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バキューム尾崎のトラウマ


小学校2年生のある日、友達と2人で下校していた。道を横断しようとすると、左からバキュームカーが来た。実家は大変のどかな所にあり、当時はまだ下水道整備の最中で私の家のトイレも汲み取り式だった。強烈な臭いをまき散らすその車を見かけると、子どもたちはみんな鼻をつまんで逃げるのがお約束だった。
私と友達は鼻をつまみつつ、立ち止まってバキュームカーが通り過ぎるのを待った。もうすぐ目の前を通過するそのとき、なぜか私は友達の手をつかんで道に飛び出した。
すんでのところで車は急ブレーキをかけて、私と友達は道の真ん中に立ち尽くした。運転席の窓が開いて、強面のジャンボ尾崎のようなおじさんが怒鳴った。何を怒鳴られたかは覚えていない。友達も驚いたと思うが、私もこの事態にかなり驚いていた。鼻をつまんだままポカンとしている私に尾崎は言った。
「あんた、鼻つまんでるけど、この臭いはあんたが出したもんからも出てるんだよ」。
そう言い残して車は去って行った。
それ以降、私はバキュームカーが通ってもどうしても鼻をつまめなくなり、ジャンボ尾崎を見るとあの臭いを思い出すようになった。

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