真は元のフィルムがあれば何とでもなりますが、一度フィルムをだめにしてしまうと、そこに込められた思い出や人の思いをだめにしてしまうんです。なので、そういう不具合があったときに、あるお客さまが非常に怒りをあらわにされました。足繁く通って心を尽くしたサポートの結果「機械ものなので時にはしょうがない」と言ってくださったのですが、モノづくりにおいて大切なことを目の当たりにした出来事でしたね。

中尾:「root C」に関しても、マシンだけではないのと一緒ですよね。バックオフィスも正しい状態で回っていて、正しい品質のコーヒーを正しく提供できる。きちんとしたバリューチェーンをお客さまに売っているのであって、壊れないものを売っているわけではないことに意義があるのだと思っています。

New Innovationsの製品開発と自身のこれから

中尾:では、これからについての話をしていきましょう。
私たちはまだ「これくらいのものだから、これくらいの値段である」という明確な指標がない領域で製品開発をしています。そういう環境の中で、何を重視してどういう価値を世の中に提供していくのでしょうか。

漆山:現在進行中のプロジェクトに関していうと、当然お客さまに価値を認めていただいて、そのお金で研究開発をしていきたいのですが、それは目的ではなく前提条件です。一番の目的は、世の中にハードウェアとソフトウェアを伴うサービスを、保守運用を伴って世の中に完成された製品として出していくことです。

中尾:作ったものが製品なのではなく、その会社が提供しているビジネスそのものを会社のプロダクトにしたいと言っていたものですね。

漆山:そうです。なので、仕事をするうえで一番やってはいけないと思っているのは、自社の都合やエンジニアのエゴをゴリ押しすることです。それを排除したうえで、会社のビジネスとして成立し、お客さまも利益を得ることができているのを世の中に見せていきたいです。
これが実現できるための判断力はかなり重要です。赤字にならないというのは部品代だけではなくて、保守運用も含めてのことになります。ですから、「この設計をやると保守は3人必要だけど、こうすれば1人で済む」といった設計ができること。施策の良し悪しや好き嫌いではなく、こういうことを判断できるように意識しています。

中尾:今の話は初めて聞きましたが、まさにそのとおりですね。私たちは他社が真似できないようなビジネスのやり方、他社の開発組織が無理だっていうような研究をするべきです。その品質を担保するには開発だけではなく、ビジネス側の力も必要です。
モノや情報が溢れている、粗悪品も高級品もいくらでもある環境のなかで、私たちはサービス・ソリューションを売っているということを改めて重視したいですね。

そろそろ終盤なので、最後に個人としてはこの会社でどうしていきたいのか、どうなるべきと思っているかを教えてください。

漆山:あんまり話したことはないのですが、個人的に私が生涯かけてやりたいことをビジョン・ミッションとしてまとめて、常にアップデートしています。私は世の中から理不尽なものをなくしたいです。そのために技術を使って障壁とか障害になるものを全部取り除いていきたいと思っています。
将来的にはそういったことに関わりたいので、3年くらいでマネタイズできるものというより、10年20年先ぐらいの技術の要素研究みたいなところをずっとやっていきたいです。先行研究ですね。でもそのためには先に稼ぐ必要があるので、まずは現在進行中のプロジェクトを頑張っていきたいです。

中尾:ゆくゆくは会社としても大手を振ってそれをできるようになりたいと私も思っています。R&Dがなければ長期的な会社の未来はつくれないと思いますね。

奥さんはいかがでしょうか?

奥:繰り返しになってしまうのですが、エンドユーザーやその周囲の人に喜んでもらえる製品を提供したいと常々思っています。それがどういう形になるかはわかりませんが、私の持っている知識や経験を活かしていきたいんです。New Innovationsを見つけたときも「あらゆる業界を無人化する」の目的がいろいろな人を幸せにすることにあったから、この船に乗ることを決めました。そのために設計がどれだけ苦しくても仕方がないです。それを乗り越えて喜んでもらえることが、私の喜びですから。

中尾:苦しみ以上の喜びがそこにはあるはずですし、そのために会社としてチームとしてやっていますからね。本日は本当にありがとうございました!

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