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きっかけは7年前の"お手振り"。あの日、西川周作を、ゴールキーパーを、応援する人生が始まった。

プレー中に唯一手を使っても良いことから、ゴールキーパー(GK)はサッカーにおいて特殊とも言えるポジション。GKを応援するサポーターはどのような点に魅力を感じているのだろうか?と考えたわたしたちは、浦和レッズの西川周作選手を応援するれいなさんに話を聞きました。

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【プロフィール】れいな。浦和レッズ、西川周作選手のサポーター。サッカー観戦初心者だった2014年、埼玉スタジアム2002で見かけた西川選手の振る舞いに惹きつけられたことをきっかけに、同年にユニフォームを購入。以降は日本国外を含め、西川選手が出場するたくさんの試合に足を運んでいる。Twitterアカウントはこちら。

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試合後の埼スタで目を引いた行動。


nest:れいなさんは西川選手を好きになる前からサッカーがお好きだったのですか?

れいな:いえ、実はサッカーは全然見に行ったことがなくて、それまではディズニーに年パスで通うような人だったんです。夫がもともとサッカーをやっていたので、代表戦を見ることくらいはありましたが、サッカーへの興味はほとんどありませんでした。


nest:そこからどういう流れで西川選手を知ったのですか?

れいな:友人に誘われて初めてレッズの試合を見に行ったのが、2014年のホーム開幕戦。西川選手がサンフレッチェ広島から移籍をしてきて、レッズの選手として埼スタのピッチに立った最初の試合でした。

結果は勝てなかったんですけど、友人から「勝ったときはすごく良い雰囲気になるからまた来てほしい」と言われ、何回か行っているうちに、試合後にお客さんに手を振っている選手がいることに気づいたんです。それが西川選手でした。お客さんに手を振っているところが素敵で、応援したいなと思った夏頃にはユニフォームを買っていました(笑)。



nest:最初はプレーではなく、振る舞いから滲み出る人間性に惹かれたと。

れいな:そうですね、サッカーの知識がまったくない私には、誰が上手いか正直よく分からなかったので…。自然と選手の振る舞いに注目していたのかもしれません。


nest:すぐにユニフォームを購入されたとのことですが、注目し始めてからガッツリ応援するまではあっという間だったのですか?

れいな:1年目はそこまですごいファンではなかったと思います。2年目に初めて大原サッカー場(練習場)に行き、そのときに本人とお話をしてから一気にハマっていった感覚があります。


nest:その場ではどんなお話を?

れいな:その日は西川選手の誕生日だったこともあり、ちょっとしたお手紙を渡して「応援してます」と伝えたくらいで、これといったお話はしていないのですが。でも「憧れの人が目の前にいる!」って感じでテンションは上がりましたね。そして何より、対応がとても丁寧でした。ピッチで見る西川選手と同じで、一人ひとりの目を見て「いつもありがとうございます!」って答えていました。


nest:応援をしていく過程で、西川選手の魅力を他にも見つけることができましたか?

れいな:サポーターに対して優しいのは分かってましたけど、いつも前向きなところが素敵だなと思います。私は西川選手のネガティブなコメントをほとんど見たことがなくて、不甲斐ない試合をしたとしても、必ず次に繋がるコメントを出しています。

試合中も同じで、GKにとってはノーチャンスの失点もあるとは思うんですけど、どんな失点でも絶対に人のせいにしないというか、「自分だったらどう改善できるかな?」をいつも考えているのが魅力だと思います!


nest:GKのプレー機会はあまり流れがよくない時に増えると思いますが、そういう時にポジティブな声かけがあると、チームとしても大きい気がします。

れいな:西川選手が怒っているところはあまり見ないですね。「そのプレーはダメじゃないか!」っていう怒り方はしていない思います。まわりを勇気づける声掛けが多い印象です。

最近だと柴戸海選手がミスをして相手にCKを与えてしまった時に、「大丈夫大丈夫!」って感じで声をかけているのをスタジアムで見ました。チームの士気が下がりそうなときに「大丈夫だから!」って声をかけられるのは素敵だなぁと思います。


nest:現在、西川選手に関するグッズはどのくらい持っているのですか?

