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欧米を 崇める視線の 根深さよ(1)〜あなたヨーロッパのなんなのさ?〜

日本における高学歴文系マッチョ男性(女性も?)について語る上で欠かせないのが、欧米崇拝の異様な強さである。特にアメリカ、イギリス、ヨーロッパへの、崇めたてまつり目線は特筆に値する。

この場合、該当するヨーロッパの国は結構狭い。あえて言えばフランス、イタリア、ドイツ、オーストリア、スイス、などの観光名所がたくさんあるメジャーな国である。私の知る限り、高学歴だと自らを認識していて語学習得に強い意欲を見せる文系マッチョ男性(女性も)の多くが、これらの国を異様なほどに崇める目線を内面化していることが多い。

そしてその目線は、アジア圏(日本はこの場合彼らの目線においては”アジア圏”には入らないと思う)および、日本の硬直的かつ閉鎖的な、しかしなんだかんだ言って盤石なシステムを批判し、欧米と比較して低く見てしまう目線とセットになっている。近年その日本を低く見てしまう視点については、日本のここがすごい!日本の技術が世界から礼賛されている!などの(ホントかな…)番組などで大分意識が変わってきているような気もするが、海外と接点を持つ日本人が、日本のシステムを嫌悪してしまう傾向は、自分もそういう感覚を強く持つ側でもあるので、自戒をこめて、問題があるのではないか、と思っている。

大抵このような日本の異様な欧米崇拝について指摘をすると、すこぶる嫌な顔をされるので、せっかくの飲み会の雰囲気も台無しになるし、私がこよなく愛する「イタリア」風の絵画などがかかる内装や、本家イタリアのどこにも存在しないらしいミラノ風ドリアや、それに合わせたサイゼリヤの100円ワインの風味も損なわれるので、あまりこういう話題をしないようにしている。しかし、このテーマは英語力に異様なまでの執着を見せている人が多かったICUキャンパス内での、語学が堪能な関係者が持つ、ピノッキオの鼻のようなプライドに対する違和感を語る上では避けては通れないものなので、どうか、うんざりしながら読んでほしい。

ある日、大学内の学食において、男性のスーツの話題になった。
いつも同じチェックのシャツばかりを着ていて、
狭いサークル内で妙に過大評価をされ、もてはやされていた(※大変に失礼だがまるでもてはやされたことのない個人の意見である)
いつも眠そうなひょろりとした御三家卒の男性が
(何度も繰り返すが当時私は「御三家」がどこなのか、なんなのかを、知らなかった!)
こんなことを言った。

男性向けのスーツを着る際には、
一番下のボタンを外すのがマナー。

なぜかというとそれは、
昔、イギリスの人が狩りをしていたときに
ボタンを外したことが由来(諸説あり)
なのだそうだ。

彼は本当にそれを自然なことのように語っていた。
さも、当たり前のように。

私は林間学校の合宿所のような学食内で麦茶(barey tea と翻訳がついていた、ジャーに入った麦茶)を飲みつつその話に衝撃を受けた。

昔のイギリスの人の狩り…!?

…我々に、いったい何の関係が…!?

まぁ、現在日本で主流となっているファッション業界の常識があるのならば、それは、JUNKO KOSHINOやMICHIKO LONDONなどを通じて(←※適当)欧米のファッション業界のルールが雑誌などを経由してもたらされた結果であるからして、
それを参考にするのは、分からないわけでも…ないが…。

当時、そのエピソードが御三家卒の、網棚などによく忘れ物をしてしまう(その特徴は私も酷似しているところがあるので笑えない)いつも眠そうな彼から語られていたのは、
2000年代初頭の日本、東京、三鷹市においてであった。しかも、カレー以外のあらゆるメニューが(自分にとっては)美味しくなかったが、謎のメニュー名を含めて思い出のつまった(現存しない)学食にて、であった。

