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今年のネットフリックスといえばコレでしょ。あの人に聞くマイ・ベスト5(前編)

ネットフリックスが発表した2019年の注目作品リスト「What's Hot? 2019」。一年の終わりに、今年観た作品を思い出したり、語り合ったりするのは楽しいですよね。みなさんはどんな作品が心に残っていますか? ここでは14人の方に、2019年にネットフリックスで観た作品について聞きました。「マイ・ベスト」を5つ、教えてください。(ILLUSTRATION:MARIE WATANABE)
後編はこちら(よしひろまさみちさん、岡宗秀吾さん、サカナクション 山口一郎さん、中原昌也さん、イ・ランさん、栗原類さん、シソンヌ 長谷川忍さん)

▼町山智浩さん(映画評論家)

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01.『2人のローマ教皇』

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「『史実と違う!』とお怒りの方もいるけど、コンクラーベのBGMにABBAの『ダンシング・クイーン』を流すような映画なんだから固いこと言うなって! 2人のローマ教皇のイチャイチャがとにかく可愛くて、厳しく泣けて、本当に優しい気持ちになれる傑作でした」
2人のローマ教皇

02.『マリッジ・ストーリー』

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「ノア・バームバック監督は離婚体験をリアルタイムで『ベン・スティラー 人生は最悪だ!』(原題:Greenberg)(2010年)に描いているけど、そちらは恨みとねたみがこもった殺伐としたコメディーだった。9年経つと、こんなに温かく、別れた奥さんへのおわびと感謝のラブレターが作れるなんて」
マリッジ・ストーリー

03.『失くした体』

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「見ている間、主人公が家族も生活も将来も恋も希望もどんどん奪われていって、最後はとうとう……。もう勘弁してくれ!と思う最後の瞬間にギリギリの希望。『この世界の片隅に』と並ぶ『右手』の映画でした」
失くした体


04.『いつかはマイ・ベイビー』

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「サンフランシスコで生まれ育ったアジア系カップル。彼女はアジアの家庭料理のレシピでセレブなシェフになってリッチに、彼氏は売れないバンドマンのまま。これ、現地に住んでいる自分から見るとものすごくリアル。本人役のキアヌ・リーブスの怪演も爆笑。この人、なんでもやってくれるなー」
いつかはマイ・ベイビー


05.『アイリッシュマン』

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「スコセッシ&デ・ニーロの終活映画。テーマは彼らの最初期の作品『ミーン・ストリート』と同じ『兄弟の番人』だった。その頃からずっと見てきた自分にとっては人生がひと回りし、つまり還暦したなとしみじみ」
アイリッシュマン

町山さん

町山智浩(まちやま・ともひろ) 1962年、東京都生まれ。カリフォルニア在住。映画評論家。1995年に雑誌『映画秘宝』を創刊。現在はBS朝日『町山智浩のアメリカの今を知るTV』(毎週月曜日)など、さまざまな媒体で活躍中。


▼TOWA TEI / テイ・トウワさん(音楽家)

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01.『オルタード・カーボン』

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「近年で一番の刺激的SF作品。近未来が舞台のSF作品が多いなか、コレは遥か遠未来の身体をないがしろにする斬新な世の中を描いています。一回めでは誰が誰だか分かりにくいので、二回めのほうがより楽しめました。主人公を演じるキナマンの人間離れした身体美。次シーズンはキナマンではないらしいけれど、楽しみ」
オルタード・カーボン

02.『アトランタ』

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「THIS IS AMERICA。トランプ政権下の今の若者の空気はこんなダルさなんだろう、というシニカルなアメリカンジョークがNYで若者時代を過ごした自分には刺さるというか、案外笑えました。次シーズンも楽しみ」
アトランタ

03.『ストレンジャー・シングス 未知の世界』

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「シーズン3は80'sのショッピングモールを舞台にした時点で、ポップ度のアップに成功したね。次シーズンも楽しみ」
ストレンジャー・シングス 未知の世界

04.『ブルックリンで、ブルーノと!』

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「ブルックリンを舞台としたワンちゃんもので、低刺激なほのぼの作品。『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』しかり、たまにはこういう静かなローカルドラマも良い。NYにいると、なおさら自分は楽しめました。次シーズンも楽しみ」
ブルックリンでブルーノと!

