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試合観戦にプラスアルファの視点を。記録マニア・tassiyが掘り出す小ネタの価値。【柏レイソル】

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得点ランキングに代表されるように、私たちはサッカーを『データ』面からも楽しんでいるが、当然その裏にはデータを集計する人がいる。今回は柏レイソルサポーターであり、レイソルに関する記録やデータを発信し続けているtassiyさんに、『記録』や『データ』の面白さについて聞いた。

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【プロフィール】tassiy。柏レイソルサポーター。Twitterを通じてレイソルに関する様々な記録、データを発信。また、2004年に開設した『Tassiy’s Blog』では、16年以上にわたって記事を更新し続けている。Twitterアカウントはこちら。


取材班:tassiyさんといえば、柏レイソルを中心にJリーグに関する記録、データを事細かに発信されている印象があります。私たちは色々な角度からサッカークラブをサポートしている方を取材していまして、今回は『データ』面から色々なお話を聞かせていただきたいです!

tassiy:ありがとうございます。2001年に柏レイソルを初めて見て、今はブログやTwitterを通じてそうした発信をしています!


取材班:応援しはじめてからもう20年近くになるんですね!

tassiy:2002年の日韓ワールドカップをきっかけに観に行ったのが最初です。当時は残留争いの真っ只中だったのですが、あの日立台の雰囲気に魅了されてしまいまして。それからずっと応援してきて、本日時点でリーグ戦で272試合、公式戦だと340試合でした。ちばぎんカップやプレシーズンマッチをいれると357試合を観戦しています。


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取材班:(早速出てきた…!)こんなに細かくまとめてあるんですか…!


「調べるほど暇じゃない人」へ。


取材班:最近ですとレイソルの連勝記録やDAZNの契約者数をまとめられていましたが、とにかく手間のかけようがハンパないなと…。単刀直入にお聞きしたいのですが、ここまで詳しく調べ上げる原動力はどこにあるのでしょうか?



tassiy:なんでしょうね…。でもレイソルのことはもちろん、何か知らないことを調べて解説するのは好きかもしれません。あとは基本的に色々とストックしておくのは好きです。先ほどの観戦試合もそうですし、レイソルの記録関係はExcelにまとめてあって遡れるようになっています。


取材班:2001年にレイソルを見始めたとのことですが、記録の収集をするようになったのはいつ頃でしたか?

tassiy:当初はほとんど観戦記しか書いておらず、収集をするようになったのは2010年台に入ってからです。その頃、工藤壮人選手や酒井宏樹選手といったレイソルの育成の黄金世代がトップに融合し始めて、ユースに興味を持つようになりました。

すると「(当時最上位だった)プリンスリーグってなに?」「ユースの三冠ってなに?」といった感じで、知らないがゆえの疑問が色々と出てきまして。調べていくと「全国の8ブロックでプリンスリーグを争ってるのか」ってことが分かり、「じゃあ四国ってどこが強いんだろう」「中国地方って…」のように浮かんだ疑問を次から次へと調べていました。

あとは高校年代でも昇降格があるのを知ったので、その頃はよく「来年のプリンスリーグにどこが参入してくるのか」をまとめていましたね。そんな風に自分の興味あるものを深掘りすることが、発信を始めたキッカケになります。



取材班:ちょうどその頃、J1制覇も成し遂げました。

tassiy:そうなんです。2011年のJ1制覇でACLへの出場を決めるのですが、「来年のACLはどこが出るのか」「ACLの出場権ははどうやって決まるのか」「ベトナムリーグの1位ってどこなのか」「元Jリーガーがいるクラブは…」とまた興味が広がってしまって(笑)。でも自分の興味があることを調べてまとめると、ブログのアクセス数が比較的伸びたのもあり、継続的に発信していこうと思うようになりました。


取材班:それらは少しニッチなデータかと思いますが、観戦記よりもアクセス数がいいんですね!

tassiy:全然いいですよ!観戦記とは異なり、やりようによっては検索エンジンからの流入も狙えるので。例として、レイソルとはあまり関係がないですが、トゥーロン国際大会に関する記事を大会前に書いたところ、検索で1位になったこともあり、NHKで試合が放送されるたびにアクセスがとても増えました。「日本の出場したときの順位は?」「その時のメンバーは誰だったの?」とかを過去40年分調べてまとめた記事でした。



取材班:40年…(驚)。

tassiy:でもトゥーロン国際大会の公式サイトには全部載ってますし、毎年出ているわけではないですし、Google翻訳にかければ内容も分かるので。ちなみに日本は、まあまあ出ているのに優勝したことは一度もないんですよ。

…みたいなのを知りたい層は世の中にそこそこいて、でもそのほとんどが「自分で調べるほど暇人じゃないよ」という人だと思います。調べてくれてる記事があれば読むけど…って感覚の人たちの役に少しでも立ててたらいいなぁとは思っています。


サッカー界の井崎脩五郎に?