れいな:これね、数え切れないんです…(笑)。有り難いことに色んな人からいただいたりして、収拾がつかなくなっています。ガチャガチャとかユニフォームとか、等身大パネルもあります。あとはキーパーグローブとか…。


nest:等身大パネル、ですか?(笑)

れいな:2015年に『We are REDS! THE MOVIE』という映画を上映する際に、浦和パルコで展示されていたものを抽選で当てたんです。その日はパネルと一緒に電車に乗って帰りました(笑)。

パネルの活用方法は…活用はできていないけど部屋に置いてあります。一応、家の守り神として活用しています。一回大原に持っていったことがあって、「サインください!」とお願いしたらすごくびっくりしていましたよ。

今度500試合記念グッズも届くので、また増えちゃいますね。記念ユニフォーム、キーグロ型ミトン、お守りなどなど…。


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GKを応援する楽しさ


nest:GKのプレーってすごく細かいというか、経験者じゃないと分かりにくい部分が多分にあるポジションだと思うのですが、れいなさんは西川選手のプレーのどんな魅力を感じていますか?

れいな:正直細かいところは全然分からないですけど、セーブするところが直感的にすごくかっこいいと思っています。絶体絶命のピンチに身体を張ってゴールを死守するのが、ヒーローのようだなと。


nest:「好きなセーブ」とかってあるんですか?

れいな:私は1対1を止めるセーブが好きです。だって大ピンチじゃないですか!スタジアム全体が「やばい!」ってなって、ゴールは隙間だらけ、そこで前に出ていってチームを救うのがまさに「ヒーロー」です。あとはPKを止めるのもかっこいいですよね。

西川選手のプレーで一番記憶に残っているのは、2016年のルヴァンカップ決勝。それまで3年間PKを止めたことがなかったのですが、PK戦で相手の5人目を止めてチームを優勝に導いた試合です。PKを止めた時点では優勝は決まっていませんでしたが、すでに泣いていました。


nest:チームとしてはピンチは少ないほうがいいですが、GKを応援する身としては…。

れいな:そこが複雑なんですけど、でも全部止めてくれると信じています。逆にピンチがなさすぎると、申し訳ないですが「なんかつまんないなー」ってなるので(笑)。

「どうせピンチでも止めるから大丈夫!」って思って見ています。GK好きは、好きな選手が活躍しているところを見たいと思うので、ちょっとピンチがあったほうが嬉しいのかなと…。


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nest:れいなさん的に、パーフェクトな試合ってどんな展開ですか?

れいな:たくさんセーブをして、無失点で勝ったとき(笑)。やっぱり無失点で、その中でもなんとか守りきった時が一番嬉しいですね。レッズのホームゲームでは、GKが好セーブをすると、オーロラビジョンに文化シヤッターさんのシャッターが降りる演出が映るんですけど、文化シヤッターさんの演出がたくさん出た日は嬉しいです。


nest:逆にピンチが少ない試合もあると思うのですが、そういう時はどんな楽しみ方をしているのですか?

れいな:セーブ以外だと、味方がゴールを決めた瞬間はシャッターチャンスです。ゴールを決めた選手にカメラが向きやすいですが、GKも一人でガッツポーズをしていたりするので、西川選手が味方のプレーに喜んでいる姿をカメラに収めたりもしています。

あとGKは、試合中にストレッチをしていることがあります。西川選手は、私が見始めてからほとんど怪我らしい怪我をしていなくて、もしかするとそういった細かいケアが怪我を防いでいるのかな、って考えたりもします。スキマ時間を有効に使っているというか(笑)。急に動くポジションだと思うので、その時に怪我をしないように気をつけているのかなって勝手に想像しています。


nest:ちなみに、れいなさんはGKを体験したことがあると聞いたのですが。

れいな:人生で3回あります。1回目は小学校の体育の授業、ほとんど遊びでしたけど、サッカーを習っている男子のシュートを止めたことがすごく快感でした。その時からGKっていいなと思っていたのかもしれません。


nest:自分の経験上、体育の授業のGKは誰もやりたがらなかった気がします。「痛いからイヤ!」って避ける人が多かった記憶が…。

れいな:私は走るのが得意じゃなかったので、フィールドプレイヤーだと疲れちゃうと思って。向かってくる敵を倒すほうが自分には向いていたんです(笑)。

大人になってからはフットサルでGKをやりましたけど、「フットサルですらこんなにゴールが大きいのに、なんで1人で守らなきゃ!?」って気持ちになったことを覚えています。シュートはどこに飛んでくるか分からないし、点を決められる気しかしなくて。プロってすごいなって思いました。


nest:実際にGKをやってみることで、西川選手の見え方が変わりましたか?

