見出し画像

愛する選手たちを、より近くで後押し。V・ファーレンアカデミーの応援が私の生きがい。


Jリーグの各クラブには育成年代となる『アカデミー』があり、選び抜かれた選手たちがトップチームへの昇格を夢見てサッカーに打ち込んでいます。そのピッチにはトップチームとひと味違う魅力が存在し、足しげく応援に通うサポーターがたくさんいます。今回はV・ファーレン長崎のアカデミーを応援し、SNS『V・ファーレン長崎アカデミー(非公式)』で情報発信をしているしげぺんさんに話を聞きました。

画像5

【プロフィール】しげぺん。V・ファーレン長崎アカデミーサポーター。2013年よりV・ファーレン長崎を応援するようになり、友人からの誘いをきっかけにアカデミーの虜に。2017年より、Twitter『V・ファーレン長崎アカデミー(非公式)』を運用を開始。同様にInstagramも開設し、アカデミーの情報発信を精力的に行っている。

・V・ファーレン長崎アカデミー(Twitter)
・V・ファーレン長崎アカデミー(Instagram)
・しげぺんさんTwitterアカウント

取材日:2021年5月1日(土)



「これは面白い!」


nest:まず始めに、しげぺんさんがV・ファーレン長崎アカデミーに興味をもったきっかけを教えてください!

しげぺん:もともとサッカー観戦は好きで、Jリーグが開幕した1993年くらいから試合を見ていました。V・ファーレンを見に行くようになったのは2013年のJ2昇格初年度、ホーム開幕戦でした。その後は試合を見つつ、主にマスコットのヴィヴィくんを追いかけていまして。アカデミーに行くようになったのは2016年の夏、U-18の試合がきっかけです。

その前から、アカデミーの試合をいたサポーター仲間から「ユースはいいぞ?」と言われていたので、一度見てみたいとはずっと思っていました。そして実際に1試合見て「これは面白い!」と思い、そこから一気にハマっていったんです。


nest:どんな部分に面白さを感じたのでしょうか?

しげぺん:まず、やっているサッカー自体がすごく面白かったです。当時の監督は原田武男さん、原田さんは現在もU-18を率いているのですが、その時から攻守一体というか、とにかく切れ目がないようなサッカーをされていて、そこに惹かれた部分は大きいです。

それから、自分はもともとサッカーをじっくり見ていきたいタイプなので、「あの選手はああいうプレースタイルで、この選手は…」と、初めて見た選手を覚えていきたい気持ちを刺激されました。トップチームと違ってみんなが知られているわけではないので、「アカデミーにはこういう選手がいるぞ」と広めていけたら面白いんじゃないか?とも思いました。


nest:2016年の夏に初めて試合を見たあとは、トップチームの応援とアカデミーの応援をどのように両立していったのでしょうか?

しげぺん:翌年から、地元で開催されるアカデミーの試合はほぼ全部行くようになりました。トップチームからアカデミーに一気に引き寄せられた感じです。2017年には、優先順位の一番目にアカデミーが来ていました。私は一つのことにハマっちゃうと、とことん行くタイプなので、どんどん行ってしまいました(笑)。


nest:最初は、やっているサッカーに魅力を感じたかと思いますが、ハマっていく過程でアカデミーを応援する他の魅力に気づくことはありましたか?

しげぺん:試合のことをツイートすると、選手が反応してくれるのには新鮮さを感じていました。そこから徐々に選手とのつながりが出てきて、応援のしがいが増していきました。あとは物理的にも心理的にも距離が近いのは魅力だと思います。ピッチ上の興奮がダイレクトに伝わってきますし、試合後も目の前まで挨拶にきてくれますし、勝利後はトップチーム同様に『カンターレ』を一緒にできるのも楽しいです。




選手たちに、より感情移入できる。


nest:しげぺんさんは、2017年4月からTwitter『V・ファーレン長崎アカデミー(非公式)』での情報発信を開始し、その後はInstagramを開設されました、アカデミーのサポーターの中でも情報発信専用のアカウントを運営されている方はあまり多くないのかなと思います。


画像1


しげぺん:自分のTwitterアカウントにはアカデミーに興味のないフォロワーさんもいたので、思う存分つぶやくには専用のアカウントを作った方が良いかな?と考えたのがきっかけです。活用方法としては、試合の告知・実況や、卒業生の進路先での情報をシェアなどをメインにしています。最初はTwitterだけだったのですが、選手はInstagram好きが多いようだったので、途中から両方やるようにしました。




nest:アカウントを立ち上げて良かったことはありますか?

