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実録・漢のテクノ‼︎〜炎の5時間をキミは目撃したか⁉︎〜



去る三月三十一日、Market Wakayamaにて行われた5HOURS By KENTOに行ってきました。

和歌山にいるDJのKENTOくんが一人で五時間回すだけの骨太イベントで、めっちゃ楽しかったからその感想を書きます。

まずは掲載許可をくれたKENTOくん(ig:kento_keyspot)に最大のリスペクトを。


前夜

告知と声明文が出たのは二月の中頃。
文面からただならぬ覚悟と熱を受け取った。
情報を拡散してる人たちもなんか熱っぽい。
すごいイベントになる気配がした。
開催が近づくにつれ彼らの熱量が上がっていくのをSNSで見ていた。

実際行ってみて、すべて納得した。今まさに忘れたくない瞬間を過ごしているとそこにいる誰もが思っているように見えた。

おそらくその光景が見れたのは偶然じゃない。集まった人たちで特別な夜を作って自分たちで食い尽くした。

音楽のかかる場所で自分の見たかった景色のひとつになれるのは、何物にも代えがたいよろこびである。
自分の住んでる県でそういう体験ができるのは嬉しいしこの流れは続いて欲しい。
だからあの日に私が見たものやそこで感じたことをまとまった文章として残すことにした。

これはあの夜の話であり私の話でもある。あなたがこれを最後まで読めばあなたの話にもなる。

和歌山のD.l.Y. テクノ

私は県内のクラブシーンにおいて新参者だし外野だけど、今回のような気合いの入ったイベントが開かれるのは土壌が豊かな証拠だと思っている。
DJに加えてVJ、サウンドシステム、飲食、カメラといろんな武器を持った人たちが集まって化学反応を起こせる場所があるのはすごい。
和歌山ではそういうすごいイベントが毎週あちこちで起こってる。

ハードコアパンクやレイヴみたいに、かっこいい文化というのはD.I.Y.の精神から生まれる。今回のイベントもその精神を感じた。
自分たちが遊ぶ場所は自分たちで作るのだという熱意が充満していた。
その熱にあてられて、こうして文章を書いている。

五時間セットでやると知ってまず連想したのは、フランスのサーキットで毎年行われる二十四時間耐久カーレースのル・マン。
回転しながら木を割って進むネジ。
周回のイメージ。

KENTOくんの孤独で過酷な挑戦をみんなで固唾を呑んで見守るような光景を想像していた。けれどそのイメージは間違っていた。

当日フロアにいるとまるで夜行バスに乗っているような気分になった。

深夜の長距離移動。
心地よい疲労感。
同じ景色が続くようで、しかし進んでいる。イベントが無事に終わったら、帰り道さえ違う景色に見えるような気がした。
実際は変わらなかった。



KENTOくんの選曲のセンスはなぜか私にしっくりくる。
ロングセットならではのゆっくりと時間をかけて展開される音楽はどれもよかった。

90sトリップポップを思わせる女性ボーカルの歌モノハウス、なんぼあってもいいことで有名なアーメンブレイク、舗装された真っ直ぐな高速道路を走っているようなミニマルなテクノ。
セカンドサマーオブラブに想いを馳せてみる。

時折知ってるフレーズが流れていって消えていくのもよかった。高速道路からUSJ見つけてちょっと嬉しいみたいなやつ。

Naito ShunさんのVJもとてもかっこよかった。
KENTOくんのDJから感じるスクエアでひんやりとしたイメージと、Naitoさんの寒色を基調としたVJの流動的で有機的なイメージが合わさって、これ以上ない環境でテクノを楽しめてる気がして、私は全身がテクノになった。


とはいえ、やっぱりロングセットは観る方もそれなりに疲れる。疲労感がテクノハイに変わり、最終的にまたただの疲労に戻る手前でクライマックスを迎えた。
観客というか仲間たちが続々と地下に降りてきて、みんなで盛り上がりました。

横を見れば、知ってる顔も知らない顔もいる。同じバスに乗り合わせた人たちが見たそれぞれの景色に思いを馳せつつ、パーティーっていいなあなどと一年前では考えられなかった感情を抱いて、本編とアンコールを見届けました。
今までもあってこれからもあるだろう、愛と笑いの夜の一つに立ち会った。

