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臓器も骨髄も角膜も血液も~22歳① 宗教の勧誘とかアルバイトとか~


■22

バナナのかわりにカバンを置き忘れた単発のアルバイトは置いといて、初めてのちゃんとしたアルバイトはカラオケボックスだった。

今はもうないけど、それは小田急線梅が丘駅から徒歩1分の所にできた、1Fはバー&レストラン、2F~4Fがカラオケボックスという意外ときれいでおしゃれなお店。近所に有名なお寿司屋さんがあったからか、芸能人もたくさん来た。

私はお酒が飲めなかった(弱かった)のでお酒の種類が分からず
「ブラッディ・マリーを。チェイサーもね」
と言われても
「ブラッディーマリーヲチェイサーモネ」
という呪文にしか聞こえず
へ?
という顔をしていた。
まぁ、カラオケボックスなのでお客もたいてい酔っていて、どんなお酒かわからないと、隣に座らせ丁寧に説明してくれた。

時には一緒に歌ったりもしてたら、監視カメラで見ていた店長に
「帰ってこー-----い!!!」
と怒られたりもした。

バイト仲間も非常に仲が良く、20歳くらいから40歳くらいまでの仲間でドライブに行ったり、スキーに行ったり、夜中に環七のラーメン食べに行ったり、シーパラに行ったり最高の仲間だったよ。

そんな仲のよいメンバーだったので、カラオケボックスから1分くらいの私のマンションはもちろんたまり場に。
実家から寮という生活しかしたことがなく、初めての一人暮らしを始めたばかりの私は、喜んで自宅をたまり場に提供。

男女関係なく好きに出入りしていたし、
男女関係なく好きに泊っていった。

だって仲間だし。
さみしいし。

でも彼ぴっぴはそれはNGなのよね。

1時間おきに電話してきて
「まだ奴らはいるのか?!」
「もう1時間たったぞ!」
「もう2時間たったぞ!」
「ホテルだったら延長だ!」(どゆこと?)

と笑

私は人生で初めての「遅番」を経験していて
それは最高に面白かった。
みんなが眠っている間に仕事をする。
なんだかすごいことをしているみたいで最高!

だからあまりメンバーがいない遅番も進んでやったし
唐揚げを揚げた油を一斗缶にためて
固めるテンプルで固めたやつをすくって捨てる仕事だって
めちゃ楽しかった!

みんなはめんどくさかったみたいで、いつも喜んでやる私のために
「ナツへ。よろしく!」
って固まった油にメッセージが残されてたよね笑

メンバーは8人。
男女4人ずつ。
男女関係なく、飲みに行くと全員でチューしまくるような安心するメンバーだったなぁ。

でもたしか、店長がお店のお金を持ち逃げしたかなんかで、あっけなく終了したようなそうじゃなかったような。

そんな楽しいアルバイト生活に別れを告げ、いよいよ就活もしないとね。
でもその前にちゃんと卒業しないとね。
ってことで卒論のテーマ決めやゼミに力を入れていた、そんな時。

ピンポーン♪

ドアを開けると、私と同じ世代の女の子がひとり。

「ハンカチいりませんか?
いただいたお金は恵まれない施設に寄付されます」

えええ?
私がバイト仲間とラーメン食べたり、チューしたり、スキーしたり、チューしたりしてる時に!!!

同い年の子が恵まれない子のためにこんな福祉活動を???!!!

私はいったい何をやっていたのだ。

それはそれは衝撃的な出来事。
もう頭をガゴーーーンって何かで殴られた感じ。

「すみません。寄付ってどのくらい?」

「お気持ちなんですが、ハンカチなら¥2,000、エプロンとセットで¥5,000くらいが妥当でしょうか」

「・・・・。
すみません、手持ちがなくて¥2,000でもいいですか?」

というわけで、寄付をする私。
世の中はまだまだ知らないことだらけ。
神様ごめんなさい。
遊び惚けていた私を許してください。

それから数日後

ピンポーン♪

また例の彼女だ。

「この間はありがとうございました。
今度、大学生を対象にしたセミナーがあるのですが一緒に行きませんか?」

聞くと、私の卒論のテーマに合っている!
「ぜひ!」

後日、彼女と待ち合わせをして向かった、渋谷宇田川町の雑居ビル。
部屋に入るとモニターが置かれたテーブルとイスがずらーっと。
それぞれパーテンションで区切られていて、ヘッドフォンがセットされてる。

うむ。
なかなかの光景だが、そんなもんか?
そうなのか?

