【シナリオ】かくれんぼ
シナリオセンター通信本科課題9「湖」
ゲームブロガーの圭一。ブログ読者の”へび太”から送られてきたゲーム『かくれんぼ』をプレイするがクリアできず。翌日、ゲームの中に出てきた通りに殺された女子高生が湖で発見される。怖がる幼馴染の美織を元気づけるため、花火大会に一緒に行く約束をするが…
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<人物>
小嶋圭一(18) 高校3年生
吉岡美織(18) 圭一の幼馴染
小嶋志保(48) 圭一の母
へび太(16) 圭一のブログ読者
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〇小嶋家・外観(朝)
遠くに山々を望む地方の町の一軒家。
制服の吉岡美織(18)が自転車で来る。
〇同・ダイニング(朝)
テレビでは朝の情報番組。
アナウンサー「石神市で三日前より女子高校生が
行方不明になっていることが
わかりました。
行方不明になっているのは…」
パンをくわえて、
眠そうにスマホを見ている小嶋圭一(18)。
イケメン風のイラストがヘッダー画像の
『ケーイチのゲームブログ』。
本文には「つまらん」や「クソゲー」等
辛辣な言葉が目立つ。
アカウント名〈へび太〉の『更新おつです!』
というコメントに、『いつもどうも』と
返信する圭一。
突如、圭一の目の前に立ちはだかる美織。
石神五湖花火大会のチラシを突き付ける。
圭一「…だから行かねぇって」
むくれる美織。
前髪を星のついたヘアピンでとめている。
〇石神湖・案内板前(朝)
石神湖中心に東西南北に湖が描かれた案内板。
隣には花火大会のポスター。
『5年に一度の花火の祭典』の文字。
美織、自転車で走ってきてポスターの前で停まる。
ポスター指さして振り返る美織。
自転車で追い抜いていく圭一。
圭一「行かなーーーーい」
むくれる美織。
美織「もうっ!」
と自転車をこぎ出そうとした瞬間、
へび太(16)が急に前を横切る。
ぶつかりそうになって驚く美織。
美織「うわ! ごめんなさい!」
へび太「……」
へび太、帽子を深くかぶっており顔が見えない。
そのまま、歩いて行ってしまう。
美織「?」
圭一の声「おい、遅刻するぞ!」
美織「誰のせいだと思ってんのよ!」
と自転車を走らせる。
立ち止まり、圭一と美織の後ろ姿を見るへび太。
〇小嶋家・外観
蝉の声。
圭一の声「夏休みに人んちで何してんの?」
〇同・圭一の部屋
勉強中の美織。呆れ顔の圭一。
美織「受験生だもん」
圭一「お前には、ここ図書館に見えてる?」
美織「誰のおかげでイケメンブロガーとか
言われてると思ってんの?」
美織、ノートを見せる。
シャーペンでササッと描かれた
ブログのヘッダー画像のイラストと花火の絵。
圭一「忙しいんだよ、ゲームたまってるし」
と寝っ転がってスマホを見る。
美織「高校生活最後の夏なのに」
圭一「花火なんていつ見ても同じだろ」
美織「次、5年も先だし」
圭一「花火見ながら酒とか飲めるじゃん」
美織「…私、東京の大学行くし」
圭一「…受かったらの話だろ」
美織、イラストを描いたノートを勢いよく破って
壁に貼り、拝み始める。
美織「雷落ちてパソコン壊れますように」
圭一「呪うな!」
パソコンから通知音。
モニターに向かう圭一と覗き込む美織。
へび太から『ぜひレビューお願いします!』
というメッセージとともにURLが届いている。
圭一「前にこいつから送られてきたゲーム、
クッソつまんなかったんだよなぁ」
美織「女の子?」
圭一「知らん」
URLをクリックする圭一。
モニター上部にWEBカメラがついている。
〇へび太の部屋
モニター眺め、不敵に笑うへび太。
〇小嶋家・圭一の部屋
モニターを見る圭一と美織。
ゲームのスタート画面。
5個の湖のドット絵に『かくれんぼ』の文字。
陽気なBGM。
かわいらしいヘビがしゃべり出す。
ヘビ「ここが、かくれんぼの舞台。鬼は君。
どこかに隠れてるウサギさんを見つけてね。
もしも見つけられなかったら…」