取材班:tassiyさんは『データ』の中でも、プレーには直接の関係がない類のものを多く取り扱っていますよね。

tassiy:いわゆる"ネタ"って感じですかね。サッカーというスポーツにおけるデータではなく、勝ち負けとか最年少とか、あくまでも統計上のデータが中心です。競馬の井崎脩五郎さんのようなイメージで、競馬の予想屋が喋るような雑学に近いと思っています。


取材班:井崎脩五郎さんのようなイメージといいますと?


tassiy:競馬の方なんですけど、くだらないデータをとにかく楽しそうにしゃべるんですよ。まぁ、楽しく紹介して予想して外れるまでが一つのパターンなんですけど(笑)。でもサッカーも、それと似た楽しさ・面白さでデータを扱える人がいてもいいんじゃないかなって。なるべく分かりやすく楽しく、「こういう視点もあるんだ!」ってデータを出せたらいいですよね。

こういうちょっとしたネタって、好きな人いると思うんですよ。別に知らなくても何の問題もないけど、知っていると面白かったり酒が進んだり、そういうものを扱っている認識です。



取材班:どれも周りに共有したくなるというか、試合で注目するポイントが増えていくイメージです。やっぱり発信する側として、そうしたニーズを感じることはよくありますか?

tassiy:スタジアムでレイソルの試合を見ていると、「この試合でこういう記録がかかってるらしいよ」って明らかに自分のツイートを見て喋っている人に遭遇することがあります。それを聞いてちょっと喜ぶ、みたいなことはあります(笑)。


取材班:普通に見ていたら気づかないような視点を意識しているんですね。

tassiy:いちサポーターである僕が見れるものは限られていますし、最近はJリーグも力を入れているように感じます。達成間近の記録を一覧でチェックできたり、スタッツ系のデータを特集する記事も増えてきた印象です。

その中でも周りが気づいていないところを気づけると、僕としては嬉しい(笑)。例えば「Jリーグ通算100試合」は目に触れやすいですけど、「柏限定で150試合」とかは「知らん!」って話なので、そういうところは気づけるようにしています。



取材班:それに気づけることがすごいです…。

tassiy:通算試合、通算得点、年齢など、一定のパターンはあります。若い選手が点を取ったりすると「この選手のゴールって…」って考えて調べていることが多いです。

あとは観客動員数も毎試合発表あるので気にしていますね。日立台は15,109人が公式のキャパなんですけど、14,000人を超えることはほぼなく、13,000人を超えると観客動員数のトップ30を争えるくらいになります。なので13,000人を超えると、「今日はかなり多いはずだから家に帰ったら調べよう」ってなります。



取材班:お話を聞いていて気づいたのですが、「今日は〇〇な試合です」って発信をtassiyさんがすることで、柏レイソルにとって見逃されていたかもしれないメモリアルな瞬間が一つずつ認識されていくわけですね。

tassiy:これからもっともっと増えると思います。もし仮に、その日はじめて日立台に来た人がいたとして、試合には負けたとしても「100試合でこういうイベントがあって楽しかった」「あの人はこんな記録を達成したらしい」といった部分で惹かれるかもしれません。もちろん既存のサポーターに対しても同様で、選手やクラブのメモリアルな瞬間を作る努力はどんどんやっていくべきだと思うんですよ。


取材班:なにか"仕込んでいる"ものはありますか?

tassiy:今年12月のセレッソ戦以降の試合で、大谷さん(大谷秀和選手)が出ればレイソル歴代最年長出場記録になるので、個人的にはそれを喜ばしいこととして見ていたいなと。更新となればカレカ以来約25年ぶりなんですよ!公式も取り扱うと思うので、いつくらいから仕込もうかって今考えています(笑)。


取材班:クラブ公式からはもちろんですが、サポーター間でも情報を発信していくのはすごく大事なことだと思います!

tassiy:都心部のクラブは地元メディアを持っていない分、クラブの情報に触れる機会が少ないと思うんです。例えば仙台だと河北新報や宮城テレビがあり、夕方のニュースや特集を通じて情報を受け取れますが、都心部になるとクラブか番記者が発信するくらいしか、情報に触れられないですよね。でも番記者の情報は有料だったりするので、1週間なんの情報もないまま試合に行く可能性もあって、本当にそれでいいのかな?とは感じます。

だからこそ、「情報に触れてもっとレイソルを好きになる」という部分の助けになれたら嬉しいです。「ニュースで見て好きになりました!」レベルの発信力はないですが、レイソルをもっと好きになれる情報としてお役に立てればいいなと思います。


取材班:事前情報があるとないとでは、試合に対する入り込み方にも差が出てしまいそうです。

tassiy:この間ラグビーのワールドカップがありましたが、「アイルランドはこういうチームです」「ラグビーではこういう応援をします」「日本はこういう戦いをします」などの情報を受け取ったおかげで、ラグビーが非日常である自分でも楽しめた部分がありました。そう考えると、柏レイソルを初めて見に来る人にとっても非日常なわけで、それなりには情報を届けた方がいいのかなと。自分たちにとってJリーグは日常ですが、もっと色々なところで非日常な人のことも考えられたらな、と思います。


