ハイブリッドER

ERはEmergency Roomの略で、救急外来と呼ばれる病院の一区域を表す。
専ら急病を扱うエリアであり、主に救急搬送された患者を診る場所を指す。


平成の時代は終盤に差し掛かり、ハイブリッドERという概念が確立した。
つまり、従来のERの機能(搬送された救急患者を初療する場所)に
別部署の他機能を加えた融合ユーティリティが生まれたのである。


具体的には、例えばCT室をERと融合させたケースがシンプルだ。
CT室は従来であれば、ERと離れた場所に設置されていることが多く、
(というより、元々CT室があった施設に後付けでERが設置されることが多い)
ER診療に必須といっても過言ではないCT撮像には
移動の労力と危険性とが伴うのが通常だった。


患者が安定しないままCT室に運び込むと、
行き来の途中や、あるいはCT撮像の最中に急変が起こってしまい
診療に関してはERほど環境が整っていないCT室で
対応を強いられるという悲惨な事態が生じることも稀ではなかったのだ。


■ -------- ●     [従来型はER(■)とCT室(●)が離れている]
■●                     [ハイブリッドERはER(■)とCT室(●)が隣接・直結している]


その一方で、ハイブリッド型ERでは、 ERとCT室が直結しているので
双方のデメリットを克服して、より救急診療に有利なデザインになる。
加えて、CT室併設だけではなく、血管内治療ができるような施設もある。
そこでは主に外傷初療で、動脈を損傷した患者に対しても、
止血目的での血管内治療が可能なために救命率も大幅な向上が期待される。


動線的にドアを2回も3回も開けて別の部屋にCTを取りに行くという構図は
重症患者にとっては障壁以外の何物でもない。
別部署を都合よく「くっつけてしまえ」というのが
ハイブリッドERの最大の工夫であり、救命に寄与するのであろう。


参考文献)
The Survival Benefit of a Novel Trauma Workflow that Includes Immediate Whole-body Computed Tomography, Surgery, and Interventional Radiology, All in One Trauma Resuscitation Room: A Retrospective Historical Control Study [Annals of Surgery: February 2019 - Volume 269 - Issue 2 - p 370–376] doi: 10.1097/SLA.0000000000002527
世界に先駆けてハイブリッドER(外傷初療室でIVRやCTも可能)を導入した大阪急性期・総合医療センターからその成果となる論文が発表された2019年の論文。
https://www.researchgate.net/publication/320073289_The_Survival_Benefit_of_a_Novel_Trauma_Workflow_that_Includes_Immediate_Whole-body_Computed_Tomography_Surgery_and_Interventional_Radiology_All_in_One_Trauma_Resuscitation_Room_A_Retrospective_Histori

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