【ネトゲ依存】盗賊②
ネトゲに悩む申見アキです。
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ちょっと遊ぶだけのつもりがあっという間に時間が経過してしまうものだったりする。むしろこの頃は、スマホゲームを筆頭に、依存させるように作ってあるゲームが多いという。今回は①の続き、少しきな臭い。
ある夫が休みの日の晩の出来事。
寝る前の絵本を持った子供が「おとうたん、一緒に寝ようよー」と、入浴後の正味40分ほどゲームしっぱなしの夫の服の裾を引っ張っていた。漸く寝室に入ってきたと思ったら、絵本を読んでやるどころか、あろうことかゲームを続行したまま布団に潜り込んできた時があった。
40分も「待ってー、もうちょっと待ってー」と大の大人がまだ寝かしつけが必要なウトウトしている子供を放置してゲームを優先したのである。
その刹那、我慢の限界というK点をかろやかに飛び越えた私は、即座に台所へ飛んでいき、ガスバーナーをボンベにセットした。
ふざけるな。何が待ってだ。
もういい、あのスマホ燻す。
ただならぬ雰囲気と、ガスバーナーを拳銃よろしく持った血眼の私に気づいた夫は狼狽して私の手を止めていたが知った事ではない。今まで我慢していた言いたい事が溢れ、雪崩のように押し寄せもがき「それを渡せ」としかまともな言葉は出せていなかった。
もう埒があかねぇ。子供の寝かしつけよりゲーム優先かコラ、バーチャル彼女とのバーチャル同居がどんだけ楽しいのか知らねぇが、眠そうな子供が呼んでるのに見向きもしねえたぁ舐めやがって、ふざけんな!等、他にも何か罵詈雑言を言ってしまっていた気はするが、どうも脊髄から泣き叫んでいたらしく、あまり脳に残ってないようで覚えていない。そのぐらいぶっっちぎれた。いつしか私はもみ合いに負け、「今置こうとしてたじゃん」と、うまいこと取り上げられたガスバーナーを見ていたら情けなさで泣けてきてしまい、視界が歪んだ。
ああいう者共が出てくる話を、昔よく本で読んだ事を思い出す。盗賊だ。アリババと40人の盗賊だ。
自分たちの楽しさや利益や出会いを第一に考え、人を攫い、金、女子供、時間をバラバラにして、人の心まで奪って貪り、嬲り殺して生きる、なんびととも知れぬ盗賊のパレード。差し詰め私は、踊り混じりに隠し持った短剣を盗賊の頭(かしら)に突き刺す、召使いのモルジアナだろうか。乱暴怒りのモルジアナと化した私は、そんなまともではない思考回路をしていた。
流石に火器を出して本気でブチ切れ始めた妻を見て、反省したのか不明だがその日を境にやる事の優先順位や品性のバグは大幅に減っていった。
こういう事の繰り返しで互いへの信用濃度は氷の溶け切ったカルピスくらい薄くなり、疲弊してしまう。アリババの物語よろしく、夫をこんなにした盗賊どもを大量の煮えたぎった油で息の根を止めても、例え夫のiPhoneを香ばしくキャラメリゼしたとしても、ネトゲ内の女の執着や夫のゲームへの逃避は緩むどころか逆効果の一途を辿る事になる。
画面や電源の先にいる別の家庭や環境を持った個である人間やコミュニティに、自分の信用と家庭、人間関係を投資したらば、必ず摩擦は生まれる。これはネトゲだけでなく酒でもギャンブルでも暴力でも不倫(性依存)でも、後ろ暗い事すべからく言えてしまう。
たとえ当事者から「もう辞めるから」「大事に思っているから」という言葉がどんなに心深くの反省から出たものであったとしても、その程度の引き継ぎコードでは年月をかけて綺麗に消し飛ばした信用をロードする事は出来ない。
はいそうですかと猜疑心を取っ払ったり、生活に密接に食い込んで侵害され、奪われた時間や心が帰ってくるわけではないのだ。
謝っても取り返しのつかない事があるならやるべき事をやるべき時にやるしかない。
そして今後二度と裏切らない姿勢を見せるしかない。
現実はゲームではない、当たり前のことだ。
今この時ここにしかないからだ。
実行者と回復者は同じであってほしい。私も治す役目は果たしたい。色々な辛い状況に置かれて励まし合う奥様や、旦那様とお話をして、そう強く思った申見だった。
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