見出し画像

『10の奇妙な話』

やふぅー٩( 'ω' )و
今回は、読んだ本について書きます。

ミック・ジャクソン著 『10の奇妙な話』 田内志文訳 (東京創元社、2016)


本屋で、表紙から目が離せなくなった本。
普段、あまり読むことのない短編集だ。

ページを捲ってみると、全話の最初のページに挿絵がある。
この表紙絵のような絵が、すべての話の最初にある。

挿入絵は、何か意味があるのだろうか。
そう思って最初の話「ピアース姉妹」を数行読んだ。

挿入絵は、話の主要人物でもある、
この絵が結論だと言って良いか分からないが、この挿入絵から奇妙な話が始まる。
最初の挿入絵は、話の始まりであり、終わり方でもあるのだ。
そして、話の始まる前の読書への問いかけのようでもある。
全部で10話の短編集。

怖すぎず、不気味であったり哀しかったり、どこかモヤっとする感じもあったり。
こういう類の話が好き過ぎる!!!
面白いし、楽しい。
と書くけれど、やっぱりどこか悲しくもある物語。
そして、考えさせられる。


個人的に面白かった話

ピアース姉妹

本屋で購入を決めた、本書の最初に書かれている「ピアース姉妹」。
何があったのかは分からないけれど、不遇な姉妹。
ある日、溺れている青年を助ける。
生活環境が厳しく、健康的な青年には、助けてくれた姉妹の外見に驚き、逃げてしまう。
姉妹は、ここで腹を立てて、その青年を殺してしまう。
そして、テーブルを囲む仲間の1人に加える。
それから、人を見つけると、何度か繰り返してしまう。

彼らの中にあった欲望や焦燥感が、彼らを暴走させたのかは分からない。
1人、また次へと行動する時に理性が吹き飛んでいるとしか思えない。
静かに、しかし感情的に。
テーブルを囲む者が増えた姉妹は、幸せなのだろうか。
色々思うところはあるが、最初から最後まで哀しい話だ。


宇宙人にさらわれた

授業に退屈し過ぎた、とある少年がちょっとしたことから、宇宙人が着陸すると思い、授業中にメモ用紙を友達に投げつけて知らせる。
退屈した授業では、あっという間にクラス中にその話が広がる。
休み時間に宇宙人がいないと分かったら、市役所に行き、先生がさらわれたんだと大騒ぎする。
乱暴に言いまとめるのであれば、1人の少年の退屈が、学校や先生、役所まで動かしたというわけだ。

陰謀論までいかないけど。
ここまで人を動かす退屈に心底驚いた。
子どもであるがゆえなのだろうか。
刺激を求めているのか。

先生がさらわれた!!ということに対しては、この先生が生徒に好かれていたからだろう。
役所から話を聞いた校長先生の指示、その先生が上手く生徒を学校に誘導する。
さらわれたとされる先生は、怒りもせずに生徒たちを安心させる。
今の学校に、こういう先生はどれほどいるだろう。


川を渡る

これは、個人的に1番笑った話だ。
葬儀屋のウッドラフ家。
棺を教会まで運ぶことは、大事な仕事だ。
しかし、川を渡らないと教会に行けない。
やっと船が見つかったら、今度は棺が大きくて5人が乗るには狭い。
ギチギチの船の上で、ちょっとしたことから、船はひっくり返ってしまう。
黒いスーツの5人は、棺をずぶ濡れで運ぶ。
最初から不気味な外見だが、それが濡れているとなると、さらに不気味だ。
無事に棺を運び込んだ老人が、落ち着き払って言い訳した最後の言葉が、めちゃくちゃ面白い。


感想

紹介した話以外にも、「眠れる少年」や「蝶の修理屋」、「もはや跡形もなく」など、面白い話はいくつもある。
奇妙で、面白くて、哀しくて。
気軽に妙な世界に入り込めるので、ぜひおすすめしたい本です。

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,330件

読んでくだり心から感謝します。 サポートいただけたら、今後の記事に役立てたいと考えております。 スキしてくだるのも、サポートもとても喜びます!!!!