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【250字レビュー】サン=テグジュペリ『人間の大地』


世界への気づきが濃密な言葉で語られる。死にゆく年老いた奴隷を前に、彼は残酷ではなく安らぎを見る。「僕が辛かったのは、一人の人間が死ぬことによって、一つの未知の世界が滅びることだった」には、生の価値に対する彼なりの答えがある。人間と世界は対立図式でも包括図式でもない。誰かが生きて感じ取ることで、世界には独自の価値が生まれる。生の上で尊厳を奪われようとも、この人間が見た世界には独自の価値がある。彼はこの奴隷の見た景色を想像し、生の無条件の価値を発見して、この亡骸の頭を古い宝箱と形容する。言葉がビシビシ響く。


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