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チャリチャリにかけるおもい Vol.2

こんにちは、チャリチャリを運営しているneuet代表の家本です。前回に続き、チャリチャリにかけるおもい、まちの移動にかけるおもいを綴っていきます。今日も最後までお付き合いください。

(チャリチャリにかけるおもい Vol.1はこちらです。ぜひVol.1からお読みいただければ嬉しいです。)

車椅子生活から、また歩けるように

さて前回の最後では、大学時代にバス会社を立ち上げようとした話から続けると書きました。ところがこれでは話の展開が早すぎたことに気づき、飛ばしそうになった話に慌てて戻ることにします。歩けるようになった、という話です。

私は中学2年の冬に車椅子生活になりました。その後、再度歩けるようになります。そして20歳になる前に、身体障害者手帳を返納しました。歩いていた人生、車椅子だった人生を経て、今は3つめの人生です。

歩けるようになりだしてから歩けるようになるまでの間、リハビリに通いました。装具というものをご存じでしょうか。身体の機能を補ってくれるものですが、リハビリをして筋力がついてくるまでは、膝や足首などを固定するために両足につけていた時期がありました。あれから20年以上経っても未だに装具の金具の感触を覚えています。

100センチの高さから見る世界

もともと歩いていたときには、少し背の高いほうでした。小学校のときには背の順番で並ぶと後ろから数人ぐらいの位置だったはずです。ところが車椅子になると視点の高さは100センチちょっとぐらいになります。車椅子は、歩ける人にとっては何のこともない段差でもほとんど乗り越えることはできません。必然的に、目の向く先は、地面の段差や形状(舗装されていない場所は特に走りにくいのです)、そして傾斜になります。今でも地面の段差は自然と目に入ります。

もし私があの若い時期に車椅子の経験をすることがなければ、まちの中にある段差が気になることは未だ無かったとおもいます。段差に限らず、ある人にとってはまちの一つ一つの様子は気にならないが、ある人にとってはそれが不便なことである、との違いに気づかずに生きていたでしょう。気づかないことは何も悪いことではありませんが、むしろ私は「歩けていて、車椅子になって、また歩けるようになった」ことで、どちらの視点も手に入れることができました。ハッピーです。

車椅子で経験した段差の話

ところで、車椅子になってしばらくしてから覚えた「忍法」があります。ウィリーです。自転車やオートバイの前輪を上げる走り方ですが、5~10センチぐらいまでの段差であれば前輪をくいっと持ち上げ、後輪の径の大きさをいかして段差を乗り越えるという方法です。一段の段差だけにしか使えませんが、それまでは数センチの段差も越えられなかったものが、この術を習得するだけで移動できる範囲は大きく拡がりました。

ウィリーを覚えた私は、段差を乗り越える瞬間に前輪を持ち上げるだけでなく、「ウィリー走行」という新たな術も身につけます。前輪を持ち上げたまま走るのです。誰かを驚かせたいときに突然やるのですが、見ている人は私がそのまま後ろに転倒するのではないかとおもいヒヤッとした表情をします。それが楽しくて何度もやっていました。すみません。

タイヤの径

さて、段差の話を突然なぜ持ち出したかというと、車椅子に乗っていた経験から、タイヤのサイズ(径)が小さいと、乗り越えられる段差が小さいということを伝えたいのです。そして、これが私の中ではチャリチャリの設計思想にも繋がっています。

車椅子は前輪(キャスター)は概ね5~6インチです。専門的には車輪径と段差乗り越え力といいますが、車軸が固定され同じ水平への力がかかる場合、タイヤの径が小さいと、乗り越えられる段差の高さは同様に小さくなります。そして、いずれにしても二輪の場合には段差を乗り越える際にバランスが崩れますから、さらに計算通りにはいきません。

どのようにすれば小さな径で段差をスムースに乗り越えられるかという研究も多くありますし、段差を乗り越える力は物理で学ぶ範囲にあるのでばっさりと省きますが、とにかくタイヤの径は重要です。20インチを採用しているチャリチャリのタイヤは、多くの人にとってまちの中にある様々な段差を安心して越えられるサイズです。逆に、大きくこれよりも下がると段差での影響をうけてしまいます。また直進安定性はどうしても落ちてしまいます。ふらつくのです。

すべての道路が平らに舗装されているわけではありません。デコボコがあり、段差もあります。趣味やデザインを重視する自転車と違い、不特定多数の方にお使いいただくシェアサイクル用の自転車にとってはこうした点も大切なのです。

(自転車がお好きな方にお伝えすると、フロントフォークのオフセットである程度は変わります。実際、チャリチャリで準備している電動アシスト自転車ではフォークの設計を工夫しています。)

バス会社の計画

さて、もとの道に戻ることにしましょう。予告していたバス会社の失敗の話です。いずれ詳しく書きたいとおもいますが、ここでは簡潔にまとめます。大学生のとき、路線バスを走らせようとしたものの、最終的には計画段階で頓挫しました。

通っていた大学は交通アクセスがものすごく不便な環境で、唯一の公共交通機関としてバスが走っていました。しかし時間帯によっては混雑が激しく、また道路渋滞などでダイヤが乱れやすいことなど、利用する学生や生徒にとって決して評判はよくありませんでした。

そこで、大学と最寄りの駅を結ぶ既存の路線バスを補うため、新たな移動手段を提供しようと考えたのです。ちょうど私が大学に入った2001年、乗合バス(つまり路線バス)や貸切バスを路線ごとの免許制から事業者ごとの許可制にするという大胆な規制緩和が起きました。

路線数を絞ることでコストを抑え、利用者ニーズによりあったダイヤを編成することで利便性を高めようとしました。さらに、今では当たり前ですが位置情報を用いることでバスの運行状況を可視化し、ダイヤ通りに到着しないことへのストレスを緩和させられないかと考えたのです。

この計画の前提は中古のバス車体を用いて初期投資を抑えることにありました。新車は2000~3000万円します。中古であれば安く始められると考えていました。ところがその後、首都圏の一都七県にディーゼル車への排ガス規制が加わり、目論んでいた中古のバスでは排ガスの規制値を下回ることができず、結果的に計画段階で断念せざるをえませんでした。

シェアサイクルはいずれ公共交通になることができる

このとき、テクノロジー×地域の移動という分野での挑戦は一度は完全に諦めました。今から思えば計画も甘く、「移動を担う」という公共性の高さに対して心構えも足りていませんでした。

この経験の中で、いま、neuetの事業を考えることに繋がっているキーワードがあります。シェアサイクルは公共交通なのか、ということです。

路線バスは、改めて言うまでもなく、公共交通です。公共交通であるからには、不特定多数の人に対して「いつでも、だれでも」使える手段であることが期待されます。たとえば、バスに乗るためにバス停にいったら今日はバスが足りないので走れません、駅にいったら今日は電気が通っていないので電車は走りません、と言われても困るわけです。このようなことが起きたら一瞬でニュースになります。

先に宣言すると、私は近い将来、日本のシェアサイクルが公共交通手段になれる、なりたい、そして必ずする、と考えています。実際、台数やポート数の規模が大きくなれば十分にこのように言える時期が来るはずです。一方でニューヨークやロンドン、北京・上海などでは市民の移動ニーズに対してシェアサイクルが日常の移動の選択肢として概ね応えられています。

現状では日本のシェアサイクルはこうした存在にまでは到達していません。福岡では公共交通を補完する、あるいは公共交通と連携する役割はわずかではありながらも担い始められていると思っていますが、規模などの面から見ても相当な距離があります。ギア比を上げて頑張ります。

公共的な移動手段、で終わるつもりはない

数年前から日本では公共交通の定義を拡げることについて議論がでてきました。同時に、国土交通省の委員会(シェアサイクルの在り方検討委員会)では、新たにシェアサイクルを「公共な交通」と位置づけ、公共交通まではいかないけれども公共な存在だよね、という整理を進められています。

今の段階では確かにそのように位置づけるしかないと理解できます。頭では。ただ、進めていきたい先にある姿はここで留まるものではなく、お客さまが使いたいと思われたときに安心してご利用いただけ、日常の移動の選択肢として溶け込み、そして習慣になることを目指していきます。

次回の予告

さて、次回はさらに時間を進めて、私が「自転車」に出会うきっかけと、事業として取り組もうと決意した経緯をお話しすることにします。

私自身の大学・大学院での二足の草鞋を履く時期を経て、クララオンラインというインターネットインフラの会社の経験を活かしたいくつかの事業領域が生まれます。具体的には、スポーツ、コンサルティング、貿易といった事業が立ち上がりました。

これらの経験がなぜさらに「自転車」「モビリティ」に繋がったのか、そしてなぜ着目したのかそのきっかけをまとめることにします。

家本からチャリチャリへのお誘い

neuetでは、チャリチャリの未来を共に描く人材を絶賛募集中です。チャリチャリの未来を創るエンジニア、お客さまのご利用をサポートするCustomer Supportなど複数の職種で探しています。さらに、私と共にCSO/CFO候補として、チャリチャリの事業戦略を推し進めていっていただける方、私と共に自転車の未来を大きく変える動きに向けて走って頂ける方を探しています。まずは気軽にお話しさせてください。Twitter(@iemoto)のDMからのご連絡でも構いません。ご連絡お待ちしています!
シェアサイクル業界の成長戦略を描く!チャリチャリのCSO/CFO候補募集

今日もお読みいただきありがとうございました。では、ごきげんよう。

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