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お城のおそうじやさん #6


フィンは、城の天辺に着くと

腰ににロープを回し、城の塔の先にある金具に

ロープをしっかりと固定しました。

いつもと違うのはもう一人、フィンの背中に人間がいることです。

「大人でもちぎれないロープだから大丈夫だと思うけど

暴れたりするなよ!」

「大丈夫よ、フィン。本当にありがとう。

それに私、すごくスリムだから!」

フィンはふてくされた表情でカラの腰にもロープを回します。

「アビーまでお願い!って、女は後先考えないんだから!」

フィンが独り言を呟きましたが、

興奮状態のカラの耳には聞こえていないようです。

「じゃあ、いくよ」

「お願いします」

と言うや否や、フィンは床面を強く蹴け、塔の外に体を投げ出しました。

「キャッ」

「静かに!」

「ごめんなさい」

わかっていたとはいえ、高い塔の上からロープ一本でぶら下がるのは

怖いものです。

カラが心臓を縮こませながら、なんとか我慢しているのもお構いなしに、

フィンはお手の物といった感じで、壁を蹴っては飛び上がるという動作を

繰り返し、徐々に下に下がっていきます。

バッタのようにピョンピョンと軽快に城の壁を蹴り出し、

あっという間に7階にまで降りてきました。

「あそこが7-13だ」

フィンはそう言うと、今度は7-13の部屋の窓まで、

壁を横へと器用に移動します。

「7-13」の部屋の窓をフィンとカラが覗き込みます。

フィンが言っていた通り、部屋の中から板が貼り付けられており、

何も見えませんでした。

獣のような唸り声は聞こえず、遠くで鳥が鳴いているのが聞こえてくる程

静まりかえっています。

「あと5分もすれば、修道院の鐘が鳴る。

そうしたら僕がこの金槌で窓を割り、さらに板も叩き壊すから、

カラは中に入るんだ。


鐘は1分間しか鳴り続けない。

もし1分の間に割れなかったらこの作戦は中止。いいね?」

「わかったわ」

カラとフィンは城の塔からロープで宙づりのまま、

5分が経過するのを待ちました。


ボーン、ボーン

修道院の鐘が町中に鳴り響きます。

「今よ!」

カラが合図を出すよりも前に、フィンは金槌を窓に向かって

振り下ろしていました。


ガシャーン!!

鈍い音が夜空に響きます。

「次は、板だ!」

そう言うとフィンは金槌をさらに強く振り上げ、板に振り下ろしました。

バキッ!

乾いた木の音がします。

まだ人が一人通れる穴ではありません。

二度三度と続けて金槌を振り下ろします。

「あと30秒」

カラが鐘が鳴り終わる残り秒数をカウントします。

「あと15秒、急いで!」

「わかってる!」

「あと5秒、4、3、2、」

「入れ!」

フィンが叫ぶと同時に、カラは人一人分空いた板の隙間の中に

体を入れ込みました。

「ロープを切って!」

カラに言われフィンがロープを切ります。

「気をつけて、ここでで待ってるから」

「ありがとう」

カラは、板を割ってもなお暗闇に包まれた部屋の中へと静かに入って

行きました。

つづく

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