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第20回公演は『ハムレット』!!|明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)密着取材

ネビュラエンタープライズ・おちらしさんスタッフの福永です。
U25世代に向けて、舞台芸術に関する情報を発信するユニコ・プロジェクト(通称:ユニコ)

ユニコでは、昨年、数か月に渡って追いかけさせていただいた「明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)」に、今年も取材をさせていただくことになりました!

▼昨年のMSP稽古取材日誌・全8回はこちら▼

11月に本番がある今年のMSPは、なんと記念すべき第20回目の公演を迎えます!
そして演目は、シェイクスピア作品の中でも有名中の有名である『ハムレット』
これまで何度となく、大小様々な劇団で上演され、熱烈なファンも多いこの作品を、今年のMSPメンバーがどのように料理していくのか、とても楽しみです。

出演者はもちろん、演出、照明、音響、制作、舞台美術などなど、全セクションを明治大学の学生によって行われる、日本最大の学生演劇、それが明治大学シェイクスピアプロジェクトです。

毎年、新入生を含むメンバーで新体制が組まれ、チーム作りから演劇の本番までを経験できるこのビッグプロジェクト。その中心になるのが、プロデューサーと演出家です。

今回は第20回のプロデューサーに就任したばかりの、文学部2年の宮嵜明理さんと、演出に抜擢された文学部3年の高橋奏さん、そして、このプロジェクトを支えていらっしゃる担当教授の井上優先生のお三方にお話を伺ってきました。

まずは、今年のMSPの“顔”となる、プロデューサーの宮嵜さんにお話を伺います。

プロデューサー・宮嵜明理さん

――今年2年生の宮嵜さん、ちなみに去年のMSPにも参加されていましたか?

宮嵜さん:去年は制作部で、主に予約関連の仕事をしていました。お客様とメールのやり取りをしたり、父母会の対応も。本番当日は受付回りで働いてました。

――そのときから来年もやりたいと思っていた?

宮嵜さん:思ってました。また制作部がいいなと。中学時代からずっと演劇部で、最初だけちょっと役者にも興味ありましたが、やはり運営面の方にやりがいを感じてたので、今年も参加しようと思っていました。

――プロデューサーの指名を受けたときはどう思いましたか?

宮嵜さん:正直に言うと……プロデューサーか、制作チーフの話はあるかなーと思ってました(笑)。

――そうなんですね!

宮嵜さん:去年、1年生の中でもたくさん参加してた方でしたし、先輩にもちょっと言われてたりして……。プロデューサーは毎年2年生の中から選ばれるので、1年生の間では、来年は誰がなるのかなーと、話題には出ていたんです。去年の制作部の最後の集まりのときに、前任の金子プロデューサーから、「この後残れる?」って聞かれて、「あ、これは来たな」って思いました(笑)。

――それでも去年の仕事とは大分違うのでは?

宮嵜さん:今は、こんなにたくさんの仕事があるのか! と驚いてます。できるのかなー? という気持ちも……。

――そうは言っても、落ち着いた語り口には既に貫禄を感じます。
さて、MSPは4月の新入生に対して勧誘活動もしています。そちらの様子はどうでしたか?

宮嵜さん:手応えはかなり。1年生だけじゃなく、去年は参加していなかった2年生も来てくれてました。かなりつっこんだ質問も多かったので、興味を持ってもらえているのを感じました。
和泉キャンパスで開催していたんですが、全部で200人くらいの人が来てくれました。初日の段階で75人も来ていて、これはかなりの人数なんです。

――また、大人数のカンパニーになりそうですね。

宮嵜さん:去年が223人。部署によっては人が多すぎて、持て余していたところもありましたが、今年はみんなで気持ちを一つに、最後まで、各々が自分の仕事をやり遂げられるような座組にしたいと思っています。

――とても頼もしいお言葉です。そして最後には、

宮嵜さん:今年は第20回ということで、本番以外にもたくさんイベントがあります! とにかく、いろんな部署の人と関わりたいです!
去年までは、コロナの影響で、他部署との交流は制限されていました。今年はその制限がなくなるので、もっと稽古場ともつながって、キャストとスタッフの分断をなくし、一つのカンパニーとして、お互いの顔が見える環境を作るのが、プロデューサーの仕事だと思ってます。

と、もう既に、プロデューサーとしての自覚がしっかりと身に付いているような熱いメッセージを頂きました。

続いて、演出の高橋さん。

演出・高橋奏さん

個人的には、去年拝見していたMSPの『夏の夜の夢』で、頭がロバになってしまう、とぼけた職人・ボトム役を演じていた女優さんだったのでとてもよく覚えている方でした。

――まず始めに、ご自身の芝居歴を教えてください。

高橋さん:芝居は大学に入ってから始めました。実は明大に入る前に、2年間、別の大学に行っていて、そっちがスタートです。現在は、自分でも劇団を主宰しています。主に役者をやっています。

――演出のご経験はあるのでしょうか?

高橋さん:前の大学のときに2度。それと、一昨年の、明大140周年記念の際に博物館で行われた、制作部主導のリーディング公演があったんですが、その演出もしました。

――では、もう、覚悟は決まっている感じですね?

高橋さん:自信があるわけではないですが、普段役者をやっているときも、妄想で、もっとこうなったらいいのになーと思っていることが多いので、それを表立って、仕事としてできることへの楽しみはあります。

――かなり大規模な舞台になりますが、不安はないですか?

