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梧桐彰のトラブル考現学:1月8日「防犯と個人」

新年おめでとうございます。今年の目標はクマ殺しです。
年始から嘘をつくのはよくない。

能登半島の地震関連の記事で、穴水町というところで自販機を破壊した話がありましたよね。
避難者が飲料水を確保するためだったので事件性はなかったのですが、読売新聞が誤ってこれを犯罪みたいにあつかってしまったので、一時期非難が集まりました。

実際には、緊急の避難所に使っていた現地の高校に備蓄が無く、止むを得ず破壊したということであったようです。

というわけで、結局これは読売新聞の誤報のようです。
被災地の情報は限られるので裏とりできなかったんでしょうけど、事実関係が明確になったら謝罪することになるのかなと思います。

しかし新聞社ともなるとさすがに変なこがを書くと叱られますが、だいたい情報が少ないと、パッと見でおかしなことが起きていると、誰かが悪いことをしていると思い込むのはよくあることです。

災害時には正常性バイアスという、災害の大きさや発生確率を「どうせたいしたことないでしょ」と過小評価する偏見がしばしば話題になりますが、異常性バイアスというのもあって、災害時に「誰かが何かしらおかしな行動を起こすのではないか?」と、過度に心配する心理的な傾向も知られています。

壊れた自販機を見たら「(現地の都合によるやむをえない破壊ではなく)侵入者の火事場泥棒ではないか?」と思い込むのも、それほどおかしなことではないということでしょう。

私は犯罪に関係する仕事についている都合上、こうした異常性バイアスを持ちがちになるので、何かおかしなことが起きた時にすぐにトラブルなのではと思ってしまったりします。

頭を冷やして「いやいや本当に犯罪か?」と考えるように心がけていますが限度はあります。周囲の人に意見を聞いたり、続報を待つ忍耐力を持つことの重要性を感じます。

災害時の異常性バイアスについては心理学では1994年の論文にすでに出ていますから、かなり長く使われている概念ですね。

この論文は被引用数も多く、よく知られているものらしく、以前に何かの本で読んだのを思い出しました。

正常性・異常性のどちらにせよ、こうしたバイアスを排除するには裏とりが必要です。とはいえ災害となると一次情報に当たることができるケースは限られています。
そんなわけで、こういう記事を見たときにすぐ反応して「ふうん、世の中にはあくどい奴がいるんだな」と思い込むのは考えものかもしれません。

職業上の関係がないのであれば、災害時に第三者ができることは赤十字などの信頼できる機関を通じての寄付ぐらいしかできませんし、あまり首をつっこんでガタガタ言わないようにしたいものです。
まあこの記事でさんざんガタガタ言ってるんですが。

では今年もよろしくお願いします。梧桐でした。

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