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のら庭っこ便り#007 2023 5/21〜6/4  弐 天気の人

春の嵐で、アスパラが折れました。

支柱に結んでおいたのに

この翌週、残りの一本も折れてしまい、来年の生存が危ぶまれています。

写真右の折れた傷口には、さっそくアリが。
左側には、名前を知らない虫がいます。

のら庭の写真を撮り始めてから、こういう名前を知らない虫が、実はたくさんいることに気づきました。

ニゲラの花畑で佇むの図

人間に名を知られている虫は、だいたい好かれている虫か、嫌われている虫です。

人目を引くツノのあるフォルムで動きも穏やかな、カブトムシ。
動きも見た目も優雅な、チョウ。
カラフルなドットがおしゃれな、テントウムシ。

ゴキブリやガ、カメムシなど、人に嫌われている虫もいます。

でも、好かれていようが、嫌われていようが、人間の世界に「いる」わけです。

頸と足とお尻が朱色。背中は光で青緑色にきらめく、名前を知らない虫


反対に、好きでも嫌いでもない虫は、「いない」ことになってしまいがちで、なかなか見えてきません。

ちゃんと調べたら分かりそうだったのに、未だ分からない虫

そんな存在がたくさんいたことを、彼らの動きを目で追いながら、ひしひしと感じています。

こういう抜け殻も、見ようとすることで、見えてくるもののひとつ


イチゴのランナーを整理していたら、ハーブエリアでキアゲハの幼虫を発見しました。

思わず抱っこ紐に入れたくなる姿勢


すぐ近くにミツバがあるので、それを食べて大きくなったのかもしれません。

そのポージングと動かなさに「もしや…?」と思って見守っていたら、

抱っこ紐ならぬゆりかごを自前で作れるのね

やっぱり蛹に!

隠れ場所にふわふわのラビットイヤーを選ぶなんて、最高のセンスです。


無事、旅立ったと信じたい


しかし、翌週見たところ、もう旅立ったあとだったのでしょうか。蛹の殻もキレイさっぱり消えていました。

だいたい蛹の期間は10日ほどだそう。

旅立ってしまったのか、食べられてしまったのか、真実は藪のなかです。

キアゲハの羽化率は1%に満たないといいます。

天敵は多く、カマキリ、クモ、トカゲのような外から狙うものだけでなく、幼虫の段階で卵を産みつけ、内側から食べる、寄生バチ・寄生バエなどなど。

「キアゲハの行方、知りませんか?」
「その前に、わたしが何者か知っているの?」

チョウの幼虫は、はっきりした目的を持たない「のら庭」として見るならただの虫ですが、

野菜のための畑として見るなら「害虫」です。

この虫、よく見かける気がするけど、野菜から見て害虫ですか?益虫ですか…?

虫からは、人間はどんなふうに認知されているのでしょう。

自分の100倍以上もある大きさで、生活する環境自体に干渉するもの。

つむじ風か、夕立か、全体像がつかめない大きな何か。

カメラを持っているときは敵でも味方でもないけれど、草刈り鎌を持っているときは天災。

それは「もの」というより、「こと」なのかもしれません。

虫1匹は「もの」だけど、わたしたちも虫を「こと」として取り扱う
草マルチは、虫たちの「こと」によって土に変わる


「もの」として、わかりあうことはできないし、特に収穫期には大天災としてふるまうことも、避けられないけれど。

春のおわり。最後のニゲラ、最後のスナップエンドウ。


今日ののら庭、は「いい天気」です。


その壱はこちら


自分の書く文章をきっかけに、あらゆる物や事と交換できる道具が動くのって、なんでこんなに感動するのだろう。その数字より、そのこと自体に、心が震えます。