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日本酒古酒・熟成酒(鳥取県東伯郡 梅津酒造)と紹興酒(中国浙江省紹興市 古越龍山)の飲み比べ

日本酒古酒・熟成酒をいただいていると、「紹興酒みたい」と言う人がよくいます。
確かに色も香味も紹興酒に似ているものがある。
でも、紹興酒みたいなら、紹興酒をいただけば良い、ということになってしまわないか、と。
原料や作り方など、違うはず。
何が、どう違うんだろう?

紹興酒の企画展へ行ってみた

たまたま、古越龍山(紹興酒最大手)の企画展を見つけたので、行ってみました。

少し分かったことがあります。

紹興酒の主な原料は、餅米と麦麹。
餅米の精米歩合は90%くらいだそうです。
一方、日本酒の主な原料は、米と米麹です。
精米歩合は一桁台から玄米100%まで、いろいろあります。
なお、日本酒にはない紹興酒の主な原料に、カラメル色素があります。
色をつけるために使われている、とのことでした。

紹興酒は日本酒と同じ醸造酒(アルコール発酵によって造られるお酒)で、醸造工程も似ているそうです。

紹興酒も日本酒も並行複発酵。
アルコール発酵には、糖類が必要ですが、紹興酒も日本酒も原料の糖分が充分ではありません。
そこで、麹菌を使って糖分を作り、アルコール発酵させます。
この糖化とアルコール発酵の両方をひとつのタンクで同時に行うことが、並行複発酵です。

紹興酒は、熟成後、ブレンドして完成。
例えば、「8年もの」の場合、半分は8年ものを使い、残り半分は、平均熟成年数が8年になるようにブレンドされるということでした。

ここは違いますね、日本酒の多くは、ブレンドされていません。
ブレンドした場合は、特にその旨の表示はない、あるいは、酒造年度または醸造年度ではなく、熟成年数を表示します。
例えば、「10年」なら、10年以上熟成した日本酒をブレンドしている、ということです。

最後に、紹興酒のアルコール度数は、15度から16度くらいを中心に、その前後数度のものが主流のようで、これは日本酒と同じでした。

ところで、「清酒」のうち、原料に国内産米のみを使い、日本で造られたものが「日本酒」のように、「黄酒(ホワンチュウ)」のうち、紹興市で造られたなど一定の基準を満たしたものが「紹興酒」です。

今日は日本酒と本物の紹興酒の飲み比べなので、「紹興酒」を使います。

いただいた紹興酒と日本酒を飲み比べてみる

なかなか面白い企画展でしたが、アンケートに答えたら、紹興酒をくださいました!
尋ねてみたら、8年ものとのこと。
そういえば、紹興酒と日本酒古酒・熟成酒を飲み比べたことはないな。

そこで、いただいた紹興酒と、同じくらいの熟成年数で、精米歩合も同じ90%くらい、そして、アルコール度数も同じ17度程度の日本酒の、一騎打ちをやってみました。

左が、
紹興酒 古越龍山 8年もの
右が、
梅津の生酛(鳥取県東伯郡 梅津酒造有限会社)平成26年(2014年)です。

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この2つだけでは、とても全容はわかりませんが、「紹興酒みたいね!」となったとき、どこが似ていて、どこが違うのかを、すらっと説明できたら、ちょっとカッコいいかな、と。

紹興酒 古越龍山 8年もの

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色:
琥珀色、輝いている。
カラメル色素の効果からか、日本酒に比べて濃い色で、ずっと熟成しているように見える。

香り:
穀物の香りが迫ってきて、とても印象的。
昔、祖母や曽祖母に、お米を潰したら糊として使えるよ、と言われて、やってみたときの香りを思い出す。
あるいは、昔はよく見かけた半透明の糊の香りに似ている。 
お酢のようでも、レモンに少しオレンジの香りが加わったようでもある、キリッとした酸っぱい香り。
しょうゆのような香ばしさもある。 

味:
酸味がぱっときてずっと続きながら、旨味を感じて、苦味がくる。
一口いただくと、穀物の香りが鼻を抜けていき、口の中に広がる。

余韻:
少しまろやかになった酸味と苦味の余韻がしばらくつづく。

ペアリング:
やっぱり中華料理!

(紹興酒)
ラベル情報 
原料:もち米・麦麹・カラメル色素
原料米:➖➖
精米歩合:➖➖
アルコール度数:17度
日本酒度:➖➖
酸度:➖➖
アミノ酸度:➖➖
酵母:➖➖
価格:➖➖
上槽年度:➖➖
製造年月:➖➖

梅津の生酛 梅津酒造 平成26年(2014年)

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割水をしていない原酒なので、アルコール度数は高めです。
また、昔ながらの生酛造りなので、自然界に存在する乳酸菌を取り込む造り方をしており、コクがありつつキレもあるお酒になると言われています。

色:
深みあるイエローに少しみどりと茶色を加えた感じ。
こちらも輝いている。

香り:
まず、土っぽい香りがして、鼻がつんとする。
胡椒っぽさやみたらし団子のような香り、ヨーグルトの酸っぱさも感じる。
キャンディーのような甘い香りもある。

味:
少し甘味のある旨味と酸味がきて、最後は、酸味に包まれた苦味。
味に比較的はっきりとした苦味があるからか、香りから想像するより、味は、さっぱりしている。

余韻:
酸味に包まれたほどよい苦味の余韻がしばらく続く。

ペアリング:
豚の角煮、かぼちゃとかの煮物。
アーモンドもいい!

(梅津の生酛)
原料:米(鳥取県東伯郡北栄町産)・米麹(鳥取県東伯郡北栄町産米)
原料米:山田錦
精米歩合:92%
アルコール度数:17.8度
日本酒度:+6
酸度: 2.5
アミノ酸度:➖➖
酵母:➖➖
価格:2,300円(税別)720ml
上槽年度:平成26年(2014年)
製造年月:平成30年(2018年)1月

京都の鵜飼商店さんで購入しました。
お店のサイトは見つけられませんでしたが、日本酒古酒・熟成酒など品揃えが豊富で、とても素敵なお店です。

飲み比べのまとめ

両方を並べていただいてみると、違いが分かりやすかったです。

一番の違いは、酸味。
日本酒の酸味は、まろやかで、ヨーグルトのようです。
紹興酒の酸味は、キリッとしていて、お酢あるいは柑橘系のレモンとオレンジの間くらいで、強さを感じます。

もう一つの違いは、穀物の香りです。
紹興酒では、最初に強い香りがあり、余韻とともに、口から鼻に広がっていきますが、日本酒ではこんなにはっきりと感じられませんでした。 

ちなみに、料理酒として使っている5年ものの紹興酒が冷蔵庫にあったことを思い出し、いただいてみましたが、はやり酸味がキリッとして、穀物の香りが鼻から口に広がりました。

日本酒古酒・熟成酒と紹興酒、似ているところもあり、違うところもあり。
それぞれの良さを、楽しんでいけるといいですね。

そして、「紹興酒」と名乗るには、3年以上熟成が条件のひとつのようですが、「紹興酒の新酒」と日本酒の新酒もいつか比べてみたい! 



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