しげぺん:V・ファーレンのサポーターさんからコメントをいただくと励みになります。特に2019年に九州クラブユース選手権で優勝したときはたくさんの反応があって、私が優勝したわけではないのにものすごく嬉しい気持ちになった思い出があります(笑)。

ハッキリとした実感はないですが、このアカウント運営することで、アカデミーの存在がサポーターさんに浸透する助けになっているかなとも思います。試合を告知したツイート見て、会場まで行った方もいらっしゃるようなので。


nest:トップチームとアカデミーで、応援にあたってのスタンスの違いはありますか?

しげぺん:無意識的に、アカデミーの方が感情は入りやすいかなと思っています。子どもたちは私のことを知ってくれていますし、私はみんなの頑張りを知っている分、「報われてほしい!」と思いながら応援しています。厳しいことは監督さんとかスタッフさんにお任せして、私自身はとにかくポジティブな声をかけ続けていきたいです。サポーターとしてはたとえ負けても「次勝とう!」と励まして、拍手をすることを心がけています。


nest:「頑張りを知っている」とは、具体的にどういうことでしょうか?

しげぺん:クラブユース選手権で負けて、全国にいけなかったときの悔しさから涙している選手を見ることがありました。勝てなかったときの雰囲気や選手としての感情を見ることができるので、報われてほしいと心から思いますし、そうした苦労を乗り越えて勝利したりすると、私まですごく嬉しくなります。他にも、試合がうまくいってないときのハーフタイムに監督の雷が落ちるのが聞こえてきたり、実際にそれをきっかけに変わっていったようなシーズンもありましたね!


nest:トップチームも選手の入れ替わりが毎年あるとはいえ、アカデミーは1年ごとにチームの1/3が入れ替わり、U-18だと最大で3年しかプレーできない制限があるのも特徴かなと思います!

しげぺん:限られた期間しかプレーできない中で、なかなか試合に出られず苦労する選手もいます。いまは阪南大学でプレーしている中野亜嵐という選手がいるのですが、彼は高校2年生までAチームでの出場機会に恵まれませんでした。その中で3年生として迎えた日本クラブユース選手権の1回戦で、ついにゴールを決めたんです! たった1つのゴールでも、本人にとっていかに大きなものだったかが分かりましたし、自分のことのように嬉しくなりました。3年間を追いかけているからこそ得られる感情なのかなと思います。


nest:3年間を通じて、選手の変化を感じ取ることができるのですね。

しげぺん:身体も一気に大きくなる年代ですし、プレー面もどんどん良くなっていくのが目に見えて分かるのは楽しいです。


nest:外からの補強がほとんどない分、選手がシンプルに成長して強くなっていくチームを追いかけるのは、Jリーグの応援とはまた違った魅力になるのかもしれないですね! 

今のV・ファーレン長崎はU-18出身の江川湧清選手が出場機会を伸ばしていますが、アカデミー時代から見てきた選手がトップで活躍している姿を見るのは嬉しいのではないでしょうか?

しげぺん:この間の東京ヴェルディ戦でやっと、トップチームで試合に出ている姿を観れたんですよ。思わずジーンときてしまいましたね。彼とは一応面識があって、U-18時代から気さくに話しかけてくれていたので、トップチームでクラブを背負って試合に出ていると誇らしい気持ちになります。

私がアカデミーから追いかけていた選手がJリーグに出場するのは彼が初めてなので、歴史が始まったというか。そういう感慨深さはありますね。


画像3



応援のやりがいと、"発掘"を楽しむこと。


nest:しげぺんさんがアカデミーを応援し続けられるのはどうしてだと思いますか?