05.『全裸監督』

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「日本特有のドロドロ、ジメジメした作品になりそうな題材が、なんともサラッとガツッと描かれていて。楽しくバブリーな昭和の和モノ作品でした。きっと世界中の人が山田さんや森田さんの演技にハマっています。次シーズンもあるのかな……」
全裸監督

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TOWA TEI /テイ・トウワ(てい・とうわ) 音楽家。2019年ソロデビュー25周年を迎える。 アナログ重量盤2枚組としてリリースした『FUTURE LISTENING!』のほか、作品集『ARBEIT』や『ON AIR EP』、『MACH EP』をリリース。 11月には表参道にてTOWA TEI個展「GLUE SCISSORS」を開催。 http://www.towatei.com


▼モーリー・ロバートソンさん(ジャーナリスト・DJ)

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01.『スター・トレック: ディスカバリー』

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「とにかくエキサイティング。主人公がアフリカ系アメリカ人女性であることから始まって、同性パートナーは当たり前な今までで最もダイバースなキャストでした。と同時に『政治的な正しさ』からは程遠く、エグい展開が続くので、毎週何回もサイトをリロードしていた次第です。クリンゴンの女王のグロテスクなエロさからも目が離せませんでした。クリンゴン語をよくここまでつくり上げたな、というのもツボ。講演会で話した『人間と結婚したがるクリンゴン』ネタはわかってもらえず、悲しかったです。もっとみんなに知ってほしいシリーズ!」
スター・トレック: ディスカバリー


02.『ナルコス』

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「日本ではまだタブーすぎて表舞台でまともに報道すらされないハードドラッグの問題を、歴史・政治・経済といった背景から多面的に描いた大作です。日本中の高校生の夏の課題にしたいほど有益な情報が脚本に満載されていました。またエンターテインメントとしても完成度が高く、スペイン語のセリフが延々と続くのもリアルでした。麻薬問題は見ないふりをしても、すぐそこにあるのです」
ナルコス


03.『ラブ、デス&ロボット』

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「最近ではアニメはまったく見なくなったのですが、こればかりは例外的に興奮しました。大人の不条理や格差がふんだんに盛り込まれたディストピアの数々。そしてとにかく官能的かつグロいSF場面。全部見終わって、悲しいほどでした。日本式の線が細い『きれいきれい』な作画は苦手なのですが、こちらのスタイルであれば子供のように毎回見られます」
ラブ、デス&ロボット


04.『Marvel ジェシカ・ジョーンズ』

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「『ジェシカ・ジョーンズ』を継承するストーリー展開。子供スターとして支配的な母親にプロデュースされたジェシカの『義理の妹』役がシリーズの中でどんどん人格崩壊していき、最後は『きれいなんだけど、ものすごく怖い人』へとメタモルフォーゼしていく過程が醍醐味の一つです。ジェシカがアルコールへと逃避する描写もいい味を出していました。ヒーローって、本当は悪いやつが多いんだなという実感と、だからこそというのか、そういう不完全な異才の持ち主たちに対するリスペクトを抱きました」
Marvel ジェシカ・ジョーンズ


05.『ピーキー・ブラインダーズ』

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「日本ではほぼ誰も意識しないイギリスとアイルランドの歴史的な経緯。第一次世界大戦が社会に残した爪痕の描写も真に迫っており、差別されるアイルランド人の地域社会でのし上がっていく若いギャングの生の躍動がみずみずしく感じられます。何よりお風呂にあまり入っていない感じの汚さが、良い。当時のイギリスにローカルな物語でありながら、普遍性を感じました。英国版『仁義なき戦い』です」
ピーキー・ブラインダーズ

モーリーさん

モーリー・ロバートソン(もーりー・ろばーとそん) 日米双方の教育を受けた後、東京大学とハーバード大学に現役合格。ハーバード大学を卒業後はメディアを中心にタレント・ミュージシャン・国際ジャーナリストとして幅広く活躍。現在、日本テレビ「スッキリ」にレギュラー出演。著書『悪くあれ!窒息ニッポン、自由に生きる思考法』も好評発売中。


▼OKAMOTO'S オカモトショウさん(ミュージシャン)

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01.『妄想代理人』

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「監督の今敏さんの作品がそもそも大好きで、特に『パプリカ』は心のベスト10に入るくらいファンでした。その後、『妄想代理人』というアニメ作品もやっていたことを知り、初めて見たときはレンタルもほとんどなく苦労して見た記憶があります。ネットフリックスでこんなに気軽に見られるようになったのは最高ですね」
妄想代理人

02.『ハーモニー』

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「伊藤計劃さんの小説の大ファンでして、それがアニメ化されたと聞いてすぐに見ました。現代SFの天才の作品をこのクオリティーでアニメ化してくれたことに感謝! SF好きには必ず見てほしい!」
ハーモニー

