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臓器も骨髄も角膜も血液も~20歳② バスの運転手が発作を起こしたらどうしますか?~

■20歳②

東京での斬新かつ新鮮かつ最高な寮生活は楽しく日々過ぎていった。

突然ですが、みなさんは普通自動車の運転免許ってお持ちですか?
なぜとろうと思いましたか?
今回は私がなぜ免許を取ろうと思ったかのお話し。

高校生の時に、放課後高校まで教習所のバスが迎えに来て、みんな教習所に通ってた。みんな地元に残るから、運転免許がないとけっこう厳しいからだ。

でも私は東京に進学するので、助手席に乗せてもらえばいっか。
と、免許は取らなかったのだが、東京に出てきて寮からどこかに出かけるとき、最寄りの駅まで公共のバスに乗ることになる。地元ではバスに乗ったことなどない。

初めてのバス。
運転席を見て私は思った。

「この人に命を預けて大丈夫なのだろうか」

と。

それから私はどんどん不安になっていき、
運転手さんがもしも発作とかで倒れたりしないか、一瞬たりとも目を離してはいけない!
という使命感にかられ、運転手さんの真後ろの席に座り、バックミラー越しに運転手さんの一挙手一投足を観察するようになった。

運転手さんにとっては恐怖だ。

でだ。

もしもよ、もしも運転手さんが発作お起こしたらどうすんのよ?!
お客さんこんなに乗ってるのよ??
どうすんのよ?!

ってことで、助手席専門をうたっていた私ですが、まずは免許を取ってみよう、という気持ちにチェンジ。

ええ、知ってますよ?
普通自動車の免許取ったところで、バスの運転はできないことを。
しかしですね?
何も知らないより、もしもの時の判断はできるのではないかと。

というわけで、大学の驚くほど長い夏休みを利用して、私は免許を取得することにした。

なんとか夏休みの間に無事取得に成功。
となるといよいよ、

「もしも発作を起こしたら」私が対応しなくてはならない。

という思いがひしひし。

私は以前にも増して、運転手さんの真後ろの席で、運転手さんの観察を始めた。
いざとなったら、私がみんなを目的地まで送り届けなければいけないのだ!
私は自動ドアの開閉スイッチ、アナウンスの種類(広告アナウンス、バスが停止するまでお立ちにならないでくださいなど)、目的地のタイトルロール変更など、覚えられるものはみんな覚えた。

という話をバイト仲間にしたら
「えええ?!運転手が発作起こしたら、まずなんとかしてバスを止めたら救急車呼ぶだけでいいでしょ?!
なんでそのあと営業続けようとすんのよ!?」
と言われた。

え?
そうなの?
救急車呼ぶだけでいいの?
みんなを目的地に連れて行かなくていいの?

早く言ってよ。
途中人が乗ってきたら、両替もしなきゃいけないと思ってたわよ。

というわけで、普通自動車運転免許をなぜとることになったかと言うと、
「バスでもし運転手さんが発作を起こしたら、私が代わりに営業続行するため」
という20歳のときのお話でした。

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