病理基本用語集#5　混同しやすい用語

（１）核形と核型

ⅰ）核形：細胞核の形態のこと
👉 nuclear morphology; karyomorphism; shape of nucleus
👉 組織学的な核の形状の不整は「核形不整」

ⅱ）核型：染色体の特性のこと
👉 karyotype; nuclear form
👉染色体異常がないことを「正常核型 normal karyotype」という。その他に「異常核型 abnormal karyotype」「男性核型・女性核型 male/female karyotype」など

（２）傷害と障害

ⅰ）傷害
👉 damage, injury
👉 細胞や組織に傷がつくこと、傷むこと、破壊されること
👉 通常、形態変化を伴う

ⅱ）障害
👉 disorder, disturbance, dysfunction
👉 傷害などによって、細胞や組織の機能が悪化・消失すること
👉 形態変化を伴うことが多いが、伴わないこともある
👉 傷害の結果として組織障害・臓器障害が出現する場合などには傷害・障害の両方の意味合いを含めて「障害」が用いられることも多い

（３）穿孔と穿通

ⅰ）穿孔
👉 perforation
👉 臓器などに孔が空いて貫通した状態で、腹腔・胸腔などと交通すること（消化管の穿孔では通常、汎発性腹膜炎 pan-peritonitis / generalized peritonitis を生じる）

ⅱ）穿通
👉 penetration
👉 臓器などに孔が空いて貫通した状態だが、貫通先が何らかの構造に塞がれている状態（消化管の穿通の場合、その部分に炎症が限局することが多い：限局性腹膜炎 localized peritonitis）

（４）充血と鬱血（うっ血）

ⅰ）充血
👉 hyperemia
👉 流入する血液量が増加することで、その場の血管内の血液量が増加することであり、主に炎症による血液流入量の増加に伴う（主に動脈血が貯留する）

ⅱ）うっ血
👉 congestion
👉 流出する血液量が減少することで、その場の血管内の血液量が増加することであり、下流の静脈系の閉塞・狭窄などにより血液が貯留することに伴う（主に静脈血が貯留する）

（５）病気の成り立ちに関する用語

👉 病因・病気の原因（etiology）
👉 病因・病態形成（pathogenesis）
👉 病因・病気の原因となる物（物質・微生物など）（pathogen）
👉 病理・病理学・病気の成り立ち（pathology）
👉 病態生理（pathophysiology）
👉 病的な・病理学的な（pathological）
👉 形態的な（morphological）

（６）組織や細胞の採取方法を表す用語

👉 生検（biopsy）
👉 吸引（aspiration）
👉 ネクロプシー（necropsy）
👉 切除（resection）・摘出（excision）（-ectomy）
👉 剥離・郭清（dissection）
👉 切除（摘出）生検（excisional biopsy, (probe) lumpectomy）
👉 切開生検（open biopsy）・切り込み生検（incisional biopsy）
👉 広範切除（wide resection, wide excision）

👉 ABC: aspiration biopsy cytology
👉 FNA: fine needle aspiration
👉 CNB: core needle biopsy
👉 VAB: vacuum-assisted biopsy
👉 VATS: video-assisted thoracic surgery
👉 EMR: endoscopic mucosal resection
👉 ESD: endoscopic submucosal dissection
👉 ELPS: endoscopic laryngopharyngeal surgery

（７）病理解剖の種類

日本では一般に Virchow 法が「個々の臓器を分けて摘出する方法」で、Rokitansky 法が「臓器を一塊にして摘出する方法」であるが、本来の Rokitansky 法は臓器を摘出しない方法を指す。

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