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スモーブロ(Smørrebrød)はじめてガイド

こんにちは! neriのHarukaです。みなさんはスモーブロ(Smørrebrød)を食べたことがありますか? 北欧風オープンサンドとも言われるスモーブロは、特集された本が発売になったり、専門店ができたりなど、日本でも紹介される機会が増えています。今回はイベント自粛のため中止となりましたが、第1回目のneriのポップアップレストランのテーマでもありました。

ベースとなる炭水化物に具材を合わせるという料理のフォーマットは、古今東西にさまざまな例があります。大きくは3つのタイプに分けられるでしょうかーーおにぎりやパオズのように具をすっぽりと包むタイプ、サンドイッチやケバブのように具を間に挟むタイプ、そしてピザやタコスのように開かれたベースに具材が載っているタイプがあります。

スモーブロをオープンサンドだと考えれば、ピザやタコスと同じ部類に入りますが、ナイフとフォークを使って食べるため、ワンプレート料理により近いように思います。

スモーブロの定番メニューはサーモンで、黒パンにサワークリームをたっぷり塗った上に並べ、ケッパーとディルで彩ります。クラシックなスタイルが愛され続ける一方、昨今の新北欧料理の盛り上がりを背景に、新しい進化も遂げています。

今回のnoteでは、本場コペンハーゲンを舞台に、おすすめのスモーブロのお店をご紹介します。取り上げる3店はいずれも黒パンを使った伝統的なスタイルを採りつつ、その上の具材に対しては、新しいアプローチをしています。

1. 世界一有名なスモーブロ - アトリエセプテンバー


スライスしたアボカドに小葱がたっぷり振りかかったオープンサンド。スモーブロという名前を知らなくても、この写真に見覚えのある方はいらっしゃるかもしれません。カフェアトリエセプデンバーで提供されるこの「アボカドマッド」は、彼らのスペシャリテ。ガイドブック等でも紹介されることが多く、世界一有名といっても過言ではないスモーブロです。つい先日まで、表参道のHAYカフェでも提供されていました。

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1cmほどの厚みのカットされた黒パンの上に、薄くスライスしたアボカドを重ねて載せたら、刻み葱をたっぷり。さらにレモンの皮と一味をスパイスとして効かせ、ミルキーで青みのあるアボカドの風味と黒パンの酸味をつなぎます。もそもそとした黒パンの食感と、クリーミーなアボカドが合わさって、食べはじめたらノンストップ。朝の時間帯には、キッチンにアボカドマッドがずらりと並び、みんなのお腹を満たしていきます。

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オーナーシェフは、ノーマをはじめ、ファインレストランで多くの経験をつんだフレデリック・ビル・ブラーエ氏。「お店をやるなら、ひとびとの生活にとってバス停や駅のような、生活の一部になる場所にしたい」という思いから、このカフェをオープンしました。その言葉通りに、アトリエセプテンバーは、世界中から訪れる旅行客と、地元の人々が共に行き交う、フレッシュで心地の良い場所となっています。何度訪れても、こんなに空気のいいカフェはないと感じます。必ず立ち寄る1軒です。

Atelier September 

2. コース仕立てでお届け - セルマ


スモーブロはもともと、気軽なワンプレート料理です。1〜2種類のスモーブロを選んで盛り合わせてもらい、ランチにするのがお馴染みスタイル。しかしここセルマでは、アラカルトで選べるスモーブロの他に、ハーフサイズのスモーブロを5種または7種食べられるコースがあります。

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セルマのコースは、モダンにアレンジされたスモーブロを一気に楽しめる絶好のチャンスです。たとえば、定番食材のサーモンも、新鮮なアプローチで登場します。サーモンはハーブ塩で味の輪郭を際立たせ、フロマージュブランと合わせます。通常は、その上にディルとケッパーを載せますが、セルマではラディッシュ、チャイブ、クレソンなど辛味やえぐ味のある野菜を飾り、蕎麦の実で食感のコントラストをつけています。

他にも、チキンにセップ茸、ヘーゼルナッツ、ベーコン、青りんごを合わせたものなど、独創的なメニューが並びます。コースのラインナップは、シェフが季節のアラカルトメニューからおすすめを選んでくれますが、どうしても食べたいものがあれば、リクエストしてみてください。快く聞いてくれますよ! ミッケラーをはじめ、クラフトビールが充実しているのもポイントです。

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Selma

3. 弔いの儀式 - アルマナック


最後にご紹介するのは、コンセプトが際立っているスモーブロです。

観光名所であるニューハウンのすぐ近く、港沿いに建つアルマナックは、新北欧料理が食べられるビストロです。ここでは、ホームメイドの黒パンを使ったスモーブロが食べられます。常時10種程度のラインナップがあるので、2つを選び盛り合わせにすると、最高のランチになりますよ!

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エディブルフラワーを散りばめた鮮やかな盛り付けは、北欧料理らしさがあり、とても美しいです。しかし、それで終わらないのがアルマナックの魅力。レシピを構築する際に一歩踏み込んで、コンセプトを立てているのが伝わってきます。たとえば、手前のビーフタルタルのスモーブロは「弔いの儀式」とも言えるメニューです。

細かくタルタルにした牛肉の上には、燻製した牛の骨髄のマヨネーズと、揚げた牛の脂肪がまぶされています。一度は、食べるために解体され、料理された牛が、棺となった黒パンの上で再びその姿を表すのです。骨、肉、脂肪の上にエディブルフラワーが散りばめられた瞬間に、それは命への手向け花となります。

食材を余すところなく用いて、おいしく料理する。料理人であれば、みな心がけていることですが、わたしたちのために犠牲になったものへの弔いを、このような形でプレゼンテーションするアルマナックのセンスには驚きです。

Almanak 

neriがスモーブロを作ったら?


今回のnoteでは、スモーブロに新しいアプローチで向き合うお店を紹介しましたが、neriのポップアップレストランで準備していたスモーブロも、その流れにあるものです。しかし、彼らと違うのは、わたしたちが北欧の文化圏の外にいる者だということです。日本の寿司に対して、外からアプローチしたカリフォルニアロールやマキがあるように、スモーブロに対しても、外側にいるわたしたちだからこそできるアプローチがあるはずです。

neriでは、スモーブロのパン+具材というフォーマットの懐の深さに力を借りながら、わたしたちなりの新しいスモーブロを作りました。土台となるパンに焦点を当ててみても、伝統的な黒パンに留まらず、日本人にも馴染み深い食パンや、甘みの強いブリオッシュなど、色々な種類を用いています。neriのオリジナルのスモーブロは一体どのようなものなのか? 次回のnoteでたっぷりお伝えいたします!

text, photo/ Haruka

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