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自宅受験の模試を活用するヒント

こんにちは。予備校講師・受験コンサルタントのシンノです。

COVID-19の影響で、中学入試・高校入試・大学入試を問わずどのカテゴリーの模擬試験も中止、もしくは自宅受験での実施を余儀なくされています。受験生にとって、模試は重要な役割を担っていますので、通常通り実施できないことで、受験勉強への影響は極めて大きいと言わざるを得ません。

しかし、この条件は全員同じ。つまり、模試が通常通り行われないから受験生の間で差がつくのではなく、そういう条件の中でもうまく乗り越えた受験生とそうでない受験生がいるから差がつくということなのです。本記事では、模試が自宅受験となった場合でも有効に活用できるようにするためのヒントを紹介したいと思います。

1.模試の役割とは?

受験勉強において、模試は以下のような役割を担っています。

① 自分の課題を発見する
② 自分の現在地を確認する
③ 志望校の合格可能性を判定する
④ 入試本番のシミュレーションをする
⑤ 受験生活の中での短期目標となる

学校の定期テストと異なり、模試は出題範囲が広く、本番と同じように、その問題が何の単元かわからない状態で受験しますので、本当に理解できているのか、問題を解けるのか、といった勉強面での課題発見に役立ちます(①)。また、幅広い受験者の中での自分の現在地が、偏差値という「ものさし」によって確認することができ(②)、模試の多くでは過去のデータと結び付けた合格可能性が判定されます(③)。同じ模試を継続的に受験することで自分の相対的な位置の変動も把握でき、定期的に受験することで長い受験生活の中で短期目標としても機能します(⑤)。そして、本番と同じように外部会場で受験することで、入試当日に起こりうる様々なトラブルのシミュレーションともなります(④)。

2.自宅受験になることで失われるもの

こういった模試の機能は自宅受験になることでどう変わるのでしょうか。

①の課題発見については、試験中に参考書で調べたり、辞書をひいたり、時間制限を超過したりといった「ズル」をしたら失われる機能ですが、あなたが外部会場で行われる場合と同じように受験すれば変わりません。⑤についてもそうで、あなた自身が模試を短期目標として勉強するという姿勢を続けていけばよいだけの問題で、自宅受験だろうと外部会場の受験だろうと変化はないでしょう。

しかし、④の入試本番のシミュレーションというのは、自宅受験ではどうしても劣ったものとなります。また、②と③については他の受験生との相対評価になるため、あなたがいつもの模試と変わらずに受験したとしても、他の受験生が「ズル」をしてしまったら、成績帳票で表示されたあなたの偏差値や合格可能性は例年に比べると正確なデータと言えなくなるでしょう。

私が以前、中学入試や高校入試を指導していたときの感覚で言うと、自宅受験で「ズル」をする受験生は、1割~2割くらいは出ると思います(模試を「ズル」しても意味がないというのは正論ですが、成績帳票を見たときの保護者の方の反応を考えると、途中経過をよく見せておきたいという受験生は、実際に「ズル」をするかは別としても、むしろ多数派です)。つまり、「ズル」をする受験生をゼロにすることは現実には難しいのです。

3.失われない機能を活かすために

模試が自宅受験になったことについて受験生の反応を見ると、否定的なものが多いようですが、これは受験生の多くが、模試の機能のうち③の合格可能性を最も重視しているからだと思います。上に述べたように、合格可能性ということに関して言えば、自宅受験になることでその信憑性は低下するでしょう。

しかし、合格可能性判定は模試の機能のひとつにすぎません。特に学校別模試のような各大学・学校の入試問題の特徴が活かされた模試とそうでない模試とでは正確さも大きく異なり、後者のような場合は合格可能性は模試の機能の中でも重要性は低いものだと思います。むしろ、自宅受験になっても変わらない機能をとことん活かせるように模試を利用すべきなのです。具体的には以下のような取り組みをしてみましょう。

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まず、受験前は模試を定期テストと同じように使うことを心がけてください。普通、定期テスト前には必死に勉強しますよね。各教科、何をどこまでやるのか明確にして受験している人が多いでしょう。模試もそういうふうに使うのです。特に浪人生や中学受験生は定期テストが無いので、模試を定期テストがわりに活用することが重要です。大学受験の共通テストでは、共通テストでしか受験しない教科というのもありますので、共通テスト模試を目安に少しずつ勉強を進めていくことが非常に大切です。

受験当日は、外部会場で受験する場合と同じように取り組みましょう。例えば、筆記用具などは受験前に用意しておいて、受験中に立ちあがったりしないようにする(トイレも試験が一度始まったら基本的には行かない。スマホも当然電源オフ!)。指定の時間内に、実力で解答するようにし、途中で中断したり、何かで調べたりはしないで行ってください。

そして受験後は徹底的に復習をしましょう。たまに、模試を受けている時間がもったいないと言う人が、特にマジメな受験生の中にいますが、模試の間は通常の何倍も集中して問題を解いているわけですから、問題演習の時間と考えれば非常に効果的な勉強時間なのです。その問題演習を活かせるかは受験後の復習次第。模試を解いているときにわからなかった単語や、気になった事柄をしっかり調べ、自分の覚えるべきことに加えていきましょう。解答を確認し、自分の解答とのズレをチェックして、そのズレがどうして生じるのか(知識不足か、問題の解き方がわからなかったのか、何かを見落としたのかなど)を確認してください。これはできれば試験当日、難しい場合は近日中に終わらせることです。次に、成績帳票が帰ってきたらもう一度自分の答案をチェックをしてみましょう。トータルの得点や偏差値ではなく、設問ごとの正答率などを見れば、自分の弱点がより明確になりますね。

自宅受験の模試の場合は、「ズル」をする受験生の存在のため、偏差値は通常よりも若干低めに、合格可能性は若干厳しめにつく可能性があります。ですから、大切なことは、トータルの偏差値・合格可能性を見ることではなく、きちんと復習して自分の課題を発見し、学力の向上につなげることです。模試で重要な情報は答案にこそあると考えて、自宅受験でも変わらず模試を有効に活用できるようにしていってください。

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