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核戦争後の世界で聞きたいレコード

 1945年にヒロシマで原子力爆弾が落とされて以来、人類は数発の核爆弾でヒトという種を容易に滅ぼすことができる恐怖と対峙してきた。その恐怖はキューバ危機の時と劣らず健在であり、恐らく今後もそうだろう。
 しかしデヴィッド・ボウイが歌うように風が吹いた(吹いてしまった)時は? When the wind blows.そんなことは考えたくもないが、避けられない運命というものは実在するらしい。 

I never felt the sun
I dread to think of when
When the wind blows…

 空にもう一つの太陽が生まれる時に吹く風。一体どんな風なんだろう?

核戦争後の世界で聞くレコード

 数々の有名な反核・反戦争ソングがありますが、「核戦争後」では起きてはならない事が完了してしまっているので冒頭のWhen the wind blowsは核戦争のオープニングとなります。

Maybe The Ink Spots

 最近ドラマ化されたことで有名なRPGゲーム「Fallout」シリーズの第一作目のオープニングで流れる曲。
 単純な歌詞に意味深い内容が核戦争後の世界にマッチ。この曲をオープニングに選んだ開発者は素晴らしいセンスの持ち主に違いない。

Maybe the one who is waiting for you
きっとあなたを待っている人がいるなんて
will prove untrue
ただの勘違いで
Then what will you do?
そしたらどうするつもり?

 ちなみにこの曲は1940年に作られた模様。元々は純粋なラブソングだったのでしょう…

Maybe,Maybe,Maybe…

We'll meet again  Vera Lynn

 核戦争のために作られた曲と言っても過言ではなく、BBCの有事放送時のプレイリストの中に入っていたとか。

 実際には第二次世界大戦でイギリス軍の士気を上げるために作られた。イギリスではこれが大ヒットし国民的ソングになり、戦後は世界中でも知られるようになった。

We'll meet again,
またどこか出会いましょう
Don't know where,Don't know when,
どこでか、いつなのかわからないけど
But I know we will meet again,some sunny day
でもいつか暖かいお日様が照す日にまた会えるでしょう

 いつ命を落としてもおかしくない前線に送られる兵士にとって、この曲は唯一の慰めだったのか…

 肝心の核戦争のイメージは、スタンリー・キューブリックの有名なブラック・コメディ映画「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」(通称ドクター・ストレンジ・ラブ)の核実験の映像と一緒に流れるエンディングのイメージで焼き付けられている。何があってもいつか絶対に会える、そういった皮肉がパロディとしてもよく使われる。

Mein fuhrer!! I can walk!!
総統!! 私は歩けます!!

ストレンジ・ラブ博士

 古き良き白黒映画ですが、核戦争という一見ユーモアの欠片もない題材を見事にコメディにしたキューブリック監督。クスッと微笑み、そして見たことを後悔するような恐怖を感じることができる名作映画でございます。

 ちなみに様々なバージョンがあり、フランク・シナトラや、前で紹介したThe Ink Spotsもカバーしています。

Libet's delay & A1 It's just a burning memory

 個人的に荒廃した世界へのノスタルジー(前世かな?)を思い立たせる雰囲気が立ち込めたThe Caretakerの曲。調べてみるとこれは一種の「芸術作品」(音楽も芸術ですが…)であり、決められた物語やテーマではなく、確かに過去やノスタルジーを感じさせる不思議な曲だそうです。

 大切な人を地上に残して核シェルターに逃げ込んでも、この曲を聞いていれば永遠に過去の楽しい日々を満喫できそう…

 しかし現実はそんな甘くはない。なんとこの一連の曲にはアルファベット順の「階層」があり、「記憶の劣化・欠如」を表現しているそう? 過去の甘い記憶もいずれ悲惨な現実と置き換われてしまうのだろうか…

 B1ではA1のメロディが薄っすらと断片的に聞こえてくる。そして更に階層が上がるともはや雑音しか聞こえない。しかしそれでもノスタルジーの雰囲気は残り続ける。

 それにしても本当に耳と心にフィットするような感じで素晴らしいですね。

 

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