お城のおそうじやさん #11
「でも、こんな広いお城の中から魔法の杖を探し出すなんてできるの?」
アビーの言うことはごもっともです。
「アビドラとヤヌーにとって命の次に大事な魔法の杖よ。
もし他人に見つかってしまったら、自分たちの立場が危うくなる。
だったら人の目につく場所や
みんなが出入りするような場所には絶対に隠さないわ」
カラの推理にアデルが加わります。
「そうね。私は国王の寝室をそうじする担当なのだけれど、
監視の人間もいないし、触ってはいけない場所も特に無いの。
国王が使う他の部屋も同じよ。
それにどの部屋にも世話係の人間がいつもいる。
国王が他の誰も信用していないのなら、
魔法の杖がある部屋には人を入れないと思うの」
「確かにそうね」
その場にいたみながアデルの推理に納得をしました。
「大臣。ヤヌーの部屋をそうじしたことがある子はいる?」
レジーナの問いかけにアビーが手を挙げました。
「私が担当だったから以前はそうじしてたわ」
「今は?」
「今はしてない。半年くらい前に大臣の部下から、今日から大臣の部屋はそうじしなくていいと言われたわ。すっかり忘れてたけど」
「大臣ね」
そう言うとレジーナは壁に掛けられた鍵の束の何個か手に取り
何かを調べはじめました。
「やっぱり無いわ。大臣の部屋の鍵だけ」
カラたちは、さっそく大臣の部屋へ侵入する作戦会議を始めました。
「部屋の鍵は閉まっている。
もちろん蹴破るなんてしたら衛兵に気づかれる。
やっぱり侵入するには…」
カラはフィンの方に目をやりました。
「わかったよ。でもいつやる?
7-13の部屋とは違って、夜は大臣が寝てるんだぜ。
窓を割るわけにはいかない」
「それもそうね。大臣が確実に部屋にいないタイミング…」
その時です。
アデルあることを思い出しました。
「明後日の昼間に勲章の授与式があるわ。
国王はもちろん、大臣も必ず出席する式典よ。
このタイミングなら大臣は絶対に部屋にいない」
「それだわ。勲章授与式はどれくらいかかるの」
「そうね、いつもは1時間くらいかしら」
「1時間あれば、十分よ!」
それからというものヤヌー大臣の部屋侵入作戦は、
あれよあれよとその計画が決まっていきました。
その作戦の概要はこうです。
まずフィンがいつもの窓拭きそうじの恰好で
8階にある大臣の部屋の窓までロープで降り、
ガラス切りナイフで窓ガラスに小さな穴を開け、窓の鍵を開ける。
そして、フィンは部屋の中に入り、部屋の鍵をあける。
部屋の外には、カラとアビーが廊下のそうじをしながら待ち構える。
衛兵の目を盗んでカラが部屋に入る。
アビーは誰か部屋に戻ってこないか、そうじをしながら廊下で監視する。
フィンは勲章授与式が行われている3階にまで降り
中の人たちに気づかれないよう窓の端から授与式の様子を観察。
大臣が部屋に戻ろうとしたらすぐに8階に知らせにいく。
アデルは、大臣が動き出した時のために
3階でそうじをしながら待機。
レジーナは7ー13の部屋の前で掃除をしながらカラが来るのを待つ。
言うまでもなく、この計画の肝は、
大臣の部屋から魔法の杖をすぐに見つけることができるかどうかでした。
「カラ、頼むわよ」
おそうじかかりの部屋は、これまでにない興奮と緊張と
そして熱気に溢れていました。
勲章授与式当日
ついに魔法の杖を取り返すための作戦がはじまりました。
つづく
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