よくわからんが、とりあえず勧められるがままヘッドフォンをしてモニターに向かう私。

そのまま、まったくもって卒論のテーマとは関係のなさそうな映像を見ること数分。

ヘッドフォンから聞こえる言葉は
「神とは、、、」

えーと?「はい!」と手をあげ
「すみません、私の思っていた内容と違うようなのですが!」
と言ってみるが
「ああ、それならもう少しで出てきますよ」
とにっこり。

あ、そうなの?
素直に見続けること3時間くらい?(よく見たな)
結局、思っていた内容とは違うため
「あのーやっぱり卒論のテーマとあっていないような」
「大丈夫です。そのテーマは明日の回でやりますよ(にっこり)」
なんだ、そうなのか。
そうなのか?

とりあえず、うっかり3日も通っちゃったよね(ばかなの?)
次は5日間の合宿があるらしい。
で、卒業試験的にそのあとさらに7日間合宿もあるんだってさ。
へぇ~。

その話を中学の時の友だちに話したところ

「なっちゃん!!!!バカなの??!!
それ宗教だから!!!!次は絶対に行っちゃだめ!!」

え?!
そんなことある??!!
それならそう言えばよくない??!!
なぜにそんな嘘つくのよ?!

「絶対にちがうわよ!
彼女がそんなことするはずないじゃない!!」
(若干洗脳されかけてるよね笑)

と断言し、半ば憤慨しながら彼女の次の連絡を待っていたところ

偶然テレビからこんな情報が

【激白!!!元信者が語る入信の手口!!!!】

「はい。初めは、恵まれない施設に寄付を募るんです。
あ、そうです。もちろん名前は伏せて。
地方から出てきた一人暮らしの子とかですね。はい。
まだ世間を知らないような。はい。
その次はスリーデイズっていって三日間ビデオを見せるんです。
はい、ひとりひとりヘッドフォンをつけさせて、
はい、そうです、ビデオセンターで。
そのあとはファイブデイズっていって5日間の合宿です。
その頃にはそうですね、やや洗脳されてる感じですかね。
その人たちを連れて、最後にセブンデイズって言って7日間の合宿があって、それで入信ですね。はい。」

・・・。

えーと??

私は現在スリーデイズの連絡待ちなんですね?

ショーーーーーーック!!!!!!!!!!

納得いかない。
納得いかないわよ!!
なんで?
なんでなの?

絶対に行ってはいけないと言われたが、彼女から連絡が来たので
この悔しい気持ちをぶつけるため行ったよね。
待ち合わせの例のビデオセンターに(今考えると怖い)

「あの。。。
何か私に隠していることはありませんか?
私見ちゃったんです。テレビで。入信の手口。
いま、私に起こっていることと同じじゃありませんか?
これは偶然ですか?」

彼女の目を見て確認しました。
すると彼女は言いました。

「だって!!言ったらここに来てくれましたか?!」

「こねーよ!!」

おっと、うっかり汚い言葉を使ってしまいましたが
この悔しい気持ちをぶつけてみたよ。

「あなたは自分の信じている宗教に自信がないの?
あなたは信じているんでしょう?
どうして黙ってこんな騙すみたいなことしたの?
あなたが自信をもって信じているんだったら、
その素晴らしさを自分の言葉で堂々と伝えたらいいじゃない!
それで、共感してくれる人がいたらそれでいいじゃない!
私は共感できないから入信はしないけど」

ってうっかり熱く語ったら、連れていかれたよね。
幹部みたいな人がずらーーっと並んでる部屋に。

なぜか見込みがあると思われたのか
このエリアの展望について語られること数時間。

でーすーかーらー-------
私の思いは変わらないっつーの!!!!
っていう押し問答に疲れ果て、やっと解放されたのは5時間後。
いや、よく帰してくれたよね。逆に。

またひとつ、大人になった私なのでした。
ちーん。






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