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おまえは『HiGH & LOW THE WORST X』でテッペンの景色を見る

よくきたな。おれはNeverAwakeManだ。おれは毎日すごい時間ゲームをしたり映画を観たりしているが、特に自慢にはならない。月初にブレット・トレインを観てガタガタ震えたことで、9月が油断ならないメキシコであることをおれは完全に理解した。

バンデラスがブチョの不意打ちを二度食らわないように、真の男は同じ失敗を犯さない。ワークアウトし、栄養の多いごはんを食べ、ぐっすり寝てから、おれは映画館に赴いた。真の男のための究極のアクション映画である、『HiGH & LOW THE WORST X』を観るために。

・・・・・・鑑賞後、おれはまたもガタガタ震えていた。今度は不意打ちではなかった。ハイローXの予告を見た時点でこの映画はきっととてつもなく面白いだろうと分かっていたので、おれは注意深くガードを下げなかったのだ。だが、ハイローXは本物だった。それは力強い廻し蹴りでガードをつらぬき、おれのアゴを打ち抜いてきた。すさまじいエンタメ力がおれの脳を揺らし、ガタガタ震わせた。この衝撃と感動をいつまでも体内にとどめていると共振で肉体が爆発四散してしまうので、おれは急いでこの記事を書き始めたとゆう寸法だ。

先に言っておくが、おれはネタバレを一切躊躇しない。おまえがこれを読むのは完全に自己責任だ。もしおまえがハイローXのネタバレを少しでも恐れるなら今すぐ映画館へ向かえ。そして頂点テッペンからの景色を見て、おれと同じように震え上がるがいい。わかったか。

ハイローがXになった

まずおまえが心得ておくべきなのは、HiGH & LOWは真の男たちが己の意地とプライドをかけて拳で語り合う総合エンターテインメントプロジェクトだということだ。『HiGH & LOW THE WORST X』は本編のスピンオフ映画である『HiGH & LOW THE WORST』の続編にあたる。それ以上知る必要はないし、それ以上知りたいなら映画館へ行け。

ヤンキーやアウトローが殴り合う映画と聞いたおまえはナメてかかっているかもしれない。「ケンカしてるだけでメッセージ性がなく浅い」とか「エグザイルがケンカするアレね」とか「どうせ肝心なところはダサいCGなんでしょう」とか勝手に決めつけて、ハイローから逃げ出そうとする・・・・・・こうゆうやつは完全に腰抜けであり、それは統計的にも証明されている。おまえはいつからそんなしょうもなくなってしまった?なんか小洒落た映画の半券とかシアター前の写真をS・N・Sに上げて悦に浸っているだけのシネフィル気取りか?・・・・・・だとしても、おまえは変わる。予告を見たおまえは口ではコケにしていても、心にはもう火が着いているからだ。ハイローXに宿った、燃え盛るエンタメの力によって。

HiGH & LOW・・・・・・それは、頭のネジを全部外して出来た穴にガソリンを注いで着火したようなイカれたアクションをいつもやっているヤバいシリーズだ。そして今回、そのタイトルに"X"がついた。これはどうゆうことか?・・・思い出せ。スーパーストリートファイター2X、ギルティギアXX、そしてトリプルXを。どれもこれも最高のゲーム、最高の映画だ。つまり、Xがつくコンテンツは最高であり、またそうあらねばならない。では、ハイローXはどうか?言うまでもない。これは、Xを背負うにふさわしい最高テッペンの映画だ。

花岡楓士雄

前作『HiGH & LOW THE WORST』で最凶不良校である鬼邪高校をシメた番長にして主人公、花岡楓士雄。腕っぷしが強く、天衣無縫な快男児だ。楓士雄は強いやつを見たらケンカせずにはいられないあぶなっかしいやつで、そのあぶなっかしさがまた不思議な魅力となって皆を惹きつける。先代番長の村山のように獣じみた強さこそないものの、楓士雄はその器のデカさと愛嬌で誰でも友達ダチにしていく。世が世ならきっと海賊王になっていたような、とにかく気っ風のいい男だ。

しかし、楓士雄はまだ未熟でもある。もとよりこいつは「男と生まれたからには頂点テッペンを取る」というバキマインドで動いている単純明快な男・・・・・・組織の結束とか満足度向上とかPDCAとかにはぜんぜん興味がないのだ。楓士雄は常に挑戦者なのでアタマを張るというのがどういうことかまだよくわかっておらず、なんかニコニコしながら番長をやっている。脇を固める高城司やジャム男はそんなふわっとした楓士雄のことをほっとけない。

楓士雄を始めとした新世代が輝く鬼邪高校に迫る、闇の三校連合の包囲網。卑劣な不意討ちと数的不利を前に、楓士雄はアタマとしての覚悟と成長を試されることとなる。

天下井公平と須嵜亮

三校連合を束ねる瀬ノ門工業高校、その番長を張るのが天下井公平だ。こいつはボンボンで、カネで味方を買い、それを駒と呼んではばからない腰抜けだ。強さを誇示するためだけに、既に戦意喪失した相手の腕をわざわざ折ったりする。明らかに頂点を取る器ではない。楓士雄と同じく男の野心をピュアに追い求めているのに、有り余るカネで歪んでしまった哀しい男。それが天下井という人間だ。

