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半沢直樹は良きビジネスマンだろうか?また「時代劇」だろうか? 半沢の行動に共感しては駄目な理由

2013年に大ヒットした国民的ドラマ『半沢直樹』が約7年ぶりに今年の7月後半からスタートした。初回視聴率22.0%とかなりの快進撃だ。このまま7年前と同じように、メインターゲット層のサラリーマンの視聴者を増やしていくのだろう。

そんな『半沢直樹』に対して、「夫を支える専業主婦像が時代遅れ、こんな古臭い体制の会社はない、あれは勧善懲悪の現代の水戸黄門、つまりは時代劇だ」なんて批判の声もある。その指摘は当たり前で、なにせ劇中の時代がまだ90年代だからだ。今と何十年もの開きがある。だから「時代劇」と指摘するのは容易い。

しかし、そんな「時代劇」になぜ「おじさん」たちだけはなく、多くの若きビジネスパーソンがハマるのだろうか。そこをちょっと紐解きつつ、若い人が『半沢直樹』にハマっているようでは駄目になるから、今すぐテレビを投げ捨てて、良質なドラマが多いNetflixを契約しろというぼくの意見を述べたい笑

半沢直樹やその他エリート銀行マンは社内で何をしているのか?

2013年当時、こんなにしょっぱなから叩いておきながらぼくも『半沢直樹』にめっちゃハマった口である。第一部は大阪西支店編で、第二部は東京本店編だった。どちらにも共通するのは、社内の中で横領や不正をする上司がいて、それを半沢が地道に調べたり、時には大胆に論破して、最後はでかい声で上司を叩きつけるという流れだ。あれは見ていてたしかにスカッとした。ぼくは社会に出てからずっと自営業でやってきたから、理不尽な上司にいじめられたりすることはなかったので、顔芸や癖のある演技など見ていて楽しんでいた。しかし、多くのサラリーマンが共感してたのを覚えている。共感するということは、実際に不正を働いていたり理不尽なことを言う上司の多さがあったのだろう。たしか雑誌などでも「半沢の気骨精神を見習え」なんて特集も組まれていた気がする。

しかし、、、。そんな度胸や行動力、賢さもある半沢が社内でやっていることはなにかと言えば、単に上司の数千万程度の横領を暴くことに多くのリソースを費やしているということだ。その上司は悪ではあるが、あれだけ大手の銀行にとってはたいした額ではない。むしろ、それほど優秀なビジネスパーソンなのにも関わらず、会社の利益になることに何も貢献していないのが人材の無駄遣いだ。そもそもあんな大手の支店長クラスのひとがたった五千万程度を横領したことで、会社の貴重な人的リソースを割きに割きまくって、実質、五千万以上損害を会社に与えているかと思うと、本当にエリートなのかと笑える。

元々、その横領を働いた上司だけでなく、半沢の同僚たちもとても優秀なはずだ。そんな彼らがお互いの足の引っ張り合いをしていて、会社の利益に貢献しようという気持ちを誰一人として持っていない。少なくともドラマでは描かれていない。とにかく社内でひたすら争っているのだ。

日本の90年代から2020年にかけての30年間は「失われた30年」と呼ばれている。元は「失われた20年」だったが10年増えた。というのも、世界と比べて日本だけ経済成長がまるで30年間止まったままだからだ。しかし、この90年代を舞台にした『半沢直樹』を見ているとそれがよくわかる。誰も会社の利益に貢献しようというビジネスパーソンがいない。そりゃ経済も停滞したままに決まっている。まさにこれまでの日本社会を表しているドラマだと言えよう。

そもそも『半沢直樹』は時代劇だろうか?今の日本は男女平等社会か?

「夫を支える専業主婦像が時代遅れ、あんなの時代劇だ」という声に対しても異を唱えたい。日本の男女格差は先進国で最下位どころか世界121位の最低レベル。これは本当に酷い。ここはもっと是正していくべきであるのだが、なぜか先進国での女性の幸福度は、ほかの国より日本の方が高い。これも色々と研究している機関があるが、日本男性の幸福度の低さと日本女性の幸福度の高さなどを統計でよく調べていらっしゃるすもも氏のnoteを紹介しておく。

結論から言うと、進歩的なひと以外、多くの日本人は男が働いて女が家にいるというこれまた昭和的価値観を引きずっている。「そんなことはない、女性の社会進出を望んでいる女性は大勢いる!」という声も多くの女性からあがると思うが、そういう稼いでいる女性であっても結婚相手にはなぜか自分より稼ぎが上の方がいいと答えるひとが多い。デートで男性がおごるのも当たり前と思っているひともたくさんいる。これもマッチングアプリ等の統計で明らかになっている。