急に変わるヘビの声。
ヘビ「ウサギさんは、シンジャウヨ」
圭一「うわ、狙いすぎ」
ヘビ「まずは練習だよ! 制限時間は1時間。
よ~い、スタート!」
湖のマップ画面にかわいい鬼が現れる。
美織「木の後ろとかに隠れてるってこと?」
圭一「なんだこれ」
宝箱がある。
鬼を動かし、触れると写真が表示される。
パンダのマスコット。
圭一「アイテムか?」
美織「ねぇ、これどっかで…」
湖の周りをウロウロする鬼。
ピンクの花の咲く一角。
鬼が足を踏み入れると、急に写真が表示される。
月見草の花。
圭一「はぁ? なんなんだよ」
美織「月見草じゃない? 咲いてるじゃん。
北神湖らへんで」
志保の声「圭一~! 美織ちゃ~ん!」
〇同・ダイニング
そうめんをつつく、圭一、美織、小嶋志保(48)。
美織の頭には星のヘアピン。
志保「美織ちゃん、まだそのピンしてるの?」
美織「だって全然壊れないんだもん」
志保「あんた、屋台のじゃなくて、もっといいやつ
買ってあげればよかったのに」
圭一「中一んときの俺の小遣い、覚えてる?」
志保「……。かわいいわね~、そのピン」
不意にブーと大きな音が鳴り響く。
〇同・圭一の部屋
駆けこんでくる圭一と美織。
モニターにヘビがウサギを締め付けている
ドット絵が表示されている。
ヘビ「時間切れ~時間切れ~時間切れ~」
美織「なにこれ…気持ち悪い…」
圭一「…つまらん」
とゲーム画面を閉じる。
〇北神湖・湖岸(早朝)
月見草の花の中に制服の女子高生の遺体。
首に絞められた跡。
傍に落ちている鞄にパンダのマスコット。
〇小嶋家・圭一の部屋
スマホ見ている圭一。
『北神湖で行方不明女子高生の遺体発見』の記事。
被害者の女子高生の写真。
パンダのマスコットがついた鞄を持っている。
圭一「……」
志保の声「美織ちゃん! どうしたの?!」
〇同・玄関
すっ飛んでくる圭一。
美織、顔や肘等すりむいている。
美織「ちょっと慌ててて…自転車壊れた…」
志保「ほら上がって~消毒しないと…」
と部屋に入っていく志保。
美織「あとこれも…」
掌にバラバラになった星とヘアピン。
不安げに圭一を見上げる美織。
圭一「……」
〇吉岡家・美織の部屋
顔に絆創膏を貼った美織、
瞬間接着剤でヘアピンに星をくっつけている。
〇小嶋家・ダイニング
ワイドショーを見ている志保。
『北神湖女子高生殺害事件』の文字。
寝ぐせにダルダルの部屋着の圭一が来る。
志保「ぶっそうねぇ~」
圭一「……」
〇石神高校・正門前(夕)
美織が出てくると、
寝ぐせにダルダルの部屋着の圭一がいる。
よそよそしい。
圭一「あ、今日補講か~俺ちょっと忘れ物…」
美織「通報とか、されてない?」
圭一、ハッと自分の服を見る。
〇道(夕)
湖沿いの道を歩く圭一と美織。
美織「花火大会、やるかな」
圭一「北神湖、離れてるからな」
美織「…あのゲームって…」
圭一「いたずらだろ! 趣味悪すぎ」
美織「うん、そうだよね。うん…」
圭一、美織のヘアピンを見る。
星が少し歪んでついている。
圭一の視線に気づき、ヘアピンを手で隠す美織。
圭一「相変わらず不器用だな」
むくれる美織。
圭一「…しょうがねぇな。屋台で売ってる三百円の
やつ限定だからな」
美織「え?」
圭一「花火大会、また出るだろ、
そういうの売ってる店」
圭一を見つめ、にんまり笑う美織。
美織「ねぇ、五百円はだめ?」
圭一「うざっ!」
駆け出す圭一。追いかける美織。
〇石神湖・全景
号砲が鳴り響き、湖岸には屋台が並ぶ。
〇小嶋家・圭一の部屋
ゲームの陽気なBGMが流れるモニターを
青ざめた顔で見つめる圭一。
ヘビの声「君は鬼。僕のゲームをバカにした
わる~い鬼~~~~!」
圭一「……」
モニターには、星が不格好についたヘアピンの
写真が映し出されている。
ヘビの声「それでは~かくれんぼ本番!
よ~い、スタート!」
壁に貼られた美織の絵を見つめる圭一。
圭一「…ふざけんな」
圭一、静かにキーボードに手をかける。
<終わり>
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