農業から学んだトライアンドエラー ~「やりたいことはやればいい」の精神で〜
〈アグリコファーム桜新町〉
サザエさんの街として有名な田園都市線桜新町駅から徒歩4分。おしゃれなカフェの屋上に緑の木々を発見。今回ねつせた!メンバーが伺ったのは、女優の小林涼子さんが経営されている農園「AGRIKO FARM桜新町」です。 農園は2022年4月にオープン。 養殖と水耕栽培を合わせ持つ「アクアポニックス栽培」を採用し、SDGs17項目にフルコミッ トした循環型農福連携ファームです。第10回グッドライフアワードにて「SDGsビジネス賞」 も受賞されている、今注目の農園です。
〈小林涼子さん〉
女優としても活躍されている小林さん。女優業をされながら2021年に「株式会社 AGRIKO 」を起業、2022年4月に農園をオープンされました。 小林さんが農業と出会ったのは2014年。新潟の棚田で稲作のお手伝いを始めたことでした。 2021年、ご家族が体調を崩されたことをきっかけに、高齢者や障害者でも続けられるバリアフリーな農業に興味を持ち起業されました。
〈持続可能な農園を目指して〉
農園のテーマは持続可能。環境にも人にもやさしい農園運営を大切にされています。 持続可能な農業を目指した結果、SDGs17項目にフルコミットしました。
環境にやさしく
持続可能な農業を実現するため、軸としている3つの循環があるといいます。
①~水槽と植物の循環~
養殖排水を活用した水耕栽培(アクアポニックス栽培)を採用しています。
②~ビル産ビル消~
都市には農地として利用できる土地がほとんどありません。そのため、ビルの屋上を農園と して利用しています。そこで育てた作物を同じビルにあるカフェ、OGAWA COFFEE LABORATORY 桜新町のお料理として提供。ひとつのビルで生産と消費ができる環境(=ビル産ビル消) をつくっています。 (※ビル産ビル消は小林さんが生み出した言葉です。)
③~ロスから作る作物~
作物のロスを使って堆肥を作り、ハーブやさつまいもなどの作物を新たに育てています。
人にやさしく
環境だけでなく、働く人にもやさしい環境を整えています。 障がいを持つ方(以降Gifted)、子育て中の女性なども働きやすい場所を提供。彼らにでき なくて自分にできること、自分にできなくて彼らにできること。「みんなができることに注力しよう」を合言葉に、助け合いながら農園を運営されています。
①農福連携
小林さんは農林水産省の農福連携技術支援者の資格を取得されています。
アグリコファームではGiftedの方が働ける環境を整備。作物の手入れやプランターのイラストを描く作業などをされています。
②主婦の方が働きやすい環境づくり
現在スタッフは8名。その中で7名が主婦の方です。 家事や育児で忙しいお母さんたちはマルチタスクが得意。その強みを生かして働ける環境を作っています。午前中はシフト制で出勤。午後は在宅でiPadで農業日誌を作成。何グラム何を出荷したのか、どれだけロスがあったのか、生育はどのくらい良かったかなどを記録します。女性として家庭や子どもを持っても働ける場を作ることはとても大切なことだとお話されていました。
育てている作物
育てている作物はお花やハーブを中心におよそ8種類。季節によって変化します。 取材時にはマリーゴールドが咲き誇っていました。秋にはビオラやアリッサムなどが花開き ます。多い時でお花の出荷量はおよそ2,000輪。都市農業なので、季節によって栽培品目を変える少量多品目栽培で取り組んでいます。
飼育している魚
取材時には琵琶湖の固有種、ホンモロコが元気に泳ぎ回っていました。飼育する魚の基準は、クーラーとヒーターを使わずに育てられるかどうか。太陽光などでなるべく自然環境 に近い形で育てることを大切にしています。 昨年はイズミダイが産卵・出産フィーバーだったそうです。
〈世田谷区とのつながり〉
子どもの頃の影響
生まれも育ちも世田谷区の小林さん。 小さい頃、ご両親が食農教育を大切にされていて、いちご狩りなどの体験が心に残っているとお話されていました。大人になった今、世田谷区にも子どもたちが農業に触れられるよう な環境をつくりたいと、農園を開くことを決めました。
ビル産ビル消
