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気になる本たち「感性に従え!」

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自分の書評、気になった書評をまとめています。
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2020年2月の記事一覧

(12/100)『捨てないパン屋』が捨てたもの

(12/100)『捨てないパン屋』が捨てたもの

内容紹介毎日12時間以上働き、食パンのみならず惣菜パンを何種類も作る。売れ残ったらそれは廃棄しちゃう。全国に10,000件あるパン屋さんのほとんどが、そんな毎日じゃないだろうか。広島のパン屋さんブーランジェリー・ドリアンも以前はそんな店舗の一つだった。

著者の田村さんは、ブーランジェリー・ドリアンの三代目。お店を継ぐまでに欧米のパン屋さん行脚をし、モンゴルでエコロジーツアーの企画もしていたことの

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(11/100)あなたは人間と結婚しましたか?『異類婚姻譚』(本屋有希子)

(11/100)あなたは人間と結婚しましたか?『異類婚姻譚』(本屋有希子)

異類婚姻譚(いるいこんいんたん)とは、人間と違った種類の存在と人間とが結婚する説話の総称。世界的に分布し、日本においても多く見られる説話類型である。(wikipedia)

あなたの結婚相手は人間でしたか?もしかして・・・

この一冊は、『異類婚姻譚』を含めた4つの短編からできています。どの小説も人間以外のものとの結婚や共同生活が描かれています。

表題作『異類婚姻譚』は、いつも目鼻の位置が微妙に

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(10/100)うまくいかない原因を他人にもとめた先にあるもの『世界の危険思想』

(10/100)うまくいかない原因を他人にもとめた先にあるもの『世界の危険思想』

人殺し、スラム、セックス、麻薬、非合法ビジネス。
作者の丸山ゴンザレスが直接危険地帯を訪れ、ルポルタージュ風にまとめている。

今年10冊目の本は物騒なタイトル。
でも内容は読みやすく、逆に「思想」と呼ばれるようなお硬い内容ではない。

警察や軍隊などの暴力装置が国家に集約されていない国は多い。
そんな国では、犯罪を犯したほうが効率的なことも多いのはたしかだ。

危険地帯に共通しているものは、他人

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(9/100)科学の力か?尊厳か?『欧米に寝たきり老人はいない』

(9/100)科学の力か?尊厳か?『欧米に寝たきり老人はいない』

今年9冊目は終末期医療の話。

終末期医療の違い老い、それも終末期のステージを迎えるということは、カラダのあらゆる機能が低下していくことであり、それはあがなえないもの。飲み込みも悪いし、食べること自体への意欲が落ちている。

日本の場合
そのステージで日本では、胃ろうを造設し、経管栄養や中心静脈栄養を行う。痰が詰まらないように器官が切開される。気管チューブからの痰の吸引は苦しい。点滴を拒否すると、

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(8/100)激動の幕末をどう生きたか?「悲劇の志士・赤松小三郎」

(8/100)激動の幕末をどう生きたか?「悲劇の志士・赤松小三郎」

著者の江宮隆之はこの本で、赤松小三郎という幕末の下級武士を、坂本龍馬と似た思想を龍馬より早く進言していたが評価されていない不遇の武士として描いている。

あとがきに

小三郎は、龍馬の「船中八策」に先駆けて、上下議員制度、議院内閣制などの「公議政体論」さらには海軍の充実や初等中等から大学までの教育環境の整備などを、越前春嶽に意見書として提出しているのである。

とあるほどだ。

しかし私の読後感は

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戦後の乗り鉄内田百閒『特別阿房列車』を朗読で聞いたら、ヒドイ話で爆笑した

戦後の乗り鉄内田百閒『特別阿房列車』を朗読で聞いたら、ヒドイ話で爆笑した

そろそろ暗くなってきたなぁ。

そんなこと思いながら、TYOMX「5時に夢中」を見ていた。

火曜日だった。コメンテーターは岩下尚史さん。はじめは「なんだこのおっちゃん」と思っていたけど、いろんなことに造詣が深く、最近気になっている人だ。

番組の中で、岩下さんは「わたしは夜寝ながらYouTubeで朗読を聞く。最近のお気に入りは内田百閒の特別阿房列車」とおっしゃっていた。

じつは私も最近、寝なが

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(7/100)台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡『この命、義に捧ぐ』

(7/100)台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡『この命、義に捧ぐ』

金門島という島をご存知だろうか? 厦門の東にある小さな島だ。大陸から2 kmと離れていないが、ここは中国領ではない。台湾領の島だ。今回は、この島をめぐる陸軍中将根本博の蒋介石への恩義の物語。

あらすじ1945年8月15日終戦。
満州国を統治していた関東軍は武装解除し、日本国民はソ連から虐殺や強奪を受け家族が離散するなど、ひどい目にあった。玉音放送を聞いた関東軍は、市民を置いて逃げ帰ったとも伝えら

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