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ある日常 1

今日、専門書にも百科事典にも載っていない
あなただけの発見は
ありましたか?

(これは、私が20数年前に書いたものです。
当時、新社会人として忙しい毎日を送っていたなかで、
ちいさな日常の発見を書き溜め、心の栄養にして日々を乗り切っていたようです。
今読み直してみて、書き留めておいてよかったと思えたので
ちょっとここに記してみようと思います)


空の切れはし

朝、家から駅まで自転車で向かう間のちょっとした感動。
薄いブルーグレー色の雲の切れ間切れ間から明るい日が差し、
所々、真っ青な空がのぞいていました。
水たまりに映ったその様子は、はっとするほどきれいでした。

湿って黒々としたアスファルトの上に、
はぎれの様に散らばった青空。
ちいさな水たまり一つ一つの中に
無限の広がりを感じるような気がしました。

***

奇妙な空間

毎朝の満員電車、あれほど奇妙な空間は他にはないでしょう。
見知らぬ人同士が密着し黙って動かず、
しかも平行移動しているのですから。
そしてあの狭い空間に思考があふれかえっているのです。
そんな奇妙な空間の一員である自分を
不思議に思う今日この頃。

***

小さなプラネタリウム

先日、帰宅途中にハッとすることがありました。
小さな霧雨が降っていて、私は黒いナイロンの傘をさしていました。
街灯の下に来た時に何げなくふと、上を見上げると、
満天の星空が目に飛びこんできました。

一瞬ぼうっと立ち尽くしてしまいました。
なんで雨なのにこんなに星が出ているんだろう?
と思ってよく見ると、
傘についた無数の水滴が街灯に照らされて光っていたのでした。
まるで小さなプラネタリウムでした。

携帯プラネタリウムなんてちょっとお洒落。
ただし、雨の降る夜(とくに霧雨の時)だけですが。

***

休日の駅

私は、休みの日の駅が好き。
これから好きなところへ行こうとしている人(だけではないけれど)がたくさん集まっている場所。
皆が同じ時間に支配されているような平日の朝と違って、
それぞれみな自分の時間を持っていて、
そのせいか時間がゆったりと流れているような気がします。
話声さえ心地よく感じられます。
あちらこちらで見られる笑顔、これは平日朝のラッシュ時にはみられない光景です。
こんなことを感じるようになった今、自分は社会人なんだなぁとつくづく思ってしまいます。
<新社会人の気持ち>

***

手のかたち

ある夜のこと、部屋の電気を消して窓を開け、虫の声を聴きながら
大きな木をぼうっと眺めていると、てっぺんの葉っぱは何もさえぎるもののない空へ向かって
ただただ伸びているんだなぁ、
と気づいた。
どんなに気持ちがいいだろう
と思い、真似をして手を高く上げてみた。

すると、パーの状態で指を閉じた手は、
葉っぱのかたちをしているのだと気づいた。
指を開けばもみじやかえで、
ポプラの葉にも似ている。
ちょっと嬉しい発見。
葉が美しくなる季節が楽しみです。

***

夏がぽつんと

冬は寒くて厳しくて、暖かくて、やさしい季節です。
寒がりの私は冬眠したいくらいですが、でも冬が好きです。

さて、先日、面白い光景に出逢いました。
風はなくよく晴れたとても空気の冷たい日のことです。

これ以上ないくらいしんと静まり返った住宅街の細い路地で、
熟れすぎて地面に落ちた柿の実をカラスがついばみ、
こぼれ落ちたかけらに猫が寄る、と、
そこまでは冬の静けさを感じる一風景と思い眺めていたのですが、
そのまま目線を上にやると、
思いがけず虫取りあみに対面しました。

一軒の家の玄関口に立てかけられた虫取りあみ。
寒空の下、そこだけ夏がぽつんと残されているようで、
なんとも不思議な光景でした。

***

家族の箱

遠距離通勤者の私は、最近、深夜に帰宅することがよくありますが、
夜の闇に包まれた静かな住宅街には人っ子一人いません。

でも、ただ家という箱に入っているだけで、
屋根を撮って上から見たら家族という単位でまとまった
たくさんの人々が周り中にいるんですよね。

そんなことを考えたら、
たくさんの家族の寝息が聞こえてくるような気がしました。

***

いい天気

雨の日は、普段は土色の木々の枝々が、しっとり湿って黒々と光ります。
その黒さは、とてもやさしい。

雨は、晴れの日には見ることのできないものを見せてくれる。

また、雨の中でも霧雨は格別。
その細かい水の線が風に吹かれて地上に降りるまでに空を舞う。

そんな景色を見せてくれる雨の日が私は好きです。
いい天気だ。

長くなるので今日はこの辺で。
「ある日常<1>」としておしまいにします。

続きは「ある日常<2>」へ。

ここまで読んでくださった方、
ありがとうございます♪

はじめまして。見に来ていただき、ありがとうございます! 「雨の詩(うた)」https://note.com/nepa88/n/n422be1298f3e を絵本にしたいと思っています。 いただいたサポートは大切に制作活動に使わせていただきます☆