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この記事を読んでいただいている方の中に歯磨きをしないで寝て、翌日起きたときに口の中がネバネバしたり、喉にイガイガと痛みがあったり、なんとなく全身がだるいという経験はないでしょうか?これらは口腔内の菌が増殖して悪影響を及ぼしているからかもしれません。増殖した菌は歯周病などの原因となって様々な病気につながると言われています。

この記事では歯周病による全身への影響について解説していきます。


口内フローラについて

口腔内には、口内フローラと呼ばれる約700種の常在細が、デンタルプラーク(歯垢)をつくり住み着いています。常在細菌は強い毒性の物はなく、普段は口の中の健康を保つ役割を担っています。しかし、口腔ケアを怠ったり、免疫力が低下していたり、基礎疾患を持っていると常在細菌のバランスが乱れ、病原菌が多くなります。これらの病原菌は炎症を引き起こし、細胞の破壊を進めることで歯周病や虫歯だけでなく全身へ広がり、全身疾患の原因となります。
冒頭でふれた喉の痛みや全身のだるさは、これらの病原菌が就寝中に増えて症状が出ている可能性があり、口腔ケアは口内フローラのバランスを整えたり病原菌増やさないために非常に重要となります。


歯周病とは?

歯周病は、虫歯や酸蝕歯と並ぶ口腔内の疾患の一つです。口腔は、唾液や歯周ポケット(歯と歯茎の間)から抗菌物質や免疫物質が分泌されることで感染や炎症から身を守っています。しかし、加齢、ライフバランスの乱れ、栄養不足、基礎疾患などによって、免疫力が落ちた状態だと、唾液などの防御機能が低下して、歯周ポケットで炎症を起こします(歯肉炎)。進行すると歯肉が破壊されて、歯周ポケットがより深くなり”歯周病”となります。歯周病は歯を支える骨を溶かして歯が抜け落ちる原因となります。


歯周病が原因となる病気

歯周病は炎症が慢性化することで、血液から全身へ炎症性物質を巡らせます。また炎症の際には活性酸素も産生されるため、これも同様に全身をめぐることで様々な病気の引き起こす原因となります。※¹※²


糖尿病

歯周病と糖尿病は相互に深い関係があります。歯周病によって全身をめぐる炎症性物質などがインスリンの働きを阻害するためと考えられていたり、歯周病を予防することで血糖値の指標となるHbA1cの値が低下することが報告されるなど、どちらにとっても重要な原因となっています。また、柔らかいものばかり食べる人、早食いする人、甘いものを好んで食べる人は、唾液の分泌量が少なく、必要以上に食べ過ぎて、口腔内の病原菌が増えやすい環境となります。これらはすべて血糖値を上げる原因でもあり糖尿病にもつながるため注意が必要です。


早期低体重児

妊娠初期はエストロゲンとプロゲステロンを口腔内の病原菌が栄養源として増殖することに加えて、つわりや間食が増えることも口腔内の環境が悪化するため歯周病が発生しやすい。さらに炎症性物質や歯周病菌が血流にのって胎盤や子宮に感染することで早産の可能性があると言われています。


心血管系疾患

歯周病の方は通常の約2~3倍心血管系疾患や、動脈硬化を発症しやすいことが報告されています。歯周病部位で発生した炎症性物質などが心臓や血管に移動してそこで炎症や梗塞が起きるためと考えられています。


誤嚥性肺炎

高齢者に多く発生し、日本人の死因第5位に入るほど高齢者医療において重要な疾患の一つです。睡眠時や、咳がうまくできないことで誤嚥が起きます。この誤嚥により歯周病菌が肺炎の原因となります。誤嚥性肺炎の発症率は十分な口腔ケアを行う事で大きく低下させることができると言われています。


アルツハイマー型認知症

歯周病菌感染がアルツハイマー型認知症に関与しているとの論文が発表されました。※³その他にも、歯周病は歯を失う原因となり、歯の喪失が認知症のリスクを高めるという報告もあるため認知症予防のためには口腔ケアも必要であることが分かります。※⁴


歯周病を予防するには

1.基本的な予防

歯周病を予防には、毎食後丁寧に歯や舌のブラッシングを行うことが基本となります。ただ、完璧には磨ききれず、ザラザラとした歯石が出来てしまいます。歯石はブラッシングでは取り除くことが出来ないので、定期的に歯科医院で歯石の除去をする必要があります。※⁵

2.食事で気を付けること

食事にも気を付ける必要があります。糖尿病のところで説明したように、柔らかいもの・甘いもの・早食いは、歯周病と糖尿病のリスクを高めるので注意する必要があります。

3.喫煙をやめる

喫煙は口腔内を乾燥させて唾液の分泌を低下させたり、タバコの有害物質が血管を収縮し、歯茎の血液量を減少させます。歯周病菌は酸素を嫌う菌(嫌気菌)なので、血液循環が悪化して歯茎に十分な酸素がいきわたらないと、より繁殖しやすい状況になり歯周病を悪化させます。禁煙を行う事は、全身の免疫力や細胞の働きを高め、歯周病のリスクが低下させ治療効果が上がることが明らかになっています。※⁶

4.その他にできること

口が乾燥したり、免疫力が低下することで歯周病のリスクが高まるので、寝るときに口呼吸をしたり、歯ぎしりがひどい場合には一度専門医へ受診することをお勧めします。その他、生活習慣の乱れやストレスも免疫力低下の原因となりますので注意が必要です。
私が実施していることですが、歯周病菌は就寝時に増えると言われています。そのため起床していきなり飲み物は飲まないで、初めにうがいをしてから飲むようにしています。また、水素水が歯周病予防に効果的との報告もあり、水素による抗酸化療法が歯周病予防に注目されています。※⁷ 当院では水素吸入・水素水の提供を行っておりますのでぜひ一度お試しください。


まとめ

歯や口の中の事は全身の病気とは関係ないように見られがちですが、歯周病による酸化ストレスや炎症は、全身の酸化ストレスや炎症に関わっています。その逆も然りで、実は相互に深く関係しています。さらに、酸化ストレスは全身的に診ると細胞を損傷させて老化の原因にも関わります。毎食後の歯磨きがまわりまわって全身のエイジングケアにもなりますので、少しめんどくさいときでも数分の歯磨きを頑張って、健康に繋げましょう!
当院では治療は行っておりませんが、口腔に関するご相談も承っておりますので、ぜひ一度ご相談ください。


参考文献

※¹口腔と全身との関係-Jstage(外部サイト)

※²口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連-e-ヘルスネット(外部サイト)

※³Receptor for advanced glycation end products up‐regulation in cerebral endothelial cells mediates cerebrovascular‐related amyloid β accumulation after Porphyromonas gingivalis infection(外部サイト)

※⁴Tooth Loss and Risk of Dementia in the Community: the Hisayama Study(外部サイト)

※⁵歯周病の予防と治療-e-ヘルスネット(外部サイト)

※⁶喫煙と歯周病の関係-e-ヘルスネット(外部サイト)

※⁷水素水の摂取で歯周病予防-岡山大学(外部サイト)

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