03.『ブラック・ミラー』

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「毎回衝撃の新作をリリースしてきたこのシリーズ。今年の新作もやはり見逃せませんでした。最新作品をこんなに心待ちにさせられるシリーズは他にはないと思うくらい、予想を裏切ってくる感じがたまらないです」
ブラック・ミラー

04.『アイリッシュマン』

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「スコセッシ×デ・ニーロは『タクシードライバー』から全作愛してやみませんが、こんな作品が出てくるなんて……。マフィアものは星の数あれど、そのボスの右腕ポジションにフォーカスした作品って意外と見たことないかも? 文句のつけようなく、物づくりとしての完璧さにうっとりしてしまう作品でした」
アイリッシュマン

05.『マインドハンター』

マインドハンター画像

「新シーズンが配信されてすぐに見ました! ドラマシリーズらしく『次が気になる』、『キャラクターを愛してしまう』という感じと、毎話映画並みに濃厚なのがたまらないです。早く新シーズン来てくれ!! 頼む!」
マインドハンター

しょうがぞう3

オカモトショウ(おかもと・しょう)
1990年、ニューヨーク生まれ。 OKAMOTO'Sのボーカル担当。2010年3月に「S×SW2010」に日本人男性としては最年少での出演を果たし、そのまま全米6都市を廻るツアーを行う。同年5月に1st.アルバム『10'S』でメジャーデビュー。19年7月には日本武道館でのワンマンライブを成功させる。2020年5月には「90'S TOKYO BOYS in HALL “History”」と称し、東名阪にてホールTOURの開催が決定。


▼加藤るみさん(タレント)

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01.『セックス・エデュケーション』

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「今年一番ハマったドラマ! ティーンエージャーの性問題を赤裸々に描いた作品です。タイトルを見て躊躇している人がいるならば、今すぐ見てほしい! 友情、親子関係、性の多様性、学校じゃ教えてくれないことをエンタメを通して学べます。学園コメディーとしても面白くてハートフルなのに、凝り固まった社会の固定観念にもメスを入れた、きっちり大人にも響くドラマ。シーズン2は2020年1月から配信開始。待ちきれない!」
セックス・エデュケーション

02.『マリッジ・ストーリー』

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「しんどいくらいの夫婦の離婚話なのに、私はこの映画が大好き。それは、一度は愛し合った夫婦の絆を置いてきぼりにしない優しさがあるから。ボコボコに殴り合うようなケンカをしても、終わったあとにお互いがそっと絆創膏を貼り合えたらいいよねって。アダム・ドライバー × スカーレット・ヨハンソンのエネルギーを大解放する演技は圧巻! 愛に疲れても、愛を諦めても、きっとこの作品が背中を押してくれます」
マリッジ・ストーリー

03.『運び屋』

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「今まで見てきたイーストウッド作品の中でも、最高峰! まさに、ヴィンテージワインのような映画でした。熟成されたから完璧になるわけではなく、そこには複雑で繊細な味がある。116分の中に、主人公アールが今まで歩んできた人生の表情が凝縮されていました。この役を完璧に演じきれるのはイーストウッドだからこそ。さすがとしか言いようがありません。ほどよい緊張感に加えて、クスッと笑えるユーモアもあり、極上のヒューマンドラマに仕上がっています」
『運び屋』

04.『ユニコーン・ストア』

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「ブリー・ラーソン初監督作品。おもちゃ箱を開けたようなカラフルでゆめかわいい世界観に惑わせられながらも、昔からの夢をかなえようとする主人公にがっつり感情移入してしまい、心痛。親の期待や願いも、子供の頃からの夢や憧れも、全部の気持ちがつらいほどわかる。意外にも大人女子にグサグサ突き刺さる作品でした。サミュエル・L・ジャクソンの胡散臭さが絶妙で笑えます。『ブリグズビー・ベア』がハマった人にオススメしたい作品です」
ユニコーン・ストア

05.『ウェット・ホット・アメリカン・サマー』

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「おバカ連発青春コメディー。サマーキャンプの最終日、大人も子供も大騒ぎでとにかくやかましい。でも、この“やかましさ”、嫌いじゃない。むしろ、好き。私のお気に入りは医務室で大暴れするシーン。ギャーギャー言いながら物をぶっ壊していくだけなのに腹を抱えて笑いました。意味のわからなさがこの作品の魅力です。それに、ブラッドリー・クーパー、ポール・ラッド、エリザベス・バンクスなど今を輝くスターたちのダサかわなアメリカンファッションが見られるのは超貴重。ポテチとコーラを用意して、お家でゆる〜く見たい作品です」
ウェット・ホット・アメリカン・サマー

