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夜中詩

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こぼれ落ちるのをすくってゼラチンで固めたやつ
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2022年5月の記事一覧

◆詩◆群れ

◆詩◆群れ

バス停に牛の群れがやってくる
牛たちは真っ直ぐ前を見つめ
歩いていく
牛の群れは途切れず
バスは来ない
群れの中のひときわうつくしい一頭に
君が乗っていた
いつもより背筋を伸ばして
どこか異国の王のようだった
君は私に気づくことなく
牛に乗って去っていく
もう会えないのだと思う
一緒にお茶をすることも
カレーを食べることもない
音楽の話をすることもないのだろう
私やこの街や他のあらゆることを捨て

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◆詩◆五月

◆詩◆五月

公園の木はすべてがすべて別の形をしていて、なんだか恐ろしいような気がしたが、たぶんそれが正しい在り方であり、同じ服を着てみたり似たような言葉を使う僕らの方がいびつだと思えた。

メタセコイアの大樹を見上げてぼんやりしていたら、いつの間にか隣に君が座っていた。

君は何年か前に「自然は嫌いだ」と言っていた。
「自然のものより人が作ったものの方がいい」
それは君の魂の誠実さや脆さに関わることだったと、

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