月の光

2/23 20:00　ドビュッシーの月の光が流れた

何も終わらないし

何も始まらない

そんな日も

湖面に浮かぶ月の光が私を照らすように

囁いてくれる

今日の悪かったところも澄まわせてしまおうよ

あなたは悪くない

時代も悪くない

彼も彼女も悪くない

ましては日本も悪くない

この世に悪などないんだよと

20:00の終わりを知らせる月の光

あなたの弾く月の光は初めが繊細で、絹の糸のよう。
囁くように私の心に入っていくのね。

薄暗い湖面に浮かばせておくれ

あなたの星屑のような鍵盤のたたやかを

空に星が降ってきそうよ

行き場を知らないあなたの星はこの時だけ輝くの

星の王子さまも見たことのない光ね。

相変わらず囁くのね。
誰も起こさなさそうなあなたの音色

でも、目が覚めたら夢の中で広がった星々が私の心に残っているわ。

あなたは意志のある月の光ね。

一音一音逃さない。
動物たちが湖に集まっていて夜の光を楽しむの。
私は、その動物たちの瞳の奥から月の光を楽しむわ。

これから何があっても怖くない。
空も、雲も、土たちも、草花も
あなたのそばにいるわ。

ちょっと逃避行をしましょう。
見たことのない花々。
夜をたゆたう風と木々。

さわさわ音に身を任せてあなたに寄り添う。
こんな夜は今日しかないわ。

そろそろこの宴は終わる頃かしら。
みな、元の場所へお戻りなさい。

あなたが帰ったところで、この思い出は消えないわ。

さあ、お帰りなさい。
よい夢を。

少し靄がかった音色に私は黄昏れる。
今日あったことをなかったように仕立て、
いつもの私に戻るのだ。

夢の主人公はわたし。

あなたもあなたも、あなたもいらっしゃらなくて、
夢に浮かぶわたしだけがいるの。

薄い靄は幸せの兆し。
見えないくらいがちょうどいいってばばさまは言っていた。

手は差し伸べてはいけませんよ。
朝靄は一番気持ち良いのです。
あなたを一番幸せな状態へ持っていってくれるわ。

そっとお眠りよ。

そおっと、お眠りよ。