印象か、事実か。


取材班:tassiyさんが発信されているデータは、色々な事実の証明にも使えると思います。私たちはついつい印象で語ってしまいがちですが、数字で証明できるものはなるべくそのプロセスを踏みたいですよね。

tassiy:ここ1年くらいで変わってきた印象はありますが、もともとJリーグ公式や取り上げるメディアがデータに対してぞんざいな印象は持っていましたし、僕としては間違った発信があるとつい訂正したくなってしまうのですが、印象論のせいで誰かが損をするのはあまりよろしくないかなと。


取材班:特に愛するクラブやその選手たちに対しては、印象だけで悪い方向に語られたくない想いが強いのではないですか?

tassiy:そうですね。データを用いるときの注意点は、前提条件を確認することだと思っています。ひとえに「対戦成績」と言っても、リーグ戦だけなのか、カップ戦も含めているのかとか、条件を調整するだけで都合よく見せることもできますからね。

でも読者側にそんな定義は分からないじゃないですか。だから気になったものはなるべく自分で洗ってみることにしています。

あと実はサポーターの発信に対しても同様で、間違っている人がいると訂正した方がいいかもなぁと一人葛藤しています(笑)。でもぐっとこらえて、ほとぼりが冷めたタイミングで気づかれないように投稿する、そうした些細な訂正を行っています(笑)。


取材班:サポーターの会話はSNSでも盛んに起きていますし、事実ではない情報が一気に広まる危険性もあります。

tassiy:「この監督は全然勝てなかった」とレッテルを貼られている人が、他の歴代監督と比較したら意外と良い成績だった、なんてこともあります。もちろん勝率には表れない部分もたくさんありますが、データを用いて語れそうな話はなるべく伝えていきたいです。

今年で言えば、川崎がめちゃくちゃ強い。でも「34試合制になって以降、シーズンの半分消化時点で1位だったクラブはどのくらい優勝しているのか」とか、「半分経過時に一番勝ち点を取っていたクラブはどこだったか」とかって、メディアの人以外は調べにくいです。自分は柏中心ではありますが、そういった手の届きにくい部分を調べて発信していきたいです。


取材班:以前審判に対するツイートをされていましたが、そういった狙いもあったんですか?



tassiy:審判って印象が先行しがちですよね。「この主審相性悪いから最悪だー」って論調がネット上にあって、でも「確かこの主審って勝率良かったんじゃ…」って思って調べたら勝率はむしろ良かったんですよ。たまたまその方が見た試合で間違った判定があったとか、レッドカードが出て負けてしまったとか、悪い印象が残っていただけだったんですね。

審判としてのパフォーマンスと勝率に相関関係はないですが、「なんか相性悪そう」と間違った情報で思われてしまうのは可哀想で。ただ全てを事実に基づいて発言するのは無理なことですし、こうした個人の発言に責任はないでしょうから、私は直す側にいければいいのかなと。


プラスアルファの存在に。


取材班:せっかくなので、柏レイソルに関する注目のデータがあれば共有していただけますか?

tassiy:すぐには出てこないな…(笑)。あっ、そういえばレイソルの公式戦で通算100点以上とっている選手っていないんですよ。ルヴァンやACLを入れても100点は0人。現在の1位は工藤くん(工藤壮人)で92点。クリス(クリスティアーノ)が81点で2位なんですけど、怪我をしてしまって今年中は厳しいかな…という感じで。でも近々到達しそうです!


取材班:そうした記録に近づいていると知るだけで、見方がちょっと変わりますよね。あとは「3位は誰なんだろう…」って話も広がりますし。他に、データ面から見て印象的だった選手はいますか?

tassiy:大津祐樹選手ですかね。海外から帰国して2度在籍しているのですが、実は2009年を除いてレイソルではほとんど点を取れていません。合計14点ですかね?でもサポーターからはめちゃくちゃ愛されていて、ある意味ギャップがあった選手でした。オランダでアキレス腱を切っちゃったのですが、全盛期のスピードがあればかなり活躍できたはずです。


取材班:へぇ~意外でした。データを通じてサッカーを語るのも面白いですね!

tassiy:調べたい時にここに来たら大概載ってる、みたいなサイトがあればいいなと思います。データ系の情報発信をするメディアがあっても面白いですし。あとは各クラブ、自分みたいなデータ好きな人は何人かずついるはずなので、そうした人たちと話せたら楽しそうですね。


取材班:tassiyさんのレイソル愛、データ愛が伝わってきました。これからも発信活動を応援しています!

tassiy:自分なんかで良かったんでしょうか?(笑)。でもこういった発信を続けることで、レイソルへの愛はたしかに深まりました。今は「深まる」というより、「維持する」の意味合いが強いかと思います。たぶんレイソルの公式サイトを自分以上に見ている人はいないと思いますし(笑)。

あくまで、データはアディショナルなものであり、付け足す情報として提供していきたいです。もしそれが誰かの役に少しでも立っていたら嬉しいです。

【了】

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