高橋さん:不安なのは規模の事ではなく、カンパニーと仲良くできるか? です。
座組の誰にも、嫌な思いをさせたくないので、人間関係を円滑にするのが最大の課題だと思っています。経験上、どうしても演出って“絶対”になりがちなので、そこでの言い方や態度には本当に気を付けようと思ってます。

――『ハムレット』という有名すぎる題材について、どう取り組もうと考えていますか?

高橋さん:有名な作品だと、何か変わった演出を求められがちだと思いますけど、MSPは学生が作っている、ということが大切なので、作品に真摯に向き合う、まっすぐに向き合うことが大事だと思っています。

――『ハムレット』はシェイクスピアの「四大悲劇」に数えられる「悲劇」です。「悲劇」を描くことについてはどう感じていますか?

高橋さん:ハムレットの悲劇的な部分は、「生きる」か「生きるのをやめる」かで揺らいでいるところだと思いますが、これって実は、人間なら誰しもが向き合っている問題だと思うんです。結果的に「生きる」を選択しているだけで、すぐ傍に「生きるのをやめる」という選択肢もある。『ハムレット』は、それをどうどうと描いている作品だと思っていて、この「悲劇」の部分を、メンバーそれぞれの日常に落とし込むことで、今作の「悲劇性」を全体に浸透させていけたらと思っています。

――ハムレットを等身大の人間として描くということですね。意外と新しいアプローチのように感じます。
これからオーディションで集まるキャストさんたちとはどう向き合いたいですか?

高橋さん:実は私、1年目に、MSPのオーディションに落ちているんです。今は、その結果、いろいろな経験が出来たし、よかったと思えているんですけど、そのときは本当につらかった。
だから、オーディションを受けるみんなの不安な気持ちもよくわかります。受かっても役の大小で、セリフの量も違い、そこに不満を持つ子もいます。その気持ちもわかる。わかるからこそ、しっかりと、各役の大切さをしっかりと伝えられるようになりたいです。

既に何年も芝居を続けていて、その経験がしっかりと自信になっているように見受けられる、含蓄のある回答ばかりでした。どんな作品になるのかさっそく楽しみです。

最後に、このカンパニーを長年にわたって支え続けてきた、文学部教授の井上先生にもお話を伺いました。

MSPの責任者 文学部教授・井上優先生

――記念すべき20回です。どんなお気持ちですか?

井上先生:20回は、節目には違いないけど、ここをピークにはしたくない。だから、特別視は……半分するけど、半分しないです(笑)。

――『ハムレット』という題材についてはどのようにお考えですか?

井上先生:演劇史の中でベスト5に入る名作だと思っています。個人的にも“四大悲劇“の中では一番好きだし、学者として研究してたことも。だから思い入れはあります。
MSPを自分が担当するようになってからはやったことがなかったので、どこかのタイミングではやるべきだと思っていて、それがどのタイミングなのかが難しかった。そういう点では第20回の節目というのはとてもいいタイミングだと思っています。

――先生はシェイクスピアの専門家でいらっしゃるので、当然、これまでたくさんの『ハムレット』をご覧になってきたと思います。そうした知識や経験を今回の作品に反映させたくなりませんか?

井上先生:もちろん、これまでにたくさんの『ハムレット』を見ていますし、知識はあります。しかし、自分の思い入れとは完全に切り離して、学生の作品を純粋に楽しんでいます。

――そう思えるようになったきっけかはあるのでしょうか?

井上先生:初めてMSPに携わったときが『夏の夜の夢』で、学生たちと一緒にあの脚本の面白さを発見した経験があります。実はそれまで『夏の夜の夢』ってそんなに好きじゃなかったんです(笑)。つまり、私にとっても、MSPはとても学びのある時間なんです。「この劇はこうだったんだ」という気づきもあって。

――学生たちから出てくるものの面白さがあるということでしょうか?

井上先生:名作と呼ばれる上演はあるし、私もたくさん見ていますが、結局、演劇は消えていくもの。今の学生たちと作り上げるものの方が、確実に面白いと思ってます。

――学生が作る演劇という意味では、他大学にもたくさん学生演劇があります。MSPの特色をどうとらえていらっしゃいますか?

井上先生:プロスタッフが公演全体をサポートしている点は他と違うところです。ただし、学生の自主を重んじているので、周囲の大人があまり口を出さないようにもしています。この関係性こそがMSPの特徴になっていると感じていますし、他の学生演劇とは違う部分だと自信を持っています。

先生はもちろん、たくさんのプロスタッフが支えている中で、学生たちが思う存分クリエイティブを発揮できる、確かにこんな恵まれた環境はそうそうありません。

――今回のメンバーに望むことは?

井上先生:毎年望むことですけど、プロデューサーには、しっかりとこの座組の顔になってもらう。演出にはその座組を自分のセンスでしっかりとまとめてほしい。
イベントも増えるし、今年は仕事がかなり増える、その上で大事なのはちゃんと「ヘルプ!」を出せること。宮嵜さんはそれができる子だと思っている。

MSPの次のイベントとしては、5月にガイダンスがあります。MSPがどんな団体なのか、改めて新入生を始め、多くの明大生にアピールする機会です。そこからオーディションを経て、夏には稽古がスタートします。11月の本場に向けて、ここからはもうノンストップです。また進捗を取材していきたいと思います。

第20回明治大学シェイクスピアプロジェクト
『ハムレット』

公演日程:2023年11月上旬(予定)
公演場所:明治大学駿河台キャンパスアカデミーコモン
3階アカデミーホール
全公演無料

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