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夜中詩

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こぼれ落ちるのをすくってゼラチンで固めたやつ
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2022年1月の記事一覧

登頂記

登頂記

高い山だった

しかし私が登れる高さだったのだと
頂上でお茶を飲みながら気がついた

山の上は清々しい匂い
びゅうびゅうと強い風

アルミホイルに包んできた
焼き鮭のおにぎりを食べる

遠くを見る
山が見える

次に登るべき
この山よりも
高く険しい山

体の奥が燃えてくる
魂の在処を自覚する

踏み出す
向こうへ

◆詩◆星と雪の午後

◆詩◆星と雪の午後

こんな雪の日には
星を煮込むに限る
暖炉はあたたかく
犬はまるくなり
星はほろほろと煮崩れる
今朝はなにかに疲弊し
病んでいたような気がしたが
透き通る星の香に
魂が洗われていくようだった
さて夕食の準備はできた
窓に寄れば音のない白と銀の世界
君はどこかで遭難ごっこでも
しているだろうか
大きなかたいパンを両手に
雪まみれで星を食べにくるかもしれない
夜まで少し眠ろう
静かな、静かな、午後