喫茶ピュアと新宝島レコーズ

そしてこのイベントを語るにあたって欠かせないのが、KENTOくんの声明文や当日のMCでもあった通り、和歌山市の喫茶ピュアの存在。

KENTOくんはそこの店主であるDUNKさんのDJに衝撃を受け、和歌山のクラブカルチャーの世界に飛び込んでいったらしい。

DJを始めたのは一年前だという。
DJ二年生に進級したばかりのKENTOくんが一人で五時間回すのは、ほぼ無謀に近い挑戦だったのかもしれない。
男気、決意、覚悟はもちろん、私は威嚇や周囲への牽制のようなピリついたムードも感じた。
クラブミュージックへの愛と先人たちのリスペクトを感じられるMCを聞くと、脈々と受け継がれるD.I.Y.の魂はInstagramのストーリーではなくまとまった形で書き残しておくべきだという使命感にかられた。

かつて、喫茶ピュアの裏に新宝島レコーズというレコード屋さんがあった。
実は私も高校生の頃(2015〜2016年?)新宝島レコーズに行ったことがある。
大手のレコード店とは全く違う秘密基地のような雰囲気に圧倒されたことを覚えている。
テクノやニューウェーブ、ジャーマンプログレなど未知の世界だったし、ヤベ〜何も買えね〜と焦った。
しかし店主のおじさんはそんなハナタレの私と友達に優しくしてくれた。音楽の話や、昔にここでイベントがあったことも教えてくれた。

教室の片隅で一人で音楽を聞きながら弁当を食ってる絵にかいたようなオタクだった私にとって、県内にこういう“変わったおじさん“がいることがどれだけ心強かったか。
話を合わせてくれる変わったおじさんとしか趣味の話ができない自分がどれだけ情けなかったか。
私は先生と仲良くしてる生徒が嫌いだった。
新宝島レコードにはそれきり行かなかった。

高校卒業後は県外で暮らしていたのでその間の和歌山のことはよくわからないが、帰省して改めて和歌山の何もなさに絶望してた頃にMarket Wakayamaの存在を知ってDJイベントに行った。
そこ出てたのがKENTOくんだった。

後からおじさんの弟子ということを知って、点と点が繋がった。

私がキモい高校生であるが故に逃した縁をKENTOくんが掴んだのかななどと、本人に伝えるにしてはやや身勝手すぎる親近感を抱きつつ、私は何度となくKENTOくんが出ているイベントに行くようになった。

いつも渋くてかっこいいと思う。
スクエアでひんやりとしていながら、ちゃんと踊れる。熱湯と氷水が混ざったような絶妙な温度感が心地良い。ハナタレKENTOも未知のダンスミュージックに魅了され、たくさん踊ったのだろうな、などと考えてみる。
高校野球大好きおじさんってこんな気持ちで高校球児を見てるんかもしらん。

おわりに

和歌山のクラブシーンは多分熱い。かっこいい人がいて、それに影響された人がまた誰かに影響を与えてる。この連鎖は続いて欲しい。
現時点での和歌山の地下のうねりについて記録しておきたかった。

この文章は田舎暮らしで好きなものをオフラインで楽しむ機会に恵まれず、ちょっと拗ねかかっているお前のようなしょうもない人間に捧げます。

言っとくけどお前ってダサいよ。
テクノが好きなお前も普通にダサい。
ただ、お前の好きなテクノがダサかったことがあるか?
お前のダサさなんか、テクノからしたらまじで全然大したことないですよ。
テクノの前に生き恥を晒した者だけに道は開かれる。
あと10秒で覚悟しろ。


覚悟が決まったら、そのベタベタのスマホとメガネを拭いて、疲れにくい靴を買って履け。

いつ来てもいいしいつ帰ってもいい。
友達を作ってもいいし、
一人でいてもいい。
疎外感も一体感も全て無視していい。
損も得もしようと思うな。
入場料とドリンク代だけ持って会場に向かいましょう。

ほんとはお前に言いたいことなんか特にない。

これで書き終わります。

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