そんな天下井の右腕としていつも付き従っている須嵜亮。別の高校ですでに番長だった須嵜は、幼少の契りと家族の恩義のため、天下井を支えるナンバー2として瀬ノ門に転校してきた。すなわち、忠義に生きる真の男だ。須嵜は一騎当千の忠臣であり、主である天下井の命令を寡黙に遂行する。イカれた廻し蹴りを無言でかまし、なにも文句を言わない。手段を選ばず覇道を征く天下井の姿を目の当たりにしても押し黙り、ただテッペンをじっと見つめる須嵜。中世騎士めいたその愚直な在り方に、言葉は不要だ。

イカれた廻し蹴り

一切ブレずシンプルで最強

前作の『HiGH & LOW THE WORST』はシリーズの中でも複雑な映画だった。新世代である楓士雄の来し方行く末、コラボ相手である鳳仙学園の強者たち、そして旧主人公の村山の卒業。これらすべてを一気に描かなくてはならなかったからだ。人間離れした作劇テクによってそれらはしっかりまとめられていたものの、前提知識がないとどこに集中したらいいかわかりにくいのもまた事実だった。

だが、ハイローXは違う。前作を経てややこしいしがらみから解放されているので、初っ端からエンジン全開だ。無数の手勢を連れて他校を無慈悲に制圧する天下井と、真の男と名高いラオウとケンカするためだけにたった一人で鈴蘭高校にカチコミする楓士雄。オープニングでこの対照を見せられた時点で、ハイローXは最強テッペンを目指す二人の男のスタイルウォーズであることが完全に理解できる。そして、この映画はそこから全くブレない。変な薬物とかヤクザのカジノとか謎のUSBも出てこない。シンプルだ。

テッペンを取る・・・・・・このシンプルなストーリーが太く強く全編をつらぬいているおかげで、ハイローXでは背景の説明ではなくキャラ描写により多くのボリュームを割けるようになった。前作ではキャラの濃さの割に尺の都合で見せ場の少なかった連中が、今作ではこれでもかと映りまくって魅せまくる。日常会話、戦闘スタイル、戦いで交わす短い言葉。そのすべてに各キャラのスタンスと関係性が詰まっており、誰がどうして戦っているのかが余すことなく示される。「こいつらなんでケンカしてんスか?」とかほざくうらなり野郎に容赦なく廻し蹴りを浴びせ、黙らせているとゆうわけだ。

仲間を増やして人望で殴る

三校連合の奇襲により大きく頭数を減らした鬼邪高校。さらにナンバー2である司をさらわれて絶体絶命となり、リベンジは絶望的。楓士雄たちはこれまでになく圧倒的な不利に追い込まれる。それでも、否、だからこそ、真の男は楓士雄のもとに集まってくる。鳳仙学園四天王に、鈴蘭高校の実力者たち。さらには、あのラオウまで。

あのラオウ

・・・・・・楓士雄はこれまで、どんなやつとも屈託なく言葉と拳を交わしてきた。そうしてお互いを理解し、仲間になってきた。上も下もない、仲間で友達。皆、そんな楓士雄のことが好きで仕方ない。だから本気で手を貸し、力になる。一方の天下井はどこまでいっても味方を駒扱いし、須嵜が自分のそばでずっと忠を尽くしてきた理由すら顧みようとしなかった。だから楓士雄は勝つ。たとえ戦う理由は同じでも、これまで積み重ねてきた男としての格が違いすぎるからだ。

ハイローXは、ある意味で予定調和な映画だ。誰がどう見たって、ゲスで腰抜けの天下井が勝つ道理がない。楓士雄は圧倒的なまでの主人公パワーを持った真の男であり、あふれんばかりの人望で殴り飛ばしてくる。そして実際、楓士雄との死闘の果てに須嵜は破れ、天下井は野望の終わりを悟った。すべてをなげうってでもテッペンを目指した二人は、しかし、それを見ることがかなわなかったのだ。

夢に見合う器を持ち合わせなかった天下井と、そんな男にそれでも忠義を誓い続ける須嵜。人間的で、生々しく、狂おしい悲哀に満ちたこのコンビの凄絶な生き様を、ハイローXはたっぷりと時間をかけて見事に描ききってみせた。

さっさと観ろ

ここまで読んだおまえならわかるだろうが、ハイローXを観に行かない理由を考えるようなやつは完全に腰抜けだ。おまえはとっとと劇場に駆け込み、中央前寄りの席を確保し、この映画を観てこい。観るなら文句を言ってもいい。小田島と轟のタッグマッチをもっと見たかったとか、ラオウの怪力無双っぷりをもっと映せとか、佐智雄の出てくる尺を長くしろとか・・・・・・とにかく、ハイローXのすべては観てから始まる。

おれが言いたいことは以上だ。

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