我々がスーツを着て何かに乗るとしても、それは馬ではない。
ロータリーと呼ばれていた、校舎から歩いて5分くらいかかるほどの遠い場所にあった大学内のバス停から出る、JR武蔵境駅行きかJR三鷹行きのバスだ。
しかもスーツはAOKIや、SUITSELECT、サイズが大きい人ならサカゼン、などで購入したものだ。なんなら私はお金がなさすぎて、物凄く嫌な顔をされながら寮の後輩にスーツを無理やり借りた。人間性すら損なわれる当時の自分の貧しさを思い出すと、本当に経済力とは大事だと痛感する。

さらに、そのスーツを着て行く行き先は、就活の時期だったのだろうから、西新宿あたりだろうか。実際にバスによく乗って行ったのは、スーツは関係ないが、妙にコワモテな店員さんばかりがいる武蔵境のカラオケ「歌うんだ村」と下戸すぎてカルピスサワーをぐびぐび飲んだらまだ3人くらいしかいなかった19時半にひとり気持ちが悪くなって誰にも気づかれずに吐いた、思い出の飲み屋、一八屋、くらいなものだ。

我々は、狩りには一生行かないだろう。
ましてや、馬には、乗らない。

昔のイギリス人の狩りと、日本人が着るスーツのボタンのルールとの間に、いったい、何の関係が…?

とにかく、イギリスがきっとスーツ界においては偉い存在なのであろう。あのイケてるイギリスくんが言うなら間違いない!

また、大手外資系メーカーに勤めていた
アメリカ留学経験のある別の男性のエピソードである。

私は奥様がご学友であったがゆえに
ご祝儀によって破産しそうではあったが、
光栄なことに、海辺のホテルで行われた大変に豪華な結婚式に呼んでいただいた。

旦那様となった男性は、フランスを愛好していた。
大学生の頃から何度もフランスに旅行に行ったことがあったらしい。
結婚式の際、ビジネスマナーを完璧に身に着けた若干うさんくさい(→失礼)
声のとおった司会者によるナレーションで
結婚前にフランスに旅行に行った際のこんなエピソードが語られた。

「自分の大好きなパリを、まだパリに行ったことのない(将来の)奥様にどうしても見せたくて…」

普段着慣れないワンピースなどを着させられて、どうにも落ち着かない上に、ご祝儀のピン札が用意できずにずっとピン札まがいのしわしわの札を入れたことを気に病んでいた私と、
仕事にやつれつつも、いつもより髪がゴージャスな学生時代よりも痩せた友人は、
目を見合わせた。

仕事に疲れていた我々は、美しい奥様の満面の笑顔と旦那様の自信に満ちた風貌と彼らが旅行をした思い出のパリの写真に絶望していた。

あんなに美しく心優しい女性と結婚することになった、旦那様が羨ましかった(奥様ではなく旦那様が)。そのため、心がすさんでいた。我々はパリと新郎の関係性に毒づいて、自らの境遇の不満に対する溜飲を下げた。

「ところでパリを一目見せてあげたいって言ってるけど新郎は、ただの旅行者では!?」

「新郎のパリに対する目線、
 何やら、立ち位置が高すぎでは!?」

「新郎とパリの関係性が疑問すぎる!」

「新郎は一体どこから世界を見ているのか!?パリの、さらに上!?なんなら、浮かんでいるレベル!」

「彼はただの”ひとりの”日本人観光客でしかないのでは!?」

”パリ”との距離感…おかしくね?


ところで、
あの頃(20年前頃)は病んでいたので結婚式が苦痛でしたが、
結婚式に呼んでくれた皆さん、今更ながら人生の大事なパーティに呼んでくれて本当にありがとう。

ガチ鬱だったせいで、一部、結婚式すらもドタキャンをしてしまい、すみませんでした。鬱もなおったので、今ならもっと楽しめる気がいたします。結婚30周年パーティーとか開催したら呼んでください!今ならちゃんとピン札でご祝儀も用意できるので!30周年なんて、普通のひとはしないか!

いつまでも、お幸せに…!

以上です。

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