加藤るみ

加藤るみ(かとう・るみ)
岐阜県出身。タレント。アイドルグループSKE48を卒業後、映画・釣り・世界遺産など多趣味を生かし多数メディアでマルチに活躍中。TBSラジオ『アフター6ジャンクション』で東南アジアの映画紹介をし話題を呼んだ。立川シネマシティで『ビッグ』『マネキン』上映イベントを開催するなど、映画コメンテーターとしても精力的に活動。


▼明和電機 土佐信道さん(アーティスト)

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01.『リラックマとカオルさん』

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「かわいくて、モフモフしていて、一芸を持っていて、涙もろければ、働かなくてもいいという究極の『ひも』ストーリー。とにかくかわいい」
リラックマとカオルさん

02.『カンフーハッスル』

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「貧民街のさえないおじさんとおばさんが、実はカンフーの達人で、悪党をやっつけるという大爆笑のカンフー映画」
カンフーハッスル

03.『タクシードライバー』

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「映画『ジョーカー』の対極。弱者が日常の積み重ねによって悪に変化していくのが『ジョーカー』ならば、日常の積み重ねで善に変わっていくのが『タクシードライバー』だと思います」
タクシードライバー

04.『全裸監督』

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「僕にとってはこっぱずかしくなる、80年代の映画。ちなみに大学生の時、筑波のレンタルビデオ屋さんで黒木香さんと2ショット写真を撮ったことがあります」
全裸監督

05.『ラブ、デス&ロボット』

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「ロボットを軸に様々なエピソードが展開する実験的短編アニメーション集。ショートショート好きの僕にはたまりません」
ラブ、デス&ロボット

土佐さん

土佐信道(明和電機)
芸術ユニット「明和電機」として活動。作品を「製品」、ライブを「製品デモンストレーション」と呼び、さまざまなナンセンスマシーンを開発してライブや展覧会などを国内外で発表。音符の形の電子楽器「オタマトーン」などの商品開発も行う。2019年3月に秋葉原「東京ラジオデパート」にて明和電機初の公式ショップ「明和電機秋葉原店」をオープン。


▼樋口真嗣さん(映画監督)

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01.『ROMA/ローマ』

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「パッケージメディア原理主義者の私が、ネットフリックスに入信する最大の動機になったオリジナルの一本。日常の連続に通奏される緊張と、それを見つめる柔らかな眼差し。こういう企画が実現できることに意味がある。環境さえ整えればドルビービジョンにドルビーアトモスで堪能できるのもいい」
ROMA/ローマ

02.『ストリート・グルメを求めて』

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「把握しづらいサムネイルをスクロールしていて出会った、アジアン屋台のドキュメンタリー。ネットフリックスのごはん系番組はとにかく美味しそう。4Kの高画質は食欲をダイレクトに刺激する! これぞ飯テロ。登場する大阪の屋台に行ったらインバウンドのお客さんで大行列でした」
ストリート・グルメを求めて

03.『鋼鉄の雨』

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「トム・クランシー的なポリティカルアクションは個人的に大好物。韓国のオリジナルでここまで振り切れて攻め込んだ内容が作り込めるのは、本当に羨ましい限りです。日本でもやりたい。やらせて!」
鋼鉄の雨

04.『流転の地球』

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「尊敬する小松左京先生のビジョンを継承する中国のSF作家、劉慈欣原作の超大作。マーケティング優先のこのご時世、大規模な劇場公開が絶望的でも自宅でいち早く観れる。本当にいい世の中。日本でもやりたい。やらせて!」
流転の地球

05.『リッキー・ジャーヴェイスの人間嫌い』

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「BBCのドラマ『The Office』のクソ上司役…リッキーの、地上波では放送できないしパッケージも売り上げが見込めないであろう、スタンドアップコメディがひっそりと配信されてる。ありがとうネットフリックス! コンプライアンスなんてクソ食らえ!」
リッキー・ジャーヴェイスの人間嫌い

樋口さん

樋口真嗣(ひぐち・しんじ)
1965年9月22日、東京都生まれ。映画監督。高校卒業後、『ゴジラ』(84)で特殊造形に携わったことをきっかけに映画界へ。その後、『ガメラ 大怪獣空中決戦』(95)など"平成ガメラシリーズ"三部作で特技監督を務め、2005年『ローレライ』で監督デビュー。その他『日本沈没』(06)『のぼうの城』(12)『シン・ゴジラ』(16)など。次回作は2021年公開予定の『シン・ウルトラマン』。

後編はこちらに続く


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