れいな:想像以上にGKって難しいんだなと。味方にパスを出すにしても、どこにどう出したらいいんだろう?とか、自分でやってみると大変さがより分かりました。あとはシュートに対しても、ポジショニングがちゃんとしているから止められることを知りました。


nest:あらためて、GKの魅力ってどういうところにあると思いますか?

れいな:繰り返しになりますが、チームを救ってくれるヒーローのような存在だと思っています。チームが劣勢でも、たった一つのスーパーセーブで一気に流れを変えることができる。だから唯一無二のポジションというか、キーパーにしかできない役割が魅力だと思います。

西川選手の場合はキックも素晴らしいです。ビッグセーブしたあとにキックでチャンスを作り出せるのは、西川選手にしかできないことだと思います。その印象が強いので、西川選手=キックが上手いって言われることが多いのですが、セーブも上手いんですよ!ってのは伝えたいです。


nest:GKはユニフォームも特徴的ですよね!

れいな:新しいシーズンになると、サポーターはユニフォーム発表にワクワクすると思うんですけど、GKだけは「何色かな?」って楽しみがあります。私は昨シーズンのエメラルドグリーンが好きですね!


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自分の言葉で、気持ちを伝えてくれる。


nest:西川選手を応援している中で、何か印象的な出来事はありましたか?

れいな:やはりファンサービスです。浦和レッズはファンサービスの日を設定していて、練習場へ行けば選手と写真を撮ってもらったり、サインをもらえたりします(現在は休止中)。その分ファンサービスの日は長蛇の列ができるのですが、西川選手はいつも他の選手に追い越されてしまうくらい、最後まで一人ひとり丁寧に対応しているのが印象に残っています。

去年、選手から動画のメッセージをもらえるリターン付きのクラウドファンディングがあり、私は西川選手を一緒に応援している友人と寄付をしました。内容としては、サポーターが考えたメッセージを選手が言ってくれるものだったのですが、西川選手からの動画は全部アドリブだったんですよ。


nest:それは嬉しいですね!

れいな:まさか自分の言葉で喋ってくれるとは思わず。しかも一人ひとりの名前まで呼んでくれて、「みなさんの顔は覚えています」とも言ってくれました。もともと30秒だったはずの動画だったのに、西川選手のアドリブメッセージが2分以上続きました。本当に感激して涙が出ちゃいましたね。ここまでやってくださる選手は、決して多くないと思います。


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nest:そのような素敵な選手を応援する中で、れいなさんが西川選手から何か影響を受けたことはありますか?

れいな:西川選手は「笑門来福」を座右の銘にしていて、それを聞いてから私も笑うことが増えました。笑えばいいことが起きるかなって。ちょっときついなと思っても、とりあえず笑ってみようかな、とりあえず楽しんじゃおうかなってメンタルでいるように心がけています。

あとは家族を大事にしている選手で、理想的なパパをやっているように見えるので、私自身もより家族も大事にしようって思うようになりましたね。


nest:西川選手が常にポジティブな影響を周囲に振りまいているように、サポーターとして、その道で成功している選手から学べることはたくさんありますよね!

れいな:試合に負けたあとでも客席に手を振っていることを「どうなの?」って思う方もいるかもしれないですが、西川選手にとっては試合は試合、試合後は来てくれた人へ感謝の気持ちを伝える場だと捉えているのだと思います。

お客さんとしては、試合後に暗い顔をして歩かれてもどうしたらいいかわからないので…。ボロ負けをした日の笑顔はさすがに暗めですけど、「来てくれてありがとう」って手を振ってくれたりすると、私は「次も頑張ろうね」って思えるので、個人的には続けてほしいと思っています。


nest:その振る舞いがなかったら、れいなさんが今サッカーを好きかどうかは…。

れいな:そうなんですよね。その日初めてくるお客さんもいると思うので、「あの人こっちに手を振っている!気になる!」っていう私みたいな人が現れるかもしれないですし(笑)。


nest:選手が手を振ってくれるのって、お子さんにも良い影響があるのではないでしょうか?