男性も男性で稼ぎがあればあるひとほど、女性にはお金を出させないし、それが美徳だと思っている。女性もおごられて当たり前と思っているひとが多い。

※ちなみにぼくの周りには男女問わずそういうふうに思うひといないんだけどね。類は友を呼ぶのかしら笑

男女平等意識が高いスウェーデンから日本にやって来て漫画家になったオーサさんの著作では、男性におごってもらうことや女性だけなぜか無料のサービスがあったり安くなる施設があるとむしろ嫌な感情をいだくという。つまり男女平等社会になっていくにつれて、ご飯をおごってもらうとかだけではなく、重いものをもったり椅子を引いてあげたりなんてことも逆に男性差別になるそうだ。

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↑↑女性だと無料と言われて、男女差別だと引くオーサさん。

そういったことを踏まえると、多くの日本人は男女ともに好んで未だに昭和的な保守的な価値観で生きていないだろうか。胸に手を当てて考えてみて欲しい。

『半沢直樹』に出てくる世界観も全然時代錯誤なんかではなく、もっと会社の利益を追求していこうといった気概もなく、ただ社内政治に執心している社員ばかりだったり、なんだかんだで専業主婦の方がありがたいと思っている高収入男性や、高収入の女性でも別に男性を養おうなんて微塵も思うひとがいなかったりと、そういった現状があるからこそ、『半沢直樹』は日本で受けている。「時代劇」ではなく、未だにあれが今の日本社会を反映している現代劇なのだ。

そもそも本当に半沢が賢ければ、あんな銀行さっさと辞めるべきだ。出向?左遷?いやいや辞表だろ。

だって、あれだけ権謀術数を駆使して上司と命のやり取りしている半沢とゆるふわ受付事務をやっている女性スタッフとで、月給にそんなに差はない。せいぜい20~30万程度では?もっと少ないか。だったら、もうさっさとこんな銀行辞めて、外資とかで働いてのし上がってその銀行をM&Aすればいい。その上で復讐相手をクビにしたいところだけど、日本は正社員を中々クビにできないシステムなので、それこそ僻地に出向させるか、セガのパソナルームではないが、生産性の見出せないことをひたすらやらせ続けて自主退職にでも追い込めばいいじゃないか。年収もせいぜい700万レベルだったのが、半沢レベルの有能人材なら2千万以上は軽くもらえるだろうに。

本当、スケールが小さい!その瞬間のスカッとした感情に飲まれて大局を見失うのは人生の損失だし、有能な人材を育成してきた日本の損失だ。

しかし、多くの会社で半沢のような優秀な人材が今もなお、社内の利益にひとつもならないことにかまけているのが日本社会の現状なのだろう。会社の利益を求めない糞上司の元、理不尽な扱いを受けている。『半沢直樹』はまさに日本が約30年間経済成長しなかった理由がぎゅっと詰まったドラマだ。だから、そんな古臭いものに共感しててはいかん!今すぐテレビを窓から投げ捨てるんだ!笑

そして自分の会社や、、会社じゃなくてもいい。自分の所属する組織にとって利益となることを考えて行動すべきだ。まわりのひとを豊かにすることが自分の人生も豊かにする。これは金銭的なことだけではない。

日本のテレビを捨てろ!今すぐNetflix契約だ!笑

ということで、次回、同じ復讐劇であってもきちんと会社の利益も追求しつつ従業員を大切にしていく韓国ドラマ『梨泰院(イテウォン)クラス』と、男女共に自分主体でありながらお互いが経済的にも生命的にも助け合う『愛の不時着』について語りたいと思う。

※というか大いに同じ復讐劇でもきちんと会社の利益を考えて行動していくところや、新しいヒロイン像について大いに語ったので韓国ドラマなんて…って思っているひとにこそ見て欲しい。特に若きビジネスパーソンには面白いところをかいつまんで紹介したので、それを踏まえて見て欲しい。

ごめん。ぶっちゃけ『半沢直樹』は自分の中でもう完全に古くて興味ないんだわ。7月から始まったセカンドシーズンも見てない。この韓国ドラマのふたつを語りたいがために枕として半沢直樹について触れた笑

ドラマの出来、スケールを見比べたら、日本がITでも文化でもコロナ封じ込めでも韓国に負けた理由がわかると思うぞ。それほどレベルが違う。全然韓流好きではないぼくが言うのだから間違いない笑

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