しげぺん:一つではないと思いますね。サッカーが好きな自分、V・ファーレン長崎が好きな自分、地元長崎が好きな自分、発信が好きな自分、アカデミーの選手たちとのつながり、アカデミーの応援には自分のやりたいことが凝縮されています。


nest:これまで長い間サッカーを観てきた中で、ここまで距離の近い人を応援する経験はありましたか?

しげぺん:なかったんですよ。だから「応援ってこんなに楽しいんだ!」って思いましたね。近くで見るから分かることもありますし、自分にとっては選手たちから「ありがとうございます!」と感謝の声をかけてもらったり、認識してもらえていることも新鮮でした。

偉そうに聞こえていたら申し訳ないのですが、アカデミーを応援している人が少ない現状、SNSの発信も応援も「自分だからできている」と思える部分があります。もともとハマりやすいタイプだとは冒頭でも申し上げましたが、自分はあまり人のやらないことをできるタイプなので(笑)。


nest:まだまだ開拓されていないフィールドだからこそ、自分にできることの余地が残っている感じですよね。自分も海外のサッカークラブで同じようなことをやっているので、その気持ちすごく分かります。

しげぺん:そうです、そんな感じです。ただ、もっと知ってもらえたらいいなとは常々思っていますよ!


nest:では、V・ファーレン長崎のサポーターにアカデミーの魅力を広めるとしたら、しげぺんさんはどのようにPRしますか?

しげぺん:まず試合が面白いことは声を大にして言いたいです。単純に迫力があり、あの選手上手い!って視点でも楽しめますし、戦術的に見るにしても十分面白いと思います。実際、トップと遜色ないくらい試合が面白いと言ってくれる方もいました。スタジアム全体の熱気はJリーグよりも劣りますが、試合としての面白さは同等であることをアピールしたいです。

それから、「この選手はトップに上がれるかもしれない」って選手を見つけて追いかけられるのも、アカデミーならではの魅力です。実際に昇格したときに、「自分はあの子を見ていましたよ」って自慢できますよと(笑)。


nest:まるで自分が育てたかのような感覚になれるんですね(笑)。しげぺんさんが今後、「あの子を見ていましたよ」と言いたい選手はいますか?

しげぺん:いま2種登録されている安部大晴選手ですかね。年代別の日本代表候補にも入っていて、私は彼が中1の時からプレーを見てきました。トップチームのキャンプにも参加していて、サポーターから上手いって評価を受けているのを見ると、「ありがとうございます!」って感覚になります(笑)。

それから、今年U18に上がったばかりの高校1年生、池田誉選手は大注目です。ものすごいスピードがあるFWで、トップ昇格候補になるくらいの可能性を感じています。期待している選手を一人ひとり紹介すると止まらなくなるので、この辺りにしておきましょう…。


nest:面白い試合を楽しめて、そこで発掘した推し選手がトップチームで活躍する姿を見れるかもしれないなんて、なんだかすごくロマンを感じます!

しげぺん:クラブも地元の選手を獲得したいと公言していますし、私としてもアカデミー育ちの選手が活躍している方が、より郷土愛をくすぐられる部分はあります。そういった意味では、アカデミー出身の選手が躍動している今のサガン鳥栖は羨ましくもあり、嬉しくもありますね。


nest:しげぺんさん自身、V・ファーレン長崎のサポーターにもう少しアカデミーを注目してほしい気持ちはあったりするのでしょうか?

しげぺん:ちょっと前までは思っていましたが、今は江川選手がトップチームの試合に出ていることもありますし、今年は『Jエリートリーグ』にアカデミーの選手が出ているので、必然的に注目度が上がる流れがきています。自分自身としては、いまやっていること(SNSでの告知活動)以上のことはなかなか難しいので、あとは選手たちに頑張ってもらえるよう応援していきたいです。


nest:ちなみに、アカデミーの現状はどういった感じなのでしょうか?

