【ネット歯科大】歯石除去の達成率は
歯周病の原因は歯周病菌であり、細菌のかたまりをプラークと呼びます。
細菌が石灰化したものが歯石です。歯石はがっちりと歯に結合しており、細菌の生息にとって快適な環境となってしまいます。
したがって、歯周病治療においては、プラークや歯石を除去することが大切です。
ここで問題となることとして、実は完全なる歯石除去は難しい作業だということです。
研究データによると、5mmを超える歯周ポケット内の専門的な清掃を行い、その歯面からプラークや歯石を完全に除去できていた割合は11%だったとされています。つまり残りの89%のケースにおいては、清掃後にも多少の汚れが残っていたことになります。
この研究は、清掃後に抜歯して歯面を精密に確認しているので、より厳しい判定がなされています。だからこそ、貴重な研究データであるといえます。
歯の表面はツルツルしていますが、細かく見ると凹凸があり、そのへこみの部分にちょうどはまっている歯石などはどうしても取りにくいのです。
歯周ポケットが浅くなるにつれて歯石除去の達成率は改善していきます。3mmまでの歯周ポケットでは、除去できていた割合が83%となっています。
以上のことから、歯石除去の達成率は意外と高くないこと、そして深い歯周ポケットになるほど清掃後の歯石の残存率が高いことがわかります。
歯石除去の方法はいくつかあり、上記の研究で用いた方法は歯ぐきの中を探りながらきれいにするという、ありふれた治療法を用いています。
外科処置を用いて歯ぐきを一部はがし、歯ぐきに隠れていた歯石を見えるようにして除去するという方法もあります。これを歯周外科治療といいます。
歯周外科治療を行うと、歯石の除去率はさらに改善します。そのため、一定の患者さんにおいては、外科処置を含んだ歯周病治療を行う必要があります。
また、手探りの歯石除去を繰り返すことで状態の安定を図る場合もあります。
患者さんの状態によって、歯科医師は適切な治療方法を判断してご説明します。その際、複数の治療プランを提示して、一緒に検討することもあるでしょう。
歯石除去は歯科ではありふれた治療のひとつではあるものの、意外と難しい治療でもあるのです。
神奈川歯科大学 青山典生