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夜中図書室

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おはなし
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2022年2月の記事一覧

◆小説◆短い話

◆小説◆短い話

「幽霊が出る」
「え」
「この部屋、幽霊が出る」
「幽霊って、どんな」
「Fによく似てるけど頭がない」
「頭がないのにFだってわかるのか」
「なんとなく」
「F、この部屋によく来てたもんな」
「一緒に鍋したよね」
「したね。あれいつ?」
「5年前かな」
「そんなになるかー」
「なんで俺の部屋にくるんだろ」
「そりゃ、お前のこと……」
「わっ」
「何? 今の」
「台所の洗剤が落ちたみたい」
「びび

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◆小説◆鬼が来る

◆小説◆鬼が来る

夕暮れにチャイムが鳴って、Aかと思ったらAによく似た鬼が立っていた。
「Aかと思った」
「よく言われます」
「代わりに来たの?」
「まあ、そうですね、あなたがカレーを用意してると言うので」
「そっか」
鬼を部屋にあげる。気がつかなかったが、Aよりもきちんとした良い服を着ている。なんだかそれがおかしかった。
デパートのインドフェアで買った平たい銀色の皿にカレーを盛る。今日は本で読んだインド風の玉ねぎ

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