塾講師として成長したいあなたへ③
前回は「良い授業」とは生徒の成績が上がる授業、そのために、生徒が挑む入試や定期試験と、成績向上の阻害要因となっている生徒が抱える課題、という2つ「敵」について知るべき、という話をしました。今回はその2つ目の「敵」、生徒が抱える課題を知るためにどうすればよいかについてお話ししたいと思います。
生徒の抱える課題を自分の授業につなげるために
実際のところこの点については、私がわざわざここで話をしなくても、リアルの指導現場で活躍される塾講師の皆さんであれば、生徒のつまずきは毎日目にしているはずです。テストの答案もそうですし、宿題の実施状況や、授業中に生徒を指名して返ってくる答えなどもそうですね。生徒の誤答というのは塾講師にとって宝物と言ってもよいでしょう。どんな誤りをして、どこでつまずくのかということを理解すれば、生徒の成績向上につながることは間違いありません。
ところが、生徒の誤答を自分の授業に活かすところまでできている塾講師の方は正直言って多くないように思います。前職では他の先生の授業を評価をするような機会も多くあったので本当にいろいろな授業を見てきましたが、言うなれば、かゆいところに手が届いていない、ちょっとズレている授業というのが非常に多いのです。本来、毎日目にしているはずの生徒の誤答を、なぜ授業に活かせないのでしょうか。
1つの考えられる理由は、授業の組み立てを自分の頭で考えていない、ということです。特に大手塾の場合は、教材がきちんと整備されており、指導品質を均質化する必要性から先生自身のオリジナリティを発揮する機会が少ない(もしくは認められていない)傾向にあります。結果的に、教材が指定する筋道、考え方で指導するように誘導され、どう教えればよいのか講師自身が自分で考えないままになりがちです。これを読んでいる先生方で、単元別の指導よりも直前期などの演習型の指導の方が苦手だ、という方はこれが原因の1つである可能性があります。直前期の指導の方が自分で何をどのように教えるかの裁量が一般的には大きいですからね。
また、経験の浅い先生ほど、映像授業や有名な参考書などに書いてある情報に頼りがちで、そこに書いてある教え方をそのまま使ってしまっているということも自分の頭で考えずに授業をしてしまう要因の1つです。もちろん、先人の教え方を参考にすることは悪いことではなく、自分のスキルアップにもつながります。しかし、目の前の生徒のつまずくポイントと、参考書が想定する読者層がつまずくポイントには違いがあるのも事実です。
結局は、入試問題を解くときと同じように、授業の予習をするときも生徒目線ですることが大事なのです。入試問題で解答を見てはいけない、といいましたが、授業で使う教材についてもそうです。まずは自力で解答して、その際に生徒がどこで間違えるかを考えながら解いていますか?先生自身が、1つ1つの問題について「これはどうしてこうなるの?」と問いかけながら授業準備をしていますか?こういった考えを持ちながら教材研究を行っていれば、普段教えている生徒の誤答が授業の構成の中に自然と活かされてくるはずなのです。
生徒と向き合うことの大切さ
ただ残念なことに、目に前にあふれている生徒の誤答が授業の中に活かされないのは、実はちゃんと誤答を見ていないから、という可能性もあります。言い換えれば生徒と向き合っていないから、かもしれないのです。これは単に忙しいからということもあるでしょうが、他にも原因はありえます。例えば、ある誤答を目にしたときに、どうしてその答えをするに至ったのかきちんと検証はしていますか?よくある間違いで容易に想像できるものも多いでしょうが、中にはどうしてそんな間違いをしているのか理解できないものもあります。そしてその際には、生徒が理解できないときに先生に質問するべきなのと同じように、先生も生徒に質問して確認するべきなのです。
生徒と向き合って対話をすることはとても大切です。個別指導の場合にはそれが自然にできますが、集団指導をされている塾講師の方は意識的にそういう時間を作ることをお勧めします(経験の浅い方にとって個別指導の経験は非常に役立つと思います)。私はいまでもなるべく多くの生徒と1対1で話す時間をとれるようにしているつもりですが、集団の中での対話と1対1での対話はまるで違うもの。後者の方がより本音で話してくれる可能性が高いのです。教科や勉強のことに限らず、生徒がどんな生活をしていてどんな悩みを持っているのかを知ることは、講師に対する信頼感にもつながっていきます。そしてこの信頼感こそ、実は成績の上がる授業へつながるとても大事なファクターなのです。
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