しげぺん:(取材当時)松田浩さんがアカデミーダイレクターになって今年で4年目になります。松田さんのゾーンディフェンスのやり方をすべてのカテゴリーに落とし込んでいるので、年代を超えた統一感があるんですよね。

今はそれが形になり始めているところなので、かなり期待をしています。U18チームとしてはプリンスリーグからプレミアリーグに、U15チームは県リーグから九州リーグに、それぞれカテゴリーを上げるのが目標になっていますので、そこに行けるように応援していきたいです。



アカデミーの応援が生きがい。


nest:アカデミーの応援は、今やしげぺんさんの生活の中心になっているかと思いますが、コロナ禍の現在はどんな感情で過ごされているのでしょうか?

しげぺん:なんというか、一番大事なものを奪われている感覚です。アカデミーの試合は無観客が続いているので、ただ情報を追いかける日々って感じで。V・ファーレンアカデミーが私の中で一番なので、そこに関われないのはかなり辛いですね。


nest:「生きていく上で一番大事なもの」と言っても過言ではない。

しげぺん:私にとって、アカデミーの応援は生きがいなんです。アカデミーのことを一番に考えて生活していますし、多少会場が遠くても足を運んで応援したい。そして一緒に応援する仲間がいることも、試合に足を運ぶ理由になっています。


画像6

※仲間が作成した横断幕


nest:アカデミーの選手たちと関わってきた中で印象的だったことはありますか?

しげぺん:3年生が卒業するときに一緒に写真を撮ってもらうのが、ひそかな楽しみになっています。最後の公式戦や練習でタイミングを見つけては、「写真お願いします!」ってお願いをして撮ってもらっています。選手のみなさんから「ありがとうございました!」って言ってもらえるのも嬉しいですし、まぁこちらとしては「まだまだこれからもよろしく!」って返すんですけどね(笑)。


画像4


nest:そんな選手たちとカンターレ』を一緒にやるのも、サポーターとしては最高の瞬間ではないですか?

しげぺん:そうですね。選手たちも肩を組んで一緒に歌うんですけど、一人が前に出てきて踊ったりだとか、楽しんでくれているみたいなのですごく嬉しいです。アウェイでは自分一人で歌わなければいけないときもあり、最初はすごく恥ずかしかったのですが、選手たちが盛り上がってくれるのに助けてもらって最高の瞬間を共有することができています。

2016年のプリンスリーグ昇格をかけた決定戦で勝ってみんなで喜んだこととか、2019年の九州クラブユース選手権で優勝した試合とか、現地で味わった思い出はたくさんあります。特に後者は熊本で開催された試合で、サポーターは私一人だけだったのですが、『カンターレ』を歌って喜びを共有できたのは印象深いです。


nest:今後、V・ファーレン長崎アカデミーのどんな将来を望んでいますか?

しげぺん:いまは目標であるカテゴリーを上げることと、全国で結果を出せるようなチームになっていってほしい思いがあります。また、現在はクラブハウスや選手寮などを併設した新たな練習拠点を建設する計画があり、アカデミーもそこで活動する可能性があるようなのですが、場所決めが進んでいない状況です。なんとか実行していただき、環境が良くなればいいなと思っています。

ちなみに、実はいま試合中に声を出してくれるサポーターがいなくて…選手たちからすれば寂しいだろうなとは思っているのですが、個人的には写真を撮ったりじっくり見る観戦スタイルを好んでいるので、もし声を出して応援したい方がいたら来てくれると嬉しいです。


nest:最後に、この場を借りてアカデミーの選手の皆さんに伝えたいことはありますか?

しげぺん:試合を観に行けない状況が続いていますが、ピッチでサッカーをしている姿を見れなくても私は常に応援しています。アカデミーを卒業して終わりではなく、離れた後のみんなの人生も応援していることは伝えたいです。


画像2


【了】

いただいたご支援は、取材活動費に充てさせていただきます!