れいな:コロナ禍以前は、大原では抱っこをしてくれたり、スタジアムではピッチに近いところに座ると手を振ってくれたり、ときには名前を呼んでくれることもあります。娘はとても喜んでいて「周ちゃんがね、名前を呼んでくれたの」って嬉しそうに言ってくるんです。

子どもながらに、選手が自分に対して応えてくれたのを分かっていると思います。いつか一緒にサッカーをしてくれる機会があればなぁ、なんて思っています。


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nest:試合後に名前を呼んでくれるんですか!

れいな:結構近いところまで来てくれて、◯◯ちゃーん!って呼んでくれます。ユニフォームを着させているので見た目でわかりやすかったり、小さい子だからってのもあるかとは思いますが…。


nest:れいなさんには、西川選手を好きになったことで得たものが多くありそうですね。

れいな:まずは、西川選手を応援しているサポーター仲間に出会えたこと。試合も一緒に見ますし、プライベートでもディズニーに行ったりご飯を食べたりと仲良くさせてもらっています。


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あとはアウェイの地まで応援しに行くようになったのが変化かなって思います。W杯アジア最終予選に西川選手が出ている時に、アウェイまで応援しに行こうと思って、タイまで足を運んだこともありました。大分にも2回行きましたし、おかげで色々な街のいいところを知れました。


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シャーレを掲げる姿が見たい。


nest:西川選手の「伝わりきっていない魅力」はありますか?

れいな:地元の大分県を大事にしているのは皆さんご存知かと思うのですが、浦和の街もすごく大事にしていることをアピールしたいです!

最近では病院にマスクを寄付していましたし、私がよく行く浦和のお寿司屋さんにも西川選手のユニフォームが飾ってあります。西川選手のユニフォームが飾ってあるお店は、私が知る限りでも浦和の街に何件もあって。好きなお店にユニフォームを渡したり、SNSでも「この店好きです!」って紹介したりしていて、浦和の街を盛り上げようとしている気持ちがすごく伝わってきます。


nest:サイン入り色紙や写真はよく見ますが、背番号の入ったユニフォームが飾られている店ってあまり見ないような気がします。

れいな:私も、ユニフォームってあまり渡していないと思うんですよね。それだけ大事にしてくれているのかなって感じます。

それから、コロナ禍で浦和レッズがクラウドファンディングをしていたのですが、寄付した人の名前の中に「西川周作」があったんです。「もしかして自分で寄付している?」と思って、これは本人に聞かないとわからないですけど、浦和のことを大事にしてくれているのは嬉しいです。


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nest:最後に、今後のことについていくつかお聞きしたいです。最近はスタメンから外れてしまう試合もありますが、れいなさんはどのように感じていますか?

れいな:「まさかいま?」っていう感じは正直あります。福岡戦でミスをしたのは知っていて、でもその前の大分戦では良いプレーを連発していたので、ここで変えられるとは思っていなくて…。

ただチームにとって若い選手が出てくるのはいいことだと思いますし、西川選手はこの状況でもポジティブに考えている人なので、競い合ってより強くなろうと思っているはずです。またスタメンに戻ってきてくれると信じています。


nest:試合中はどんな思いで西川選手を応援していましたか?

れいな:なんだか複雑な気持ちでしたけど、給水タイムでも自ら進んで仲間にボトルを渡していたり、積極的に声掛けをしているのを見て、やっぱり流石だなと。本人の中に悔しい気持ちはある中でも、チームを支えている姿勢を見て、素敵な人間性の部分を再確認できて安心しました。



nest:サポーターとして、今後の西川選手のどういう姿を見ていたいですか?

れいな:鈴木彩艶選手と競い合ってもっと強くなってほしいですし、代表の場でも活躍してほしいです。でも一番欲しいのはJ1優勝ですかね。残りの現役生活でシャーレを掲げる姿を見たいです!


nest:最後に、この場を借りて西川選手に伝えたいことはありますか?

れいな:本当に感謝しかなくて、西川選手がいなかったらサッカーに興味を持つこともなかったし、共通の趣味を持つ仲間とも知り合えませんでした。人とのつながりを作ってくれたことに感謝をしています。

私は西川選手のおかげでサッカーの楽しさを知って、今も楽しくサッカーを見れています。これからも応援させてください!


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【了】


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