農地を見つけるのに1年かけたぐらい、場所にはこだわりがあります。 世田谷区には農地が少なく、中々農業ができる場所を見つけられなかったと言います。そこで生み出した方法がビル産ビル消。ビルの屋上で生産し、ビル内の飲食店で消費する方法です。育てる作物はビル1階にあるカフェ、OGAWA COFFEE LABORATORY 桜新町のシェフにヒアリン グして決めています。
アグリカルチャー+子ども
農業は後継者不足という課題を抱えています。 農業(アグリカルチャー)の業界全体を受け継ぐ子どもに、私たちがなります!という宣言の気持ちを込め、株式会社AGRIKOと名付けました。生まれ育った世田谷で自分のような後継 者が出て欲しい。この想いが小林さんの原動力です。今年の夏休みには収穫体験などを通してSDGsを学ぶイベント、『親子で体験 SDGsイベン ト』を開催し大盛況でした! (※アグリカルチャーとは英語で農業という意味)
〈小林さんから若者たちへ やりたいことはやればいい〉
女優と農園経営者という2つの道を極める小林さん。ここまでたどり着くのにはたくさん の苦労がありました。私たちと同じ20代前後の頃は不安な沸々とした気持ちでいっぱいだったそうです。俳優業と勉強との両立が難しく大学中退も経験。「やりたいこと、こうなりた いという目標はいっぱいあったけれど、自分が追いつかなくて焦ったり辛かったり、私は何 者になれるんだろうかという不安な気持ちでいっぱいだった。」今の小林さんの姿からは想 像もできません。しかし、辛い20代があったから今があるのだとお話されていました。 小林さんが今、若者に伝えたいことは…
やりたいことはやればいい
小林さんのお話で最も印象的だったメッセージは「やりたいことはやればいい」という言葉でした。SNSなどの発達で誹謗中傷も増えている現在。周囲に何を言われるか気にしてし まうことも多いと思います。小林さんも農園を始めた時、周りからどう言われるか不安だっ たと言います。けれど、結果としてたくさん人に応援してもらい今の農園を経営されています。「まずはやってみればいいんじゃないかな。やってだめだったら直せばいいわけでそれ で終わることなんかない。まずは楽しんでやってみればいい。」とお話してくださいまし た。
トライアンドエラー精神
まさに農業はトライアンドエラー。 農業に失敗はつきもの。作物が育たなかったことも、花が咲かなかったことも、実がならず 葉ばかり立派だったこともあるといいます。しかし、それを繰り返すことが大切。農業で学 んだ精神が小林さんの人生に生きています。
夢はいくつあってもいい
そして最後には「夢はいくつあってもいい。」とおっしゃっていました。昔は何になりた いか尋ねられると1つしか言えない時代でした。しかし今はいくつ言っても良い時代です。 女優と農園を両立される小林さんの言葉だからこそ意味を持つ力強いメッセージだと思います。
〈まとめ〉
今後の展望はファームを広げ、地域の繋がりと雇用人数を広げること。2023年9月5日、白金に【AGRUKO FARM 白金】を新たに開園しました。地域に密着した農園を更に増やしてい くことが今後の目標だということです。 女優業と農園のお仕事を両立する小林さん。あまりの多忙さに、体が3つ4つにならないかと 何度も思ったそうです。それでもやめたいと思ったことはない。それは支えてくれている人 がいるからだと言います。小林さんのまっすぐな想いが人の心を動かし、たくさんの人が繋 がって農園は進化し続けています。0から1を生み出す小林さんの向上心は正に私たち若者の ロールモデルです。小林さんの目の奥に、次の夢が広がって見えました。
〈さいごに〉
インタビュー後、特別にAGRIKO FARMで採れた魚と野菜が使用されたお料理をいただきまし た!
鮮やかなソースと魚のインパクト! 上品かつ、インスタ映えしそうな1品です。
上に載っている魚はアクアポニックス栽培で飼育されたホンモロコ。綺麗な水で育ったた め、臭みがないのが特徴です!外はカリッと、中はトロトロの食感が楽しめます。
野菜は赤茎ミズナとからしミズナがAGRIKO FARMで採れたもの。からしミズナのピリッとし た辛味がアクセントとなり、ペコロス(小さな玉ねぎ)の甘みを引き立ててくれます。おい しい!!!!
普段はOGAWA COFFEE LABORATORY 桜新町のランチコースの一部として提供されていることも あるそうです!(※あくまで一例です。) 